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清明の結婚  作者: 木苺
Ⅰ 清明の場合
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王国の貴族・清明の生い立ち

コンコーネ公爵清明、二つ名を心眼使いという。


王国に現存する公爵家は 今やコンコーネ家だけだ。


公爵と言うのは、もともと王族の分家の末だ。


物語の世界では、「大公」と呼ばれる存在もあるが、これは たいてい王統が移動したのち、元の本家筋の嫡男が大公位につくことが多い。


一方、安定を重んじるこの王国では、大公家も公爵家も何か不祥事があれば どんどん取り潰してきた。


どころか、「侯爵」そんな中途半端なものはいらないっしょ、とばかりに侯爵家ゼロである。


そして「男爵」もなし。

 金持ちが爵位を買って成り上がろうなんて考える不健全さを防止するために。


かろうじて、子だくさんの伯爵家の中で優秀な次男以下の者が貴族籍に残れるように、一代限りの子爵籍が時たま王家から貸し出されるくらいだ。


では、王国における貴族籍が 何を意味するか?

 ①公爵&伯爵:領主として 割り当てられた地域の行政官のトップとなる

    領地経営がうまくいかないと すぐにとりつぶし

    または 貴族籍が一時的に王家預かりになる


 ②子爵:領主予備

   優秀な貴族家には 優秀な子供が多数育つことがある

   継ぐべき爵位が一つしかないと、兄弟姉妹間で争いが起きる。

   これは よろしくない。


   というわけで、優秀な次世代に子爵位を与えて、中央で官僚として働かせながら、

   王国のどこかで新領主が必要になった時に そこの伯爵とする。


  これは なにも伯爵家が取り潰しにあうだけではなく、


  領主本人が引退したいけど、次世代が育っていないとか

  領主当人は優秀だけど、子供が平凡すぎて領主の器じゃないから

  次世代には年金をつけて独立させ、自分の引退時には爵位を王家に返上したい

  と申し出ることがよくあるからである。

  (この場合 次世代への年金は これまでの現当主の働きぶりを勘案して国王が決定する)



というわけで 王国には貴族家が少ない。


しかも 領主の後を継げるのは、優秀な者のみ。


というわけで、領主の結婚相手も、知性と教養と人柄重視で選ばれる。


 ただ、領主としての暮らし・政務は、一般人が思い及ばぬほど複雑・煩雑で、

幼いころから 知識の習得のみならず技量と教養を磨かねばならないから、

それに釣り合う実力者を配偶者にとなると 結果的に貴族出身者を選ぶことが多くなる。


 恋にのぼせてもやがては冷める。

 これはもしかしたら フェロモン効果の限界であるかもしれない。


 ぞれを補うかのように手練手管を講じる相手などに捕まったら、領主としてのまっとうな仕事ぶりに差し支える。


 というわけで、婚姻は 両性・両者の信頼と敬意に基づいた生涯にわたる長期契約であるというのが、 王国の貴族、中でも領主たらんとする者