出発!
ここで 少し話は遡る。
コンコーネ領ご招待旅行へ参加するために、キャラハンは集合場所である、王宮の御用門前に向かった。
王宮の敷地は広いので、そこを取り囲む塀には いくつも門が作られていた。
そのうちの一つ、御用門の近くには、国王直属の官吏の詰め所があった。
その御用門の脇に清明が待っていた。
「はじめまして。キャラハンです。
この度は ご招待いただきましてありがとうございます」
キャラハンは自分から声をかけた。
「初めまして、やっとお会いできましたね。
こうして 来ていただけてとてもうれしいです。」
清明は 笑顔で手を差し出し 握手を求めた。
キャラハンは 異性から握手を求められるのが苦手であったが、
今後の友好を願って、そっと手を伸ばし 軽く清明の手を握った。
(確かアプローチカードには 苦手なあいさつの項目にハグ・キス・握手にチェックを入れておいたはずなんだけどなぁ)と思いながら。
そこに 女性の声がかかった。
「清明さん こんにちわ」
清明は キャラハンの目を見て握手をしたあと、その女性へと向き直った。
「ムービーさん 来てくださってありがとうございます。
こちらは 今回ご一緒にお招きしたキャラハンさんです。
もうお一方も中で待っておられますので、この続きは中で話しましょう、」
清明は ムービーに軽くお辞儀したあと 御用門に向かった。
キャラハンとムービーは互いに顔を見合わせたあと、
初めましてのあいさつをしながら 清明の後についていった。
◇
清明のあとについて入った部屋の中では、スカイ国王と一人の若い女性が話をしていた。
キャラハンとムービーが 国王に挨拶するのを制するようにスカイは片手をあげて言った。
「悪いね すぐに転移魔法をかけるから その輪の中に入って」
スカイは 若い女性を 床に描かれた円の中に誘導し、
清明は キャラハンとムービーの手をとって3人一緒に輪の中に入っていった。
「ちゃんと 入った?じゃ 動かないで」
スカイの声がしたかと思うと 瞬間的に暗闇に包まれ
気が付くと別の部屋の中に居た。
◇
気が付くと 4人そろって別室にいた。
傍らに目をやると、ムービーが真っ青な顔をしてふらついていたので、
慌てて 脇の下に腕を差し込んで支えた。
「すみません。怖かった・・」
どうやら 腰が抜けたようだ。
キャラハンはムービーの背に両腕を回して言った。
「私に捕まってください。
体を支えますから このままゆっくりしゃがみましょう」
それまで 若い女性を気遣っていた清明が 振り向き あわてて寄って来た。
「申し訳ありません。気づくのが遅くなって。
ムービーさん 私があなたを抱えて運ぶのを許していただけますか」
ムービーは弱弱しくうなづいた。
清明は キャラハンにうなづき、そっとキャラハンと体の位置を入れ替え
ムービーをお姫様抱っこした。
◇
ムービーを抱えて清明はドアに向かう。
キャラハンは いち早く先回りして ドアを開けた。
清明は 軽く目礼しながら「ありがとうございます」と、扉を抑えるキャラハンにささやきながら 廊下を歩いていく。
その後ろを 若い女性と二人並んでキャラハンはついていった。