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武勇伝  作者: 真田大助
36/67

たつ

一乗谷が雪で閉ざされてから一月。

年の瀬を迎える準備で忙しい頃合い。夜が明けた直後の教景館はハチの巣をつついたような大騒ぎになっていた。


「急げ!馬の用意じゃ!」「何をしておる、蓑と笠なんぞ後で良い!」「大声を出すでない!無用に騒ぎ立てるようなことをするな!」

と、男達の声が大きくなったり小さくなったり大忙しだ。


大騒ぎになるのも仕方ない。だって、殿様が一人で駆け出してしまったのだから。


聞けば、夜明け前に急に厩舎に来てそのまま駆け出してしまったらしい。もちろん護衛は一人も付いていない。北村のオッチャンが居ないのを見ると、隠忍術衆は急いで追いかけていったのだろう。

どこに行ったのか、どうして一人で飛び出したのか。置手紙の一つもなく、まだ暗い中叩き起こされた俺達は大急ぎで支度をして今まさに捜索へ出立しようとしている所だ。


「泉、手勢を率いて大野郡へ向かえ。安原は加賀との国境に、野坂は吉崎御坊じゃ。高間、お主は竜興寺を見て参れ。儂らは敦賀へ向かうぞ!」


駆けつけた杉本のオッチャンの指示の下、「おう!」と威勢の良い声と共に騎乗した男達が駆け出す。

いずれも数騎の騎馬が先行し、足軽十人程が後から追いかける陣立てだ。ただし、杉本のオッチャンが向かう敦賀組だけは海次郎や幸千代を含め三十人の足軽が続く。


不安そうな顔をしている海次郎と幸千代の二人と目が合った。二人は小袖に藁蓑と笠を被っただけの恰好で、腰には一振りの太刀を差している。一体何がどうなっているのか状況も掴めない中、不安になるのは仕方ないだろう。

かく言う俺も何がどうなっているのかわかっていない。籠手と脛当て付けて小太刀を腰に差し、緊急事態だからと騎乗して捜索に参加する。初めての遠乗りがこんなことになるなんて。と葉雪の背を撫でると、ブルルと威勢の良い返事が返ってきた。


「武、お前はこっちじゃ、来い!」


重光に呼ばれ、二人で騎馬で教景館から駆け出る。不安げな海次郎と幸千代に声をかけたかったがそんな時間は無いようだ。後に続く足軽の事は考えず、まだ暗い一乗谷を北に抜けて一気に駆け出した。


一乗谷を守る下城戸は萩原の爺さんが根回しをしてくれたようで全開になっている。殿様は北から一乗谷を出たようだが、その先の消息は不明のようだ。


下城戸を出たところで泉隊と東西に分かれ、更に北に向かう道中で安原隊、野坂隊と別れて馬を駆け続ける。

冷たい空気が口を乾かし、寒風が身体を撫でる。ろくな防寒着も無いが、愛馬の葉雪を駆けさせることに夢中で不思議と寒さは感じなかった。無論、道中も四方に目を配って殿様らしき人影を探し続ける。辺りは作業を始める農民がチラホラと見え始めるが、その誰もが俺達を見て物珍しい顔をするばかりで殿様らしき人影は見受けられない。


