結婚まであと少し!
キャラハンにとって最大の懸案事項だった身内問題が片付いてからは
結婚に向けたもろもろのことも とんとんと片付いていった。
◇
キャラハンが所有する「キャラハンタウンハウス管理会社」はそのまま存続
ドラゴン・クランと提携して、そこから出向してきたハーフドワーフのデュランが事務長に就任
デュランは、錬金術師だった父が鍛冶を学ぶためにドワーフの親方のもとに弟子入りし、そこの娘と結婚して、できた子供だった。
彼は、父がめざしていた「安定した結果の出る錬金術の体系づくり」につながる、魔法と技術を統合した鍛冶・錬金の道を歩みたいと思い、
王宮科学院で測定法についていろいろ学び、その方面の技術者となり、
その後 王宮科学院に30年勤めた。
しかし 父方のドワーフの遺伝子の影響で、体格は人間的だが、加齢速度はドワーフと同じくゆっくり、なので 同僚からは「不老じゃないか?」という目で見られることに疲れて退職。
その後 スカイ国王の紹介で、ドラゴン・クランに加入したものの、
クラン内では あまり彼の活躍の場がなかった。
そこで 今回、キャラハンの会社の事務長に出向という形で、王都に引っ越し、
錬金術の研究をしながら、会社に訪れた顧客と 普段コンコーネ領で暮らすキャラハンとの連絡係を務めることにした。
というのも、管理人と「タウンハウスの管理組合」とのマッチングが成功すれば、
その管理人は だいたい10年~20年くらいは務める見込みなので
そしてまた「管理会社」の業務を積極的に宣伝したり拡張する予定もないので
そうそう 仕事の依頼はないだろうからだ。
その一方で、依頼が来れば、キャラハンは王都に行き、
関係者の希望をよく聞き、各々の希望を調整することにより依頼を果たす。
その時には、キャラハンは王都にある自分のタウンハウスで生活する予定だ。
王都とコンコーネ領との移動は ドラゴンクランが請け負う。
なので、キャラハンの会社は、毎年 ドラゴンクランへ提携料を支払う
さらに 今後 清明が王都へ転移するときも、きちんと謝礼を支払うことにした。
こちらは、ドラゴンクランへの顧問料として コンコーネ領主の私的会計から支払うことになった。
これは、
「いずれ訪れる代替わりを見込んで、会社や領とクランの活動は、王宮と切り離しておいた方がいいだろう。形式的には。
今は スカイがクランメンバーであり国王であるということで なぁなぁにしておるが
わしらよりも 周囲の人間たちのほうが早く老いていき、
いずれ 今は許されている「なぁなぁ」が問題視されるときも来るだろう。」
というコンラッドの助言に基づいてである。
「そこが 老化速度と寿命の異なる異種族交流の 最大の難点です」デュラン
「ですから タウンハウスの管理人も だいたい20年くらいをめどに、移動したほうが良いと思います。
人によっては、『自分は老け込むのに あなたはどうして歳をとらないの!』と不快感をぶつけてくる人もいますから」デュラン
ちなみに デュランの王都の住まいについて、クラン内でいろいろと検討し、
王都にあるクランハウスの住み込み管理人として デュランを派遣することにした。
「私は、『ドラゴンクラン・王都のクランハウスの管理人』兼『キャラハンタウンハウス管理会社の事務長』となるわけですね」デュラン
「そして クランハウスの入り口に、「~管理会社」の看板をかけて事務所を置けば、
クランハウスそのものの目くらましにもなるな」コンラッド
「そして クランハウスの奥の部屋に二重の結解を張って 部外者立ち入り禁止とし、
そこに転移陣を設置すれば、我々が転移魔法を発動するときの負担も減らせるという言うものじゃ」コンラッド
「こうして ウィンウィンの業務提携が成立ってわけさ。
そうそう クランハウスの所有者を、ぼく個人から ドラゴンクランに移しておいたから。
これで 僕が死んだ後も、クランハウスから追い出されることはない。」スカイ
(まさか 婚約して このような展開になるとは思わなかった)キャラハン
「おかげで 私たち夫婦の コンコーネ領と王都との移動問題も解決です」清明
「おや もう新婚さん気分かい」ミューズが冷やかした。
「言葉の綾です」清明
◇
清明にとってのこだわりポイント、でも なかなかキャラハンには言い出せなかった「婚約式」に関しては、結婚式と結婚披露宴の招待状を広範囲にまくことにより、婚約発表とすることでけりをつけた。
王宮で挙げる結婚式には、爵位持ち全員を招待した。
誰を呼んで 誰がよばなれなかった などというごたごたを避けるために
祝いたい方、興味のある方は いらっしゃいませ、
欠席も自由です。 という 意味合いを込めて
YES NOの どちらかに〇をつける返信ハガキを 招待状の封筒に入れた。
従来 貴族間の文のやり取りは、家人が直接相手に届けるのが正式とされていた。
そこへ ドワーフ便を使って爵位持ち全員に発送、
無料の返信ハガキつきで、
というのは 大変画期的なことで 大いに噂を呼んだ。
おかげで、花嫁に向けられていた好奇心がそがれてしまった。
だって 知りたければ 自分で見に行くことができるから。ただし諸費自分もちで(笑)
しかも 無料の返信ハガキが入っていて、〇をつけてドワーフギルドに託せば
それで 連絡終わり。
なので 招待されたから 欠席するけど祝いは届けなければなんて 気を使う必要がなくなった。
なにしろ 爵位持ち全員に招待状が発送されたのだから、
こっちも 何も 特別気を遣う必要もなかろうと、断りやすくなったのである
「それでなくても 最近は コンコン会のおかげでおめでた続きなんだから」
と人々はささやき、あっという間にこの「コンコーネ形式」転じて「コンコン方式」が
貴族界で広がったらしい。
さすがに 王国内の爵位持ち全員に結婚式の招待状を送るなんて剛毅なことをしたのはコンラート公爵だけだったが、
結婚の際に 所領内の爵位持ちに案内状を送って 婚約発表会の代わりとするという形式は王国内で定着した。
一方、王都で行う披露宴には、清明とキャラハンの仕事上の仲間のみ招待
結婚式と、披露宴の間に、清明とキャラハンの親族を集めた食事会を行う、
という形で、階級やタイプの異なる係累の多いキャラハンと清明の知人たちが一同に会することにより起きるかもしれない不協和音を回避することにした。
◇
清明がこだっていた、コンコーネ館の改修について、
キャラハンは 館や庭園の図面を 王都に持ってこさせた。
クランハウスを借りて、そこで 建築などに詳しいドワーフのボロンとデュラン、部屋の内装などに詳しいミューズと一緒に検討した。
「えっ キャラハンさん 図面が読めるんですか?」清明
「一応 前回お伺いした時に、館の中もその周辺の主だったところも しっかりと案内していただきました。
それに 私、10年以上もタウンハウスの管理人をやっていたんですよ。
館や庭園の管理に関することは 一通り勉強しましたから」キャラハン
「そういうことは 早く言って下さい!」清明
「清明さんが ご自分ですべて取り仕切っておられるのなら
私が 横から余計なことを言わなくてもよいかと思ってひかえていたんです。」
「実際には、どうしていいかわからないから 早めに取り掛かりたかっただけなんだよね」
ミューズが笑いながら言った。
「その旨 ミューズさんからお聞きしまして、私も 積極的にかかわろうと思ったんです。
幸いにも ドラゴンクランには その道のエキスパートでいらっしゃるお三方もいらっしゃったので」キャラハン
「デュランは 成分分析とかが専門じゃなかったんですか?」清明
「ドワーフにとって、測定と言えば 金属の成分分析も測量もどっちも含むんだよ」
ドラゴンクラン代表であるドワーフのボロンが解説した。
ガーンと頭の上に落ちてきた石に当たったかのような顔をする声明
「それじゃあ 私が バカみたいじゃないですか」よろめく清明
「私も いっぱいみっともないところを 清明さんに見せてしまったのだから
おあいこにしましょうよ。
それに いつも 私が清明さんに甘やかされてばかりだったから
今回は ちょっとだけ 私にも頑張らせてください!」キャラハン
彼女のことばで 気分が上向いた清明は、久しぶりに穏やかな気持ちになった。
というわけで キャラハンの服装とか 結婚式の衣装などなども、
キャラハンの差配に任せることにした清明だった。
(はぁー 友の助けがなければ この結婚どうなっていたか・・)
清明は 心の底から クラン仲間であり 友でもある面々に感謝するとともに
彼らと出会えた幸運をかみしめた。。
第Ⅵ章「いよいよ結婚!」(全5話)は、今夜20時に発表です。
おめでたムード満載、すべてはこの日のためにといった感じのHappy あまあまムードをめざして書きましたので、どうか 読みに来てくださいね!
よろしくお願いいたします。m(__)m




