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清明の結婚  作者: 木苺
Ⅱ キャラハン
9/42

キャラハンの生い立ち

キャラハンは 夢多き乙女であった。


ただ 真面目な性格で頭も気立ても良かったので、やっかみ半分に嫌味を言われたり

男子からちょっかいをかけられることも多かった。


それが嫌だと言えば、周囲の大人達は、問題児たちの行動を注意したり、

その子らの問題ある言動をあらためさせるよりも、楽な選択をした。

「あんたは賢いんだから黙ってなさい」とキャラハンの口をふさぐという、はるかに楽な道を選んだのだ。


なので 結局キャラハンは 大人達から一切守られることなく

周囲の子供達からの憂さ晴らしのターゲットにされたまま大人になった。



(いじめのターゲットから抜け出せないように 教師達やよその親たち・噂で動く町の人々からまで縛られてしまったら

 まともな 対等の友達関係を築くチャンスすら奪われる。


 だって 私のそばにいれば、そういういじめの現場の目撃者にならざるを得ず

 それを止めに入れば その人の立場が悪くなる

  だっていじめっ子は、今度は止めに入った人をいじめのターゲットにしたから


 いじめっ子が騒ぐとそれを制止できない担任は教室の中でわめきちらしたり

 なぜか、突然授業中に担任が「成績のいい奴は性格が悪いんだ。世の中はそういう奴がのさばるから嫌なんだ」などと一方的に私をいびり倒したり、「お前のような奴はいじめられて当然だ」と言いながらしきりにいじめっこたちに目をやるのだ。


 そして私に対する これまで以上に激しい暴力行為が開始されると、担任は ニコニコしていじめっ子達に

「おお 元気にやっとるな」と声をかけた。

 そうやって いじめっ子を懐柔して 教室が平穏であるかのように装う担任。


そういう状況をになると、クラスメートは一斉に私の存在そのものを見ないことにしてしまった。


 だって、見て見ぬふりをすれば その人の良心が痛むから。

 だから 人をいじめることを厭う子たちは、嫌なことを見ないことにした。

 そんな自分の在り方すら認める自責の念から逃れるために、私の存在そのものを「無い」ことにしてしまった。


結果として 私は 完全なる孤立、ただのボール、常に憂さ晴らしに蹴っ飛ばされ、投げ捨てられるだけの存在にされてしまった。


 そういう実態を無視して、友情だの友達体験の重要性を説きつつ、

 いじめを容認して いじめのターゲットを固定化するように圧力かけまくりの大人なんて偽善そのもの)



それが 子供の頃キャラハンが自覚していた己の立ち位置であった。


 だからこそ キャラハンは学校を出たあと「社会人としての己の立場」を確立するために必要なものは何かと考え、「成人後の己の尊厳を守る事のできる立場」を自らの手で勝ち取ろうと、社会的に無力な未成年の間は 勉学や 家族への義務を果たすための仕事を頑張った、正攻法で。




おかげで キャラハンは 理知的にこなせる仕事の上では成果をあげたが

こと 個人の恋愛とか男女交際とかは 苦手なまま30歳を迎えてしまった。


なにしろ 恋愛関係とは、ある意味 我欲の強い女達から、自分と彼氏との関係を守り抜く根性なしでは成り立たないものであり、


男女交際とは、自己中心的な卑しい男をはねのけ、下らぬ男達の口をふさいで

自分の女性としての「他者からの評価」を高めていかなくては、

好いた男との交際もままならない現実であったから。




しかも 気立ても頭も良くて心の優しい子を、「いい子」として便利に扱う親族というのは

「いい子」にふさわしい縁談をもたらす努力もせずに、

「早く結婚して 自分達に楽をさせてくれ、自分達に満足をもたらす家庭を築いてくれ、お前の力で」としか言わない輩でもあった。


そのことに気づいた時 キャラハンは ショックのあまり人間不信になりかけ

心底 生まれてきた甲斐がなかったと思った。


が、しかし

「いやいや 私は これまで頑張って自分の人生を切り開いてきたんだ。

信義を重んじ、人としての矜持を貫く生き方をしてきたんだ。

その努力を無にするのは嫌だ!」

と思って かろうじて この世に踏みとどまった次第。



というわけで しばらくは キャリアを築くことに専念していたキャラハンであったが、

その年齢としては かなり良いポストを得たのちに実感したのは、

『曳きも押しもない現状では、こっから先は 個人の努力と実力ではどうしようもない世界だ、つまらないな』という冷めた感想しかなかった。



☆ ☆彡 ☆彡 ☆



とまあ いろいろ思うことはあったが、とにかく「今」を生きるべく

これまでも 今現在も 頑張って生きているキャラハンであった。

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