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清明の結婚  作者: 木苺
Ⅲ コンコーネ領ご招待旅行
23/42

鯉こく

コンコーネ領2日目のディナーは (こい)づくしであった。


〇酢みそで味わう「鯉の洗い」(薄くそぎ切りにした身を氷水でしめたもの)


〇鯉の焼きおにぎりと鯉こく(味噌汁バージョン)

  こちらは 鯉の身を焼きほぐし、山椒・いりごまといっしょに焼きおにぎりにしたもの

  &

 輪切りにした鯉を大根・人参と一緒に味噌でじっくりと煮込んだもの。


 鯉の塩焼きもうまいのだが、骨切が大変なのと、箸を使慣れない人には食べにくいかもしれないので、最初から焼きほぐしておにぎりに混ぜ込んだのだ。



〇箸休めは 鯉の雪花菜和きらずあ

  雪花菜和きらずとは、炒ったおからを砂糖と酢で味付けして冷ましたもの。

  そこに千切りにした鯉のアライに醤油・みりん・酒で下味をつけ、長ネギ・人参・キュウリ・大葉・根ショウガなどの千切りを混ぜ、ごまをふりかける。


  香味野菜の香りと彩も楽しめ、

  調味料の量を加減することにより、淡泊にも さっぱりにも ふんわりとした味にもなります。


  今回は 味わいがふんわり(白ごまかけ)と、さっぱり(黒ゴマかけ))の2種盛りとしました。



〇そして 〆が鯉尽くしのとりとり

  大皿に盛られた下記の4品が テーブル中央に置かれ、それを取り分けて食べる形式


  そのために わざわざ テーブル中央に回転卓がおかれ、そこに四皿が載せられた。


・鯉南蛮

  丸ごと揚げて甘酸っぱい醤油だれを回しかけて火を通し、

  身をふんわりジューシーにしあげたもの。


・鯉の竜田揚げ

  レモン・甘酢・塩コショウなどの味付けはお好みで


・鯉の甘露煮

  甘い煮汁で 汁気がなくなるまで煮つけたもの


・鯉とアボガドのサラダ

  ①アボガドスライスのレモン果汁和え


  ②玉ねぎ・人参などの香味野菜の上に鯉を並べ、白ワインをかけて蒸して冷ましたものに、トマトペーストをレモン果汁とペシャメルソースで緩めたドレッシングをかける。


  ①の上に②を盛り付ける


◇ ◇


真っ白なクロスのかかった大きな円形テーブル。

今夜は 等間隔に四つのいすが置かれていた。


テーブルの上には ナイフ・フォークなどと一緒に、箸もおかれていた。


「コンコーネ産の鯉を堪能してくださいね

 餌と水質にこだわった養殖ものなので、くせの無い鯉のおいしさを味わっていただけたらと思います。」清明


料理長が 運ばれてくる料理の解説をしてくれる。


「鯉も初めてですが、酢味噌というソースも初めてです」ムービー


「鯉こくで使われている味噌と酢味噌とでは、使われている味噌の種類が違うのですか?」キャラハン


「鯉こくには、コクのある赤みそや八丁味噌を、酢みそには、素材の味わいと色を引き立てる白みそを使っております」料理長



「こちらのおにぎりは 手で直接もってお召し上がりください。

 あるいは スプーンですくいながら召し上がることもできます」

という料理長の説明のあと


「どれ 私が見本をお見せましょうか」と

おにぎりを手でつかんで食べる清明をびっくりした顔で見るチッチ



「清明さんは お箸の使い方が上手ですね」

キャラハンは 見よう見まねで箸を使おうとしてもうまくいかないので、左手で持ったスプーンを受け皿のように使った。


「最初は大変でしたが、慣れると、箸のほうが魚料理は、食べやすいと思います」清明



「コンコーネ領って ずいぶんと異国風なのですね、 味付けも 食器も」ムービー


(いえ 異国風なのはご領主様のご趣味なのです)

おもてには出さず 心の中でつぶやく料理長


「私は 長い間 モノがよく見えませんでしたから、

 テーブルの上に並んだスプーンやフォークなどを使い分けることができなかったのです。

 その点 箸ならば 料理の載った皿の位置さへ覚えておけば食べることができましたから」清明


「ごめんさない。

 今は すっかりとよくなっておられるようなので、気が付かなくて」ムービーが頭を下げた。


「大丈夫です。どうぞお気になさらないでください」

清明は 優しくムービーにこたえた。



「鯉の雪花菜和きらずあえは、このように器を左手でもって

 スプーンですくうと食べやすいですよ」清明が見本を見せた。


(どれもこれも 食べにくいこと

 こうも初めての味ばかりで、

 口に運ぶのもむつかしい形状のものばかりだと疲れるなあ)

ムービーは心の中で嘆いた。


一方 キャラハンは 一品一品の盛り付けを目で楽しみ

一口一口の味わいを確かめるように食事を楽しんだ。



大皿森の4品は、女性達 一人一人に給仕が付いて、料理を取り分けた。


女性たちは、料理長のお勧めで、南蛮や甘露煮・サラダを

薄く切ったフランスパンやクラッカーの上にのせて、カナッペのように食べたり、

極薄の食パンで巻いて食べるのが気に入ったようだ。



清明は 当たり前のように茶わんによそった白飯を食べていた。


それを見て キャラハンもごはんに挑戦した。


「もしかして この白い粒は おにぎりに使われていたものと同じものかしら?」キャラハン


「そうです。

 炊き立てをこのように頂くのもおいしいですが、

 暖かいうちに 手に塩をつけておにぎりにしても

 冷えたおにぎりに 味噌や醤油だれをつけて焼いてもおいしいですよ」

清明はニコニコとして言った。



「清明さんは いつも こういうものを食べているのですか?」チッチ


「いつもというほどではありませんが、白飯はよく食べます。」清明


「鯉ではなく 肉類を味噌や醤油で味をつけた料理も

 よく召し上がっていらっしゃいます。」料理長が補足した。


「味噌や醤油がお好きなんですね」ムービー


「ええ」清明

(最近 生産が軌道に乗ってきて 毎日食べることができるほどの量が確保できるようになったというと またややこしいことになるから今は黙っておこう)


「カリッとした揚げ物を 好みの調味料で変化をつけながら食べるのも 楽しいですわね」チッチ



〇デザートに、紅茶と 生クリームを添えたエンゼルフードケーキとレモンシャーベットが出てきたときは ムービーはほっとした顔を見せ、チッチも笑顔を浮かべた。


料理長は、(抹茶アイスなどという変わった食材を使ったものを出さず、ありきたりのデザートにしてよかった)と心から思った。


実は 鯉尽くしの和食にこだわる清明に、いくら何でもやりすぎだと言って、〆の4品を大皿盛りにして、各自が味や量の調節ができるように、また ロールサンドやカナッペ風の食べ方ができるように提案したのも料理長であった。

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