きっかけは余りにも唐突に
「なぁ、女って、怖いよな」
「いきなりなんてこと言ってくるの?」
僕の名前は天野圭、どこにでもいる女性嫌いの男の子だ。そして今話してるのが腐れ縁の星宮優奈。唯一話せる女子にして僕の幼馴染だ。
「ほんと君の女性嫌いは一体いつになったら治るんですかねぇ」
「治らなくていいよもう、全然コミュニケーション自体は取れるし」
そう、別に恐怖症とは言っても話したら気分が悪くなるとか、嫌悪感を出したりなどすることは全くないのだ。
「でも、女の子と話した後大体めっちゃ小さく息吐いてない?」
「あー、いやまあコミュニケーション取れるとは言え極力は関わりたくはないし、なによりその会話でなにか変なことを言わなかったか不安になってさ、」
そう、別に話すこと自体はできる。ただその発言一つ一つには細心の注意を払って発言するようにしている。
「相変わらずだねえ、一体女の子のなにを怖がってるのか」
「お前は知らないかもしれないが、女性とは恐ろしものなんだぞ...!」
「私の性別知ってる??」
「お前は実質男友達みたいなもんだから」
「なにそれひどい」
なんて他愛のない会話をしていると、
「おはようございます♪」
と可愛らしくも凛とした声で挨拶をして教室へ入ってくる人物がいた。彼女が教室に入ったとたん男子共は即座に周りに群がるし、女性は羨望の目で彼女を見つめる。彼女の名前は篠宮玲奈。この学校の生徒会長にしてアイドル的存在だ。
「はぁーー、相変わらず美しいねえ我らが生徒会長様は眼福眼福、大抵の人はあの人見て惚れさえしないものの目は惹かれるというのに」
と優奈は圭の方に目をやると、
「うんうん、ほんとそうだよね!可愛過ぎてもう罪なレベルだよね!」
と彼女から目を背けながら話している。
「はぁ、圭、あなた特に玲奈ちゃんに対して拒絶反応すごいよね?なんかあったの?」
「いや、そうゆうわけじゃないよ。ただ、僕が女性恐怖症になった原因の人がああいうタイプだったから、」
「あーなるほど」
と言い彼女の方をチラリと見てみると相も変わらず男性陣に取り囲まれている。
「まあ確かに、ああいうタイプほど裏の顔はやばいってよく言うもんねえ」
と、中学時代にトラウマを負った彼を慰めるのだった、
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「はぁ、やっと授業終わった、」
時刻は現在16時。
圭は帰る準備を始める。
「あれ?今日は空手ないの?」
と隣の席から優奈が声をかけてくる。
「うん、今日はオフなんだよね、そっちは?」
そう聞いたら彼女は満面の笑みで
「私も今日はなしなので、デートしてきます♡」
そう言ってくる。彼女の彼氏は浅野学。何を隠そう僕の幼馴染だ。僕達は3人で幼馴染であり小さい頃からずっと遊んでいた。そして中学僕と2人は違う学校に行っていたのだがどうやらその時付き合っていたらしい。
「いいじゃんいいじゃん!思いっきり楽しんできな!」
正直僕からするとすごく嬉しい話だった。普段から遊んでいた2人がそのまま付き合うことになった、他の人がどう思うのかは知らないが僕からすると嬉しいことこの上ない。
「•••多分だけどここまで素直に人の恋愛祝福出来るの圭ぐらいだよ」
なんてそんなことをいいながら階段を降りていく。
「そうかな?別に誰だって出来るもんじゃないか?」
「いやいや、大体は嫉妬心が邪魔してできないもんなんだって!」
とそんな話をしながら靴を履き替えようとロッカーを開けるとヒラリ、と一枚の手紙のような紙が僕の足元へ落ちてきた。
「「•••••」」
「でも、嫉妬心あってもー」
「いや誤魔化せないからね!?」
再び会話を続けようとする僕に鋭いツッコミが入る。
「•••まじかぁ、、いる?僕みたいなやつにラブレター送ってくる物好き...」
「いや圭別に顔悪いわけじゃないし空手の成績いいんだから割と良い物件よ?まあ女子と積極的にコミュニケーション取らないっていう欠点がすごいのだけど、」
なんて優奈が横で何か言っているが今僕はどうしようか考える。行かない選択肢は?そうすれば告白もされないし話す必要もない...いや、ダメだ!
もし行かなくてそれを周りの女子に愚痴られたら女子からクズ男のレッテルを貼られ陰口の対象にされる。男子からのストレートな発言はいくらでも受けるが女子からの陰口はかなりきつい...
「うわぁ、字めっちゃ綺麗だし凝ってるねぇ」
と優奈は僕の思案をよそに勝手に手紙を開けてその手紙を物色している。
「おまえ勝手見るなってば!」
とそう言って彼女から手紙を取り上げると
「圭がぼーっとしてるからじゃん〜!というか大丈夫?指定されてる時間、もうすぐだけど、」
「は!?」
慌てて手紙を見ると16時半に屋上で待ってますと記されていた。流石に遅れるのはまずい!とそう思い
「じゃあな優奈!デート楽しんでな!」
とそれだけ言うと僕は階段を駆け上がって行くのだった...
「ふーん、屋上ねぇ、あそこ一般生徒は立ち入り禁止なんだけどなぁ、そこを解放できる人なんて。一体どんな人なんだろうなぁ」
とニヤニヤとしながら彼の後ろ姿を見送るのだった。
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「はぁはぁ、」
僕は息を切らしながら階段を駆け上る。もし遅れて何か言われるとそれこそ僕の学生生活がまた終わってしまうので指定時間は何としても間に合わせないといけない。その一心でただ指定場所へとかけて行く。
「つ、ついた、」
時刻は現在4時31分、本当にギリギリではあるがなんとか間に合った。けれど到着して見るとどうやらまだ差出人は来ていないようだった。少しホッとした気持ちになりつつ、改めて僕はこの手紙を見る。
圭くんへ
いきなりこんな感じで手紙を送っちゃってごめんなさい。貴方に伝えたいことがあってこの手紙を書かせてもらいました。今日の放課後、16時半に屋上へ来てもらえませんか?忙しかったらまた出直します!
と達筆な字でこう書かれていた。うん、なんか余りにも思いやりが伝わってくるね。先程行かないという選択肢を出していた自分に説教しに行きたいぐらいだ
「でも、ごめんね、」
そう、女性を怖く思っている僕が告白を了承するなんてことはあり得ないのだ。だから僕は、この人に対してこれから最低なことをする。そんな気持ちでこの告白を受けないといけない。
「はぁ、なんでよりにもよって僕なんだろ、」
なんて、そんなことを思っていると。タッタッタと階段を登ってくる音が聞こえてくる。来たかなと思い姿勢を正すと屋上の扉が開かれ
「ごめんね!生徒会の仕事が長引いちゃって!」
と顔に汗を浮かびながらヘトヘトな声で生徒会長、篠宮玲奈が現れたのだった...