出会い
暖かい見守りの甲斐あって、コンコン会から多くのカップルが誕生した。
もちろん個人的お付き合いを経て、関係解消に至るカップルもあれば
お友達関係に納まって、他の異性とのカップリングに至るケースも
めでたく 婚約や結婚に至るカップルもあった。
というわけで コンコン会は1年で終了した。
とりあえずは 独身官僚や独身貴族たちの、出会いのきっかけ需要は満たしたということで。
数年後には また期間限定でコンコン会を開くかもしれないが
それは その時にならないとわからない。
◇
そして 肝心の清明であるが・・
「第1回コンコン会」が開かれる前に 清明は スカイからしっかりと念を押された。
「この会は 半分は君の為に開催するようなもんだから、しっかりと 女性達と向き合うように。
1年間の期間限定なんだから、これを逃すと次はないと思って頑張りたまえ」スカイ
「そんなことを言っても、”初めまして 清明です どうぞよろしく”のあとの展開ってワンパターンになりがちではありませんか?」
「だからこそ 会合では ゲーム大会とか 討論会とか いろんな企画ルームを盛り込んでいるんだよ。
自分の好みのイベントに参加するもよし、
参加者を観察してイベント終了後に話しかけるもよし、
会食のテーブルには ファシリテーターも配置しているんだから、
それでも 気が合った子と親しくなれないようなら、
会の終了後にアドバイザーの所に行って、自分の対人パターンの振り返りでもやったらどうだい。
今回のコンコン会の目玉として、親睦目的の対人スキルを上げるための講習会も開いているからさ」スカイ
「職務上必要とされる対人スキルと、個人と個人の親睦のために必要とされる対人スキルが
ちょっとちがうってこと 君 知ってた?」スカイ
「うーん、公の場におけるマナーと、人としての基本の在り方は学びましたけどね
『対人スキル』として意識したことは これまでなかったですね」清明
「だよねー。
僕も 異種族であるボロンやミューズからいろいろ指摘される中で 気がついたんだ。
そこから 王宮の研究者や教育担当者たちにいろいろ研究させて まとまった成果を、
今度のコンコン会では導入するからね。
大いに活用してもらえると嬉しいよ。」スカイ
◇
その結果
〇第1回反省会で清明が受けたアドバイス、とレッスン
会場にはいったらすぐに物理的に近い位置にいる人にだけ話しかけるのではなくて、会場を見回して、もっと自分が気になる人の元に行きなさい
自分に話しかけて来た人が 自分の好みの人ではない・興味のない相手なのに、丁寧に応対して自分の時間を無駄にするのはやめなさい。
というわけで、上手に会話を切り上げるレッスンを受けた。
〇第2回反省会では、
顔を合わせた人すべてに笑顔を振りまくのは誤解の元
自分が話したい相手の傍で会話の順番待ちをしていては、いつまで経っても自分の順番は来ない(自分がいいなと思う女性は、他の男性にも人気があるのが普通)
そこで、気になる人に、さりげなく近づいたり 声をかける練習に参加した。
とまあ 男女交際のきっかげづくりに関する初歩的アドバイスを受け
清明も男女交際におけるスキルを磨き、
とうとうデートにまでこぎつけた。
◇ ◇
清明は、噂の男であり、公爵でもあったので、女性達からも興味・関心が集中していた。
それゆえ、第3回のコンコン会で、15分間の自己アピールタイムに、「自分が公爵夫人に求めること・婚約者への期待」と言うスピーチを行なった時には、多くの女性が集まった。
さらにまた 部屋の窓越しに廊下で傍聴する男達もそれなりに居た。
(清明のスピーチの予定を知った既婚者達の多くも、傍聴を希望したのだが、それは認められなかった。あくまでも これは 婚活目的の独身者のための集いであり、そこで話された会話を
自身の結婚相談以外の場で話すことも禁止されていたのだから。
人と親しくなるためには 自身の内面を話すことも必要である。
それは 己の弱みを話すことにもつながる。
だからこそ 人はみだりに打ち明け話をしない。
かといって むやみに内あけ話を聞かされるのも 聞かせたのだから信頼にこたえよと迫られるのも困る。
しかし そこを乗り越えないと、結婚話は前に進まない。
なので 嘘はなし。
相手のプライバシーを侵害しない(むやみに聞き出そうとしない)
と同時に、聞いた話を口外しない。
ただし、聞かされた話に疑問があれば 会のアドバイザーに相談する。
そうやって場を整えることにより、婚活を促進するのが コンコン会の役割なのである。
なお 日常生活の場における交際に発展した場合は、コンコン会が課した守秘義務・規約が
交際相手との互いの信頼関係に基づくものへと移行する。
かわりに 今度は 両者の社会的信用・信義のありようが厳しく問われることになるのであるが)
◇
話を元に戻すと、通常の自己アピールタイムでは、アピールの後の15分間を質疑応答に充てるのだが
清明の時は、特別会場を用意しなくてはならないほど 聞きに集まった女性がとても多かったので、
女性達は、その15分間を使ってスピーチの感想をめいめいカードに書き込み、
あらかじめ用意していた自己アピール・身上書(写真付きも可)とともに封筒に入れて清明に手渡した。
清明は 封筒の裏側に、手渡されたときの印象を簡単にメモしておいた。
(これは あらかじめファシリテーターから全員に告知されていた)
それらを持ち帰り、しっかりと中身を読み込んだあと、清明は 何人かの女性と
コンコン会の会合で話し合ったり、会食したり、さらに 王都でのデートを経て
コンコーネ領への招待に至った。
◇
王都でのデートは、どちらかと言えば 女性から誘われたケースが多かった。
一方 コンコーネ領への招待は、清明が誘いたいと思った複数の女性を招待した。
何故 複数になったかといえば、王都でのデートの都合がつかなかったが
清明としては ぜひ一度話をしてみたいと思った女性もいたからである。
さらにまた 清明が選んだ女性の中には、一人でコンコーネ領に御呼ばれするのは恥ずかしいから、他の女性と一緒の方が良いという人もいたのである。