【異世界】とある猫ギルドの創設秘話
今、私は縛られて屋敷の中庭で座らされている。家族に縛られた。私はマルグリット・ベークン。べークン伯爵家の総領娘のはずだ。
お母様が亡くなり。お父様は再婚した。連れ子に年下の女の子がいた。
「マルグリット、猫はどこにやった?」
「あの、光る目と牙と爪で、地の精霊を傷つける不届きな動物」
「クンクンクン、匂いはしないわね」
三人は私を留守役にして良くお出かけをした。それはいい。
しかし、ある日、ピクニックから帰ってから豹変した。
奇行が目立つ。
女神教会に行かなくなり。
代わりに地の精霊を信仰するようになったらしい。
地の精霊は猫を毛嫌いする。
私と一緒に住んでいる猫ちゃんは、男の子、灰色の丸丸太ったギンタと女の子、オレンジと白のロッテを毛嫌いし。ついには殺すように私に迫るようになった。
☆回想
ある日、三人は
村中に、パンくずをばらまくようになった。
『お義母様、何をなさっているの?』
『地の精霊様を呼ぶためよ』
『それよりも、猫は世話が大変だろう。領の外から商人が来た。売ってしまいなさい。代わりにドレスを買ってあげよう』
『お父様、嫌です。お母様と約束しました。私はこの子達の母親です!』
『お姉様、私、あの獣怖いわ』
「「ニャー!ニャー!」」(ママー、どうしたの?)
「「「ヒィ!」」」
おかしい。猫を見て逃げ出した。こんなに可愛いのに、もしかして、猫が苦手、それにしてもお父様はそんなはずはなかったが。
・・・・
「とにかく、どこに隠したのか言いなさい!」
「そうよ!」
「まさか、野に放したのではないですよね。無責任ですわ」
「言えません!」
「クンクンクンクン!確かに猫の匂いがしないわ。でも、確かにこの領地に猫の気配があるわ」
義妹は息がかかるくらいの位置まで、顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
三人は領地中を探したらしい。
私も二週間会っていない。
何故なら、猫ちゃんたちはこの三人が入れないところにいる。
「!そうか、女神教会か!うっかりした」
「でも、入れないわ」
「そうね。・・・・・そうだわ。お義父様、お母様、お義姉様を地の精霊様に会わせればいいのだわ。猫の匂いが消えたわ」
「「頭いいな」」
・・・・・・・・
私は歩かされ。森の中に入った。
「さあ、地の精霊よ。道を空けたまえ」
ドボ、ボコボコボコ!
土魔法、穴が開いたわ。
「「「チュー!チュー!」」」
何?この小さな動物は、気持悪い。尻尾が肌色で細長い。耳は小さく、色はドブ色・・・・・沢山いる!
マルグリットがネズミを知らなかった。無理もない。
何故なら・・・
☆領内女神教会
「シスター殿はおられるか?ご領主殿は留守であった」
「まあ、王国から、王子殿下が騎士団を連れ直々に?」
「シスター様、第三王子ケインです。博物学を研究しています。冒険者ギルドから、ネズミが領内に発生したとの通報がありました!」
「何故、ここに?南の辺境伯様が防衛されているのでは?ここは辺境伯様の領地から一つ北の領地ですわ」
「大穴を掘ったのでしょう。南には山脈があり。ネズミが超えられない万年雪があります」
「防備の薄いここを狙ったのでしょう。何か、変わった事は?」
「そう言えば、ご領主一家が、村々にパンくずをばらまいたり。使用人達を解雇しました。ええ、村から通いで来る女房たちがメイド代わりでしたわ」
「「ニャー!ニャー!」」
「この猫たちは?珍しい。猫は貴重だ」
「はい、総領娘マルグリット様がお預けになりましたわ」
「「ニャー!」」
「猫が飛び出したぞ。追え!」
「「「はい、殿下!」」」
・・・・・・
一方、マルグリットは、ネズミたちが作った地下宮殿にいた。
「チュー!チュー!」
「はい、この娘を取り込めば猫を始末できます」
「ええ、そうよ」
「クンクンクン、今日は何を頂けますか?」
「チュー!チュー!」
王冠を被った魔物がいるわ。これが、この魔物の王、隣に王妃、その隣に王子、王女たちかしら。
「チュー!チュー!」
「はい、それもようございます」
何か、話しているわ。怖い・・・でも、猫を恐れているのが分かるわ。
「ヒィ」
小さい魔物が私に寄ってくるわ。
「痛い!」
かじられたわ。
「マルグリット、お別れだ。ここの食を彩ってもらうことに決定した」
「「「チュー!チュー!チュー!」」」
私はこの時、猫をお迎えしたときの事を思い浮かべた。
猫はとても高い。
初めて見たとき。余りの可愛さに感動して、
『フフフ、男の子がギンタ君、女の子がロッテちゃん』
『ニャー!』
『ニャン!』
『ニャー!ニャー!』
私は猫のものまねをして、話そうとしたっけ。かなり上手くなったと自負している。何故か。口に出た。
「ニャー、ニャー、ニャン!」
ビクン!
「「「チュー!チュー!」」」(猫がいた)
「チュー!チュー!」(こいつは人族の皮を被った猫だ!)
「チュー!チュー!チュー!」(騙したな!こいつらを食え)
「ヒィ、地の主よ。お許しを」
「この子は人族です」
「クンクン、落ち着いて、猫の匂いがしないわ!」
ヒィ、魔物がお父様とお義母様、義妹をかじっている!
ドドドドドドド!
天井が崩れた。小さな魔物たちは土に溺れているようだわ。
「動揺されては魔法が解けますぞ!」
私は、意識を失ったわ。
☆森の中
「ニャー!ニャー!」
「おい、猫が鳴いている方向に土埃が」
「掘り返すぞ!」
☆3日後
私は女神教会のベットの上で目が覚めた。
ペロペロ~
猫たちが手をペロペロなめてくれている。
「マルグリット嬢、お目覚めか。大手柄だ。おっと、失礼、私は第三王子のケインです。博物学を専攻しています」
事情を話してくれた。
あの小さな魔物はネズミと言い。始めに侵略する地域では人族を操り。住みやすくする。この領地を橋頭堡にしようとしたそうだ。
「私、何にもしていません。猫ちゃんのおかげです」
「いいえ。ネズミの術は心の隙間に入り込みます。失礼ながら、調べました。父君の浮気の子が義妹君でした。義妹を継がせたかったのでしょう」
調べによると、ピクニックに行った時にネズミの術にかかり。三人にとっては、地下は王宮に見えたらしい。
地の精霊だと思っていたようだ。
「ネズミはまだいます。全滅はしていません。領地は・・・王国軍に囲まれる事になるでしょう」
「分かりました。私は・・・」
☆数ヶ月後
「ニャー!」
「「「「ニャー!ニャー!」」」
ギンタとロッテの間に子猫が誕生し。ケイン殿下にお願いして、王都から猫を迎えることになった。近縁での交配を防ぐためだ。
ネズミが入ってしまったのは仕方ない。
猫ちゃんたちに狩ってもらうのだ。
「マグリット殿、猫を連れて参りました」
「有難うございます」
猫ギルドを立ち上げた。元の屋敷が本部だ。
そして、ケイン殿下は、まだいらっしゃる。
最後までお読み頂き有難うございました。




