クランと結婚生活のかかわりについて
コンコーネ領で、「婚約に向けた交際=話し合い」をスタートさせた清明とキャラハン。
互いの身内問題から派生する将来の問題を最小限に抑えるための、法的手段・契約条項などについては、王都に戻ってから 専門家の助言も入れて 再度煮詰めることにした。
「と言っても 私は そんな 相談相手がいないわ」キャラハン
「私は クラン仲間であるスカイとミューズに相談してみようと思っています」清明
「うっ 国王様・・」キャラハン
「あくまでも 私の友であるスカイに相談です。
そのへん ちゃんとけじめをつけてますよ、私たち二人は」清明
「そうなんですか?」
「そうです」
「その言葉を信じるより仕方がないですね」キャラハン
「お願いします」清明
「しかし ミューズさんというのは・・? 花ことばの人?」キャラハン
「そうです。
ちょっと風変わりですけど 聡明な方ですよ。」清明
「この世界で ただ一人の 伝説のエルフ族の方ですね?」キャラハン
「ノーコメント
ていうか 見た目普通の人間と変わりませんよ。
私より年上らしいけど 全然そうは見えない、年齢不詳ってことを除けば、
あ、これは内緒です。口外しないでください」清明
「わかりました」キャラハン
心の中で清明はぼやいた。
(まったく いくらクラン登録書に虚偽記載はできないからって、
公式には存在しないことになっている エルフって種族名を記載しないでほしい。
もっとも 私たちが死んだ後も生き残るゴンとミューズのことを考えると、
ドラゴンのゴンの存在を秘するためには、
ミューズが 長寿な種族として知られているエルフであると、
公式記録に残す必要があったと聞いているけど・・
婚活相手に クラン登録書を事前調査されるのは、想定外だったよ。
とにかく 結婚後 仲間の許可が出るまで
ゴンの存在は隠し通さなければいけないものなぁ)
「いずれにしても 契約書を作るときには 専門家の手を借りますから
信頼のできる法律家のリストを作成してお渡ししましょうか?
キャラハンさんが望まれるなら、キャラハンさんの立場にたって考える方を紹介します。」清明
「そうですね。
できれば リストのほうをいただけるとありがたいです」キャラハン
◇ ◇
結婚契約書に盛り込む、『二人が別れに至った場合も視野にいれた「身内の問題」』について の検討をいったん保留にしたら、
次なる課題は キャラハンの仕事の問題だ。
一応、「領主婦人としてコンコーネ領に就任する」というのが、清明から出した、交際相手募集条件であったわけだけど、
現在 就業中のキャラハンが いつ 仕事を辞めるのか、きっちりと決める必要があった。
法的には 解雇も辞職も1か月前の通告でよいのだが・・
後任を決める関係上、早めに報告をするのが望ましい、と一般には思われている
(もっぱら 雇用者都合で><
逆に 雇用者は 何かといえば「明日から来なくていいよ」という権利が自分にはあると 誤った考えを持っているから 問題なのだが。
こういうのを ハラスメント体質の職場というのだ)
真面目な勤労者ほど、「仕事の引継ぎをきっちりとしなくては」なんて
退職するときまで 職場大事でものごとを考えるのだけど・・。
◇
キャラハンとしたら
領主婦人の仕事って 一体 具体的になんなの?
執務にかかわることなら そこはそれ 業務内容と報酬と責任の所在と範囲を明確にしておいてほしい
私に 家事労働は期待しないでほしい
逆に 無為に 家の中に閉じ込められるのも嫌だわ
である。
一方 清明としたら・・・
チッチだったら、ひたすら 妻として 私を支えて 家庭を築いてくれるだろうし、
そんな彼女を 私は大切にする
(要は 願望のみで すべてお任せ。 実は何も考えていない)
と思っていたのだけど・・
ムービーさんだったら、私や執事の言ったことを忠実に果たしてくれるだろうと
勝手に期待していたのだが
キャラハンさんは・・ 有能なだけに 逆に「仕事」として厳しく突き詰めてくるなぁ・・ 困ったぁ
であった。
なにしろ、キャラハン曰く
「そもそも 領主の責任は、領主本人が負うものであって 領主婦人は関係ないですよね。
にもかかわらず、領の公務を妻に分担させるなら、
そこには きちんと労働契約が結ばれるべきではありませんか?」 なのだから。
「契約 契約 そればっかりですね」清明
「だって 清明さんの話が あまりにも おおざっぱすぎて
その場その場の思い付きっぽいのですもの。
あなたは クランの仕事で 突然 不定期に長期間留守にすることもある。
その時 私が あなたの代わりの仕事をする。
その時 こっちから あなたに連絡はとれない
そんな話 執事でも秘書でも領官でも 受け入れませんよ。
それこそ 責任放棄で罷免されるか 家・財産の乗っ取りに会うかの話ですよ
しかも クランの話は守秘義務があって、私には話せないとおっしゃる。
そこまで言うなら、あなたが不在でも
あるいはあなたがクランの活動中に亡くなっても
領の運営も 私や将来生まれるであろう私たち子供たちの暮らしも 維持できるように
しっかりと法律で、立場と財産を守る手立てを講じておく必要があります!」
キャラハンの言葉に 反論できなかった清明であった。
「あー その点に関しては スカイ国王とクラン仲間と 相談のうえで回答いたします。
ということで よろしいでしょうか?」清明
「もしかして これも 王都に帰ってからの検討事項に持ち越しですか?」キャラハン
「はい すみません」清明
(うーん 面倒だけど 今 話し合っておいた方がいいんだろうなぁ、こういうことは。
でないと 私の父のように 再び 爵位が王家預かりになりかねない、不慮の出来事があったときには。
そういう意味では キャラハンさんに指摘してもらえてよかったけど・・
あーあ、こういう話し合いが面倒だから、スカイは 結婚しないのかなぁ・・
私としては、新婚時代は 夫婦水入らずの生活で、
結婚生活が落ち着いたら 独身の頃のように 適当にスカイやクランとの付き合いをやっていこうと思っていたのに・・
軽い気持ちで、念のために 将来 クランにかかわる仕事で不在にすることがあるかもって言ってしまったのが 運の尽き・・(;´д`)トホホ)
清明の心中のボヤキであった。




