結婚式
王国には 特にこれと言った宗教はない。
それゆえ 結婚式は人前結婚であり、その形式はケースバイケースである。
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清明とキャラハンは、王宮の「婚姻の間」で結婚式を挙げた。
もともとは 王や皇太子の結婚式を行う「婚姻の間」であったが、
先王の時代から、王の認可により、貴族の結婚式用に貸し出しできるようになった。
柱は金色、窓は光をよく通すが色鮮やかなステンドグラス。
天井には まばゆい光を放つシャンデリア。
参列者のための椅子も 適度な弾力と柔らかさを持ち、座り心地抜群。
新郎・新婦の控室兼更衣室も手入れが行き届き、
開会までの準備も 落ち着いてゆったりとした気分でおこなえるようになっていた。
◇
結婚式の進行はスカイ国王が行なった。
スカイは清明の友人であり、公爵家の結婚式を国王がとりしきるのは「格」にふさわしいことであったから。
結婚式の衣装は、二人で決めた。
あれやこれやと目移りしたが 最後はシンプルに
清明は、白のフロックコート
背が高く 武道家らしいかっちりとした体格が引き立つデザインを。
キャラハンは 白のドレス。
ハイネックの長袖、肌の露出はないけれど、
首元、袖 見ごろ、裾回りと 細かくレース模様を切り替えた生地が
すっきりとしたラインを産みだし、キャラハンのスラっとした体躯を引き立て
ゆったりとした裾が優美さを醸し出す逸品
ベールの代わりにティアラをつけ
胸元には 大粒の琥珀のペンダントが揺れる。
濃いはちみつ色をしたドロップ型の琥珀はキャラハンのお気に入り
もう一つのお気に入りは 紫外線を当てると蛍光を発する琥珀だが、
それは夜会用。
昼間の結婚式では 大粒の琥珀の方を身に着けている。
手にするブーケは白薔薇6本
その心は「あなたに夢中・互いに尊敬と愛を分かち合いましょう」
以前 手作りした胡蝶蘭は、ブーケではなく、
夜会に出席するときに使う髪飾りに用途を変更した。
やはり 今の満ち足りた気持ちにふさわしいブーケを、結婚式では手にしたいと思ったから。
ちなみに 清明の胸ポケットを飾るのは白薔薇1本のブートニア
「一目ぼれ あなたしかいない」
♬ ♬
祖国への愛があふれる「フィンランディア」の冒頭 金管楽器の重々しい音色が会場に響き渡る。
この選曲は清明である。キャラハンは 麗々しすぎると恥ずかしがったのだが。
中央の扉が開き、清明が差し出す掌にキャラハンの手を預けた二人の姿が現れる
曲はモルダウの川の流れを現す部分に切り替わり、二人はレッドカーペットの上を静かに歩みだす。
「わが祖国」はキャラハンの趣味だ
2曲を組み合わせた編曲はキャラハンが自分で行なった。
赤じゅうたんの両側の椅子に座っていた客たちは、トランペットの音とともに立ち上がり
モルダウの曲とともに歩みだした二人に拍手をしたり、早くも花びら形の紙をまいて迎える。
二人は絨毯の先に立つ スカイの元まで進み(一同着席)、お辞儀をした。
スカイは観客に向かって問いかける
「この二人の結婚に異議ある者は 今 名乗り出よ
さもなくば 永遠に口をとざすべし」
「異議なし!」客を代表して デュランとボロンが次々と声を上げる。
次にスカイは二人に問いかけた。
「病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も
二人は互いに、愛と敬意といたわりを示し、ともに助け合い 共に家庭を築き維持していくことを誓いますか?」
「はい!」二人は 声をそろえて答えた。
「ここに 二人を夫婦として認め 祝福します。国王スカイの名において。
さあ 皆 共に祝おうではないか、門出に立つこの二人を!」スカイ
そこで 客たちは全員立ち上がり 万歳を三唱した。
「ばんざい!」ボロン
「万歳!」一同
「ばんざい!」ミューズ
「万歳!」一同
「バンザイ」スカイも清明の横に立って、二人の方を向いて叫んだ
「万歳!」一同
そして 流れる子供達の歌声
「二人でいつも腕組んで、行くて春かな空仰ぎ♬~♬ FIGHT!」
これは コンコーネ領 領民代表として招待された児童合唱団が歌っている。
「それでは 新郎新婦と共に 祝いの席へと移動しましょう!」
スカイの掛け声とともに 一同は、子供達の歌声に包まれながら 清明とキャラハンを囲んで 隣の宴会場へと移動した。
(客達の最後尾を歩く児童達は 友達賛歌を合唱していた。
「一人 一人が腕組んで♬~」




