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プロローグ
彼女が出来た。
だが、俺は彼女の素性を何ひとつ知り得ていない。
どこで生まれ、どのような家庭環境だったか、どんな学校生活を過ごしているのか知らない。
ただ、俺と彼女はあの公園で知り合った。
見えない敵と戦うために。
今、隣に立っている彼女、いや名前で呼ぼう。だって、俺たちは付き合っているのだから。
隣に立っているまゆりちゃんに「俺たちのやっていることに意味なんてあるのだろうか?」と聞いてみた。
まゆりちゃんは不機嫌な顔をして「意味があるからやっているんじゃない」と言った。どうやら彼女を怒らせたみたいだ。
でもな、俺には意味のないことを無理矢理意味付けしているようにしか思えない。
「さあ、はじめるわよ」
まゆりちゃんがそう言うと俺は立ち上がり、マイクに繋がれているアンプのところへ向かう。
今から始まるのだ。
俺たちの戦いが。個人的で小規模な戦いが。
そして俺はマイクの音量を上げた。