必死に重光に食らいつきながら駆け続ければ、陽が昇り切る前には中角館の近くまで到着した。

中角の渡し場を越えれば九頭竜川が見える。そんなことを考えていると、前方から一騎、影がこちらに向かって駆けてくるのが見えた。


「どうかお待ちを!お待ちくだされ!」


朝日に照らされたその男は、俺達の前で下馬して土下座する。


「某、乙部義綱が家臣、鷲塚八郎にございます!先の中角館の騒動にてお見受けいたしました、高間殿にお間違いございませんでしょうか。」

「如何にも。朝倉教景が家臣、高間重光にございます。火急の自体故、馬上より失礼いたす。一体何用か。」


鷲塚八郎と名乗った男がガバッと顔を上げると、申し訳ないような困った顔をしているのが見えた。


「つい今しがたまで、朝倉教景様が中角館にいらしておりました。主の乙部義綱と暫し会談し、息つく間もなくご出立されてしまい…。」

「乙部殿と会談?一体何を話されたのか。」

「仔細は伺っておりませぬが、曰く朝倉の世について問われたと…。お話に満足されなかったのか、そのまま中角館を出て九頭竜川を渡られました。恐らくは…。」

「竜興寺か。」


三人揃って竜興寺の方角を見上げる。辺りは朝霧が立ち込め、寒さで手足の感覚が無くなりそうだ。


「教景様はお供をお連れではありませんでした。微力ながら我ら乙部家を護衛にお使いください。」

「お気持ちはありがたいが不要にございます。その代わり、我らの後に兵が続きます故、渡しの舟を余分に用意いただけますでしょうか。」


鷲塚八郎は一つ大きく頷くと、大慌てで中角館へと走っていく。


小舟の用意を待ちながらようやく一息つく。

一乗谷では留守居番の萩原爺さんが一乗谷近辺を捜索する手筈になっている。おそらく殿様は竜興寺にいるのだろう。一乗谷に知らせに戻りたいが、その足が無い。もどかしい思いをしながら、馬上で白い息を吐く重光に話しかけて寒さをごまかす。


「やっぱり例の事かな。」

「それしかあるまい。景豊殿の様子は些かおかしいと思っておった。あの御仁と運命を共にするとなると、相当な博打になると踏んだのやもしれん。いっそ静かな所でしかと考えたいと思っての遠出であれば、我らは無用の追従となろうな。」


九頭竜川の対岸にある山頂の竜興寺を見上げて重光がぼやいていた。


・・・


「そこを通して頂けませぬか。」


お堂の前に座る和尚に対し、重光は片膝をついて頼み込む。

白銀に包まれた竜興寺に殿様がいた。寺の山門には殿様の馬が繋がれており、参道を駆けのぼれば小さなお堂の扉の前に和尚が地蔵の如く座り込んでいた。お堂の中からは低い声で読経の声が聞こえるばかりで、外からの呼びかけには一切応じてくれない。

座る和尚も瞑想しているのか、重光の問いかけにはピクリとも反応せず、ただ静かに佇んでいる。


力づくで和尚を排除するわけにもいかず、重光と二人どうしたものかと悩んでいればいつの間にか北村のオッチャンが背後に立っていた。


「高間殿、武。ここに来たのがお主らで良かった。」

「き、北村殿。いきなり背後に立つのはお止め下さい。心の蔵が飛び跳ねました。」


いきなりの登場に驚いて危うく抜刀しそうになる俺達をよそに、北村はいつもと変わりない表情で淡々と話し始めた。


「殿から言伝を預かっておる。『暫し籠る。』とのこと。」

「それは…いえ、殿の下知とあらば従うまで。今、家中の者が方々に捜索へ出ております。急ぎ使いを出さねば。」

「そちらは既に手の者が向かっておりますのご安心を。杉本殿と三田崎殿にはこちらに向かうように言伝も送りました。しばしここで待つとしましょう。


北村のオッチャンは地面に胡坐をかいて座る。仕方ないので俺と重光も対峙するように地面に腰を下ろす。

陽は雲に隠れ、辺りはまだ薄ら暗い。


「昨夜、景豊殿から書状が届いてな。雪解けに合わせて動くようだ。」


北村はお堂を見上げて呟く。

ついに来たか。思わず両手をグッと握りしめる。


「それで、殿は何と。」

「何も言わすに駆けだされた。そのままここに籠られておる。」


三人揃ってお堂を見上げるが、変わらず和尚さんが座っているだけで扉が開く様子は無い。

低い読経だけが響く、静かな時間が流れていた。


・・・


杉本のオッチャンと安広が到着した頃には日は傾きかけていた。

教景館から捜索に出た部隊はそのほとんどが館に戻っている。大殿から「何事だ。」と問い合わせがあったようだが、萩原爺さんが「殿が急に鷹狩に出かけてしまったので追いかけた。」と返答しているらしい。

