それぞれの夜
コンラート領について3日目の夜、3人の女性たちは・・・
◇
チッチは のんびりと バスタイムを楽しんでいた。
ふんわりとした香りに包まれながら湯に浸り思うこと・・
ほんとに、ここは 香りのよいバス用品が充実しているわ。
バスボム・シャワージェル・シャンプー・コンディショナーにスクラブまで、
香りも ローズ・レモン・バニラ・ラベンダーと4種類もあって ほんとすごい。
それがみな、コンコーネ産だというのだから。
だから ここに嫁いでも、あまり不自由なく暮らせるかもしれない。
だけど 食事の味付けがどうも口に合わないわ。
しかも この3日間に出された宿題の山。
領主になったら、領地の経済を切り回すために 官僚並みに働かされそう。
もしかしたら 領主婦人の社交も、商談会になりかねないわ。
私は・・もっと同世代のお友達とお茶をしたり ダンスをしたり・・
華やかな生活がしたいな。
もちろん 結婚したら 堅実な奥様になる自信はあるけれど・・
商売のお手伝いはしたくない。
そもそも清明さんは 踊れるのかしら?
たとえ踊れても 月に1・2回の舞踏会や茶会につきあってくださるかしら??
というか コンラート領に社交界はあって?
私のために 王都での社交界へ エスコートしてくれるかしら?
奥さんを大切にしそうな気はするけれど
夫婦で社交を楽しむイメージが湧かないわ
やっぱり 歳の差なのかしら・・
◇
ムービーは アンケート用紙の記入を終えて溜息をついた。
料理長から差し入れられた焼き菓子をつまみとレモンティーを飲みながら考えた。
なんだか 私 すごく場違いな気がする。
王都でデートしていた時の清明さんは 優しく穏やかで控えめで、
私が支えてあげなくては! って感じだったのに。
ここでは going my way って感じで ついていくのがつらいわ。
あの人と結婚したら 私 ただの秘書、それもお茶を入れたり身の回りのお世話をするだけの秘書になりそう。
キャラハンさんなら 清明さんのスケジュール管理から各種手配までこなす バリバリの秘書になりそうだけど。
私は 家庭で、家族の居心地がよくなるように気を配る そういう主婦がいいわ。
夫を送り出したあとは 家政を切り盛りして
メイドやナニーを従えて 育児も家の付き合いもきちんと管理して
でも 私の活躍する場はおうち、そんな生活がいい。
でも 清明さんと結婚したら、社長室付きの秘書役まで兼任させられそうでこわいなぁ・・
だけど 清明さんなら ちゃんと話せば 私にとって無理のない結婚生活を築けるかもしれない。
だけど そのためには 食卓から話し合わなければ・・
幸いにも 料理長さんは 常識的な方のようだから、
館の中の使用人たちをしっかりと味方につけないと 苦労しそう。
◇
キャラハンは、本日の予定をすべて片付けて 満ち足りた気持ちでベッドに入った。
思い切って招待に応じてよかった!
コンラート領も清明さん自身についても もっともっと知りたい!
清明さんの気持ちは チッチさんに向いているようだけど
チッチさんが清明さんの招待に応じたのは、恋愛感情からというよりも
王族としての社会勉強のためって感じもするなぁ。
20歳 希望に燃える年ごろ いいなぁ
たくさんの未来を夢みる年ごろなんだろうなぁ。
私が婚約者候補として選ばれなくても、コンラート領の開発担当者として雇ってもらえないかなぁ。
この後も しっかりと見学をして、配偶者はダメでも、官吏として売り込めるような案を練り上げようかしら・・
ただ ムービーさんには気を付けなくては。
ちくちくと彼女の言葉からは、妬みっぽいとげを感じるわ。
彼女には 私にはない 女らしい包容力があるのに。
きっと 彼女だけが知る清明さんのくつろいだ姿があるんだろうなぁ
そのことに彼女自身が気付いて もっと自信を持てば 清明さんの良い奥さんになれるだろうに。もったいない。




