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清明の結婚  作者: 木苺
Ⅱ キャラハン
15/42

コンコン会への参加

26歳になって借金がなくなり、自由に転職できるようになった時、

キャラハンは 迷わず宮廷官吏への登用試験を受け、合格した。



それから5年、

官吏の一人として、仕事の上では 順調に業績を上げながらも、「推しも曳きも無い」己の腕1本の実力勝負であるがゆえにガラスの天井にぶちあたったキャラハン。



なにも一匹オオカミを気取っていたのではなくて、先に述べた生い立ち由来の不器用さゆえに、

せっかく築いたつながりを、これぞ!という時にうまく活用できなかったのである


学卒新採用者と比べ 転職者への査定は厳しい。

 ゆとりのある職場では 新卒者に対しては3年間は育成期間というまなざしを向けてくれる。


が、転職者に対しては、即戦力 毎年の人事考課で どんどんふるい落とすと減点方式が適応される。


その代わり 見込みがあると思えば自分の配下に着けようと 次々と昇進を前提とした異動のお誘いもかかる。

 そのお誘いには フェイクもあれば 裏ありも 裏なしもある。



ある時、その微妙なサインに気付いても 微妙な駆け引きにうまく載り(そこ)ねてしまったキャラハン。

 もたもたしているうちに 横から割り込まれ押しのけられてしまって・・・


目端(めはし)()(やつ)が、キャラハンの要領の悪さを見込んで、彼女のそばをうろちょろして目を光らせ、うまい話をかっさらい 巧みに彼女を蹴落としたのだ、><


それから お誘いがピタっと止まってしまった。



異性関係もまた 何が何だかわからないうちに、周囲の男女が入り乱れて寿(ことぶき)が飛び()い、

気がつくと ()い男は皆既婚者に。



「あーあ」とむなしさがヒューヒューと体の中を吹き抜け始めていた頃に、

コンコン会のお知らせが届いた。


”主催が国王。 官僚組織の元締めである王宮が全面協力


 参加資格が婚活を目的とする貴族・元貴族・宮廷官吏の独身者限定


 商談禁止


 各種アドバイスもあり、企画イベントも豊富


 期間は1年限定


 プライバシーの保護も徹底”


なんだかいいわね、これ。


参加するだけでも、私自身の成長につながりそう♬


さらに 日頃会うことのない人とも出会うチャンス!


この機会、利用しなくてなんとする!


キャラハンは久しぶりに奮い立ったった。



いきなり 1対1のお付き合いを前提とした懇親会への参加はしんどいなと思ったので

最初は ゲーム大会や趣味をテーマとしたイベントに出席した。


しかし コンコン会発足後3か月目の懇親会で、清明が自己アピールする回には是非参加したいと思い申し込んだ。


とはいえ、申し込み多数の場合は抽選と予告されていたので、

参加許可書が来た時は とてもうれしかった。


(実は スカイ配下の影たちが、清明の自己アピール回に参加申し込みをした女性たちの日頃の行状・家族関係などを徹底して調べ上げたうえで、参加許可証を発行していたのだ)


参加許可書が届いたら、今度は 清明に向けたキャラハンからのアプローチカードの作成だ!



キャラハンは 「単なる釣書以上のものを送るぞ!」と心を込めて 自己アピール書を完成させた。


というのも、清明がコンコーネ領主に就任したときに、キャラハンは彼の生い立ちや、ドラゴン・クランでの彼の業績など、公開されている資料はすべて読み込み、その後の彼の活躍ぶりにも注目していたからだ。


身体的ハンディキャップを乗り越え、家庭的な不幸をものともせずに、

用心棒として独り立ちした清明の生きざま。


失明という一大事に見舞われても くじけることなく旅を続けて、

結果として大魔法使いスカイのもとにたどり着いた「幸運を引き寄せる根性」


そのいずれもが 清明への敬意をかきたてた。


そして 期待にたがわぬ領主としての業績。

 ああいう人と一緒に働けたら どんな世界が広がるのだろうか?

 それとも やっぱり 今とはそんなにかわらないのかしら?

   好奇心がうずいた。


なので、清明からデートのお誘いが来たときは 飛び上がるほどうれしかった。


なのに、デートの候補日としてあげられている日を見て がっかりした。


 (清明さんは 私からのアプローチカードを 全く読んでいないのではないかしら。)


意気消沈したといってもよい。


しかも、その頃から キャラハンの仕事が急に立て込んできた。

 おかげで コンコン会の通常のイベントや毎月の懇親会に参加することすらできなくなってしまった。



「コンコン会に出席する暇があるなら これやってよ」と山のごとく雑用を押し付けられた。


「コンコン会のある日は 残業なしのはずでしょ。

 その旨 全部署に回覧が回っていたはず」


キャラハンは雑用を押し付けられても残業は断固として拒否


「だったら 会のない日に仕事をしろよ」


既婚者どもからの嫌がらせか?とも思ったが・・

いち早くデートの約束を取り付けた独身女性連中が年休をとりまくったせいで、そのしわ寄せがキャラハンのもとにきたらしい。


(またもや出遅れてしまった><


 でも 清明さんとの縁は大切にしたい!)



キャラハンが何とか仕事を切り上げて 定刻で帰宅して清明への連絡を取ろうと思っても

余裕をもってコンコン会の会合の日に職場を出ようとしても


終業間際(まぎわ)に 「仕事に関する緊急の呼び出し」(出かけてみれば 実にくっだらないただの嫌がらせめいた雑談)を食らうことがしょっちゅうとなり、


結局 清明とのデートもかなわぬままに、領地へのご招待となった。


◇ ◇


実のところ、キャラハンをものにしたいと思いつつも、これまでは高値の花と半ばあきらめていた男たちが


キャラハンが、「コンコン会」に興味があると知って、我先にちょっかいをかけようと画策し、うまくひっかけられなかった腹いせに、


今度はとことん妨害工作してやろうと、

彼女のプライベート時間の食いつぶしに 一丸となって走っていたのであった。


ちなみにこの男たちは、素行の悪さからコンコン会への参加を認められなった独身者や

浮気好きの既婚者、役所の下働きに過ぎずコンコン会への参加資格を持たぬ者たちであった。



キャラハンとて うすうす周囲のそういう雰囲気を感じ取っていたので


清明から領地見学会の招待を受けたときには、それに参加する為に仕事の調整を巧みに行ないつつ、年休届けは「家庭の事情により」と出発直前に提出して、妨害工作が入るのを防いだ。


(婚活だって 家庭の事情よ、嘘は言ってない。

 それを咎められたら、私がコンコン会への参加することへの妨害活動がどれほど行われていたかの記録を提出して、それらが組織的活動であるのでは?という疑念を晴らすために徹底調査を行なえと、開き直ってやる!


 管理職は「仕事も結婚もどっちも大事!」ってよく言うけど、

それを 上司が部下に仕事を押し付けて帰る口実にしていたり、ただの建前で終わらせていたら婚姻率が下がって そのあとに来るのは少子化と乱交の世の中になるだろうって稟議書をあげてもいいわねw)


それくらい腹をくくって キャラハンはコンコーネ領へ向かったのである。


そんな立場に置かれていたキャラハンであったから、

領主婦人の仕事云々が結婚条件であったとしても、職場に未練はない!と思ったのであった。

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