竜興寺には五十を超える朝倉兵が集まっており、万が一に備えて周辺を警戒している。竜興寺の僧兵や坊主達は色々と察しているのか、距離を置いて関心のない体裁を装ってくれている。


お堂の前には杉本、北村、重光、安広、俺の五人が集まり、朝からの状況を共有している。

といっても今の我々に何をすることも出来ず、五人そろって腕組みをして渋い顔をするだけだ。


さてどうしたものか、と誰かが呟いた瞬間。低い唸り声のような読経が止まった。


「まったく、あの坊は。いつまでたっても聞かん坊ですな。」


扉の前で瞑目し、微動だにしなかった和尚さんがため息と共に呟いたと思えば、勢いよくお堂の扉が開いた。そこに立っていたのは、髪も服装も乱れ、眼が爛々とギラついている殿様だった。

ギロリと眼前に並ぶ俺達を睨む。色々と聞きたいことがあるのに、その眼光に射竦められたように誰も声を発せない。


「武。来い。」


ぶっきらぼうにそれだけ言い放つと、殿様はさっさとお堂の中に戻っていく。

まじか。お堂の中は真っ暗で先が見えない。ただの小さなお堂なのに、冥界への入口にすら見える。


「お気をつけて。」と安広が不安げな顔で肩を叩く。

「阿呆。殿に限って無体なことはせん。武、よう考えて進言するのだぞ。」と杉本のオッチャンが背中を叩く。

「とにかく、よく話しを聞くのだ。」と北村のオッチャンが頭を撫でる。

「行ってこい。何かあったら声をあげろ。」と重光がドンと俺の背中を押す。


コイツら…自分がいかないことを良いことに勝手言いやがって…。だが仕方ない、ご指名だ。行ってやろうじゃねぇか。

パンパンと顔面を二度はたき、暗いお堂の中へ足を踏み入れた。


・・・


中はほとんど真っ暗だった。小さな天窓がいくつかあるようだが、日も暮れて自然光はほとんどない。行燈がいくつか灯されており、かろうじて殿様の顔が見える程度の明るさを保っている。広さは六畳くらいだろうか。板の間の上に、殿様は胡坐をかいて座っている。その目の前には大きな一枚の紙が広げられており、それを睨むように視線を落としているのがかろうじて見えた。

入ってすぐ、背後の扉が閉ざされた。とりあえず扉を背にして座り、一礼する。

空気が重い。気分が悪くなりそうだ。


「たわけ。お主に丁寧な所作など求めんわ。近う寄れ。これを見て話しがしたい。」


先ほどより幾分か柔らかくなった声色に釣られて殿様に近づく。大きな紙を挟んで胡坐をかいた。

俺と殿様の間には大きな紙が一枚。紙にはヘタクソな日本列島らしき絵が描かれていた。しかし北海道も沖縄も書かれていないな。まだ見つかっていないのだろうか。重い頭を振って余計な考えを飛ばす。


「越前がどこかわかるか。」

「ここだ。こっちが加賀。こっちが若狭。ここが近江でこの辺が京の都。」


俺の知っている地図よりだいぶ適当だが、何となくの位置はわかる。延暦寺でも教えられたしな。

指差しながら答えると、殿様は小さく頷く。


「越前はようやく安寧を得た。斯波家、甲斐家を追い出し、朝倉家が統治をして民の暮らしは安定しておる。しかし民は欲深い。一向宗の唱える極楽浄土を実現せんと結託し、武家に反抗しておる。滑稽なことよ。世を治めたこともない民草坊主が越前を平らげた朝倉家に文句を言っておるのだ。」


好き勝手言いやがって、ってところか。それには同意できる。理想を掲げるのも語るのも自由だが、それを相手に求めるなら相応の覚悟が必要だ。とは言え、一方的に年貢を取られ、戦に狩り出される側の不満もわかるので難しいところだ。

 頭を使うと頭痛と吐き気、耳鳴りがする。考えるフリをして頭を抱える。身体の中がひっくり返りそうな感覚に襲われる。

そんな俺をよそに、殿様は視線を落としたまま、低い声で語り始めた。


「儂は朝倉宗家を継ぐと言われて育った。しかし兄が家督を継ぎ、兄の子が宗家を継いでおる。このままでは儂が宗家を継ぐことはないだろう。男たるもの、一国一城の主になりたいと願うものだ。朝倉家を強く大きくすることが出来るのは儂だけだと思っておった。しかし兄からの治世、朝倉家は越前より拡張こそしていないが安寧を得ている。一乗谷は都からの文化が入り、三国湊は交易が盛んになり国内が華やいできておる。今、景豊殿が、儂が謀反を起こせばどうなる。少なくとも国内は割れ、今と同じような安寧を得るには数年を要そう。それは儂が望むことなのか。朝倉家のためになるのか。ずっと悩んでおる。」


中角館のことを思い出す。小さな少年が『今の朝倉の世』を望んで父と対峙した。欲にかられた父親は討たれ、安寧を願う少年が家督を継いだ。殿様と景豊は欲にかられた側だ。朝倉家が大きくなるため、もっと裕福になるため。己の力を試すため。私欲にかられている。

今の世を守りたいと願う小さな少年が立ちふさがった時、殿様はそれを斬ることが出来るのか。聞きたいような、聞きたくないような。だけど俺がここに呼ばれたってことは、遠慮なく話したいということなのだろう。だから聞いてみるしかない。

酷い耳鳴りと眩みに負けず、大きく深呼吸してから声を出す。


「人は欲によって動くと習った。それは決して悪いことだけではないと思う。俺だって坊主のままなんとなく生きるのはつまらないと思って色々手を出した。その結果、ここにいる。殿様は何がしたいんだ。朝倉家を大きくしたいのか、それとも自分の力試しをしたいのか。」


地図から目線を上げた殿様と目が合う。

お堂の前で感じた威圧感は無い。ただ暗く、悩んでいる一人の男がいた。


「儂は、朝倉家を大きくしたい。それは家中の繁栄のため、朝倉家の家名を上げるためだ。」

「それは殿様が朝倉家当主じゃないと出来ないのか。出来ないなら、出来る環境をつくるべきだ。それが謀反だって言うならやるべきだと思う。そうじゃないやり方があるなら、それは考える余地があるんじゃないか。」


景豊の様子を思い出すとやはり一抹の不安が残る。無能な味方ほど害悪になるものはいない。自滅するだけならまだマシだが、こちらの足を引っ張るようなことがあれば共倒れになる。

殿様は戦狂いだとは思うが、いたずらに人を殺めたいわけではないはずだ。朝倉家を大きくしたいのであれば、今の立場でも出来ることはあるんじゃないだろうか。


「儂は土地を持っていない。今の体制では儂はただのまとめ役であって何かを成すことが出来ぬ。自前の兵を持ち、土地を持ち、城を持つことで将として動くことが出来る。しかし儂を疎んじる連中は儂に力を与えない。儂が力を持つのが怖いのよ。故に儂の手柄を隠し、小さくし、地に埋められてばかりだ。」


自嘲気味に笑い、再び地図に視線を落とす。

まさに権力争いだな。中角館の気迫を見る限り、殿様が戦に強いってのは本当なんだろう。出る杭は打たれるってことで、手柄を立てても隠されるか、過小評価されているのかもしれない。そんなことされれば、やりようのない気持ちになるのも分かる。


「皆、己が大事なのよ。主家のために動く家などほとんどおらぬ。それを非難しようなどとは思わん。儂も同じようなものだからな。しかし、その根底は天下泰平を願ってのこと。朝倉家、ひいては幕府を中心に武士が納める安寧の世をつくること。これが儂の願いだ。」


「その世の中をつくるために、殿様は朝倉家を大きくしたいんだろ?だけどいくら手柄を立てても隠されて正しく評価されない。」


殿様は小さく頷く。


「だったらさ、隠しようもないくらい大きな手柄を立てるしかないだろ。それも大殿に直接見える形でさ。」

「目の前で、あるいはその耳に直接朗報を伝える、か。」


ビュウと風が吹き込んで行燈の一つをかき消した。闇が増した空間で殿様の眼がギラリと光っている。

丁度良く、目の前に一つの実が落ちている。この謀反を直接伝えることが出来れば、大手柄になるのではないだろうか。

新鮮な空気が入ったからだろうか、先ほどまでの頭痛や耳鳴りはどこかへ吹き飛んでしまったようだ。


鮮明になった頭でシンプルな二択を描く。


一つは景豊と共に起ち、朝倉家を簒奪すること。

一つはこれを密告し、朝倉家を助けること。


「面白い。朝倉家を大きくし、儂が力を得るにはその方が容易やもしれん。」

「それに悪名も広がらない。いや、むしろ忠臣として家中でもゆるぎない存在になるかも。」


分の悪い賭けが、一挙にひっくり返るような。

腹の底が煮えるような、気が熱くなるのがわかった。


・・・


小さいお堂の中に男六人が車座になって座る。

消えた行燈に再び火が灯され、影がゆらめく。


「各々。今日までよう付き合ってくれた。長く仕える者、儂を信じる者、拾い子。愉快な家臣と語れること、嬉しく思う。」


全員が小さく頷く。


「儂は朝倉家を大きくしたいと思っておる。それは朝倉家の家名を上げるため、ひいては幕府のもとで天下安寧をつくるため。そのために、儂は自ら起ち、朝倉宗家として越前より打って出る心づもりでおった。」


杉本のオッチャンが大きく頷く。長く仕えている家臣からすると、朝倉宗家の当主への思いも一入だろう。


「しかし、越前を見て回った気が付いた。民は今、安寧を享受しておる。兄上からの治世で越前は安定し、明日を見る眼には光が宿っておった。儂は、それが見たかったのだと思い出した。」


珍しく殿様の声が小さい。乱れた髪を掻きながら、顔を伏せる。


「世の安寧。そして儂の力試しのために、景豊殿に合力する。そのつもりだった。が、世の安寧は今そこにあり、儂の力試しも他にやりようはある。むしろ今起てば越前は混乱し、この安寧を取り戻すのにまた長い年月がかかろう。それは誰も望まぬ。」


何を言いたいのか、全員が察している。後は殿様の覚悟だけだ。

殿様は顔をあげ、全員を見る。暗いお堂の中、その眼に光が宿っている。


「儂は、景豊と袂を分かつ。謀反を伝え、その首は儂が落とす。その功を持って更なる高みへと昇る。お主らを巻き込んで今日まで来たが、儂の腹は決まった。付いてくる者はここに残り、従えぬ者は景豊の下に走るが良い。咎めはせぬ。」


シン、と呼吸すら忘れたような静寂だったが、それも一瞬で破られた。


「殿、某は殿に従いますぞ。殿が忠を尽くすように、我らも殿に忠を尽くすのが道理にございます。宗家の座は口惜しゅうございますが、それを耐えてでも献身奉仕する殿のご覚悟、この杉本は一門を率いて従いまする!」


杉本のオッチャンがブルブルと震えながら両手をついて頭を下げる。

それに続くように我も我もと全員が頭を下げた。俺も一応下げておく。


「皆、よう言うてくれた。景豊を打倒した後、褒美を楽しみにしておれ。」


「おう」とお堂を揺らすような掛け声を持って、この密談は終わりを告げた。

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― 新着の感想 ―
その時歴史が動いたならぬ、歴史が変わったですね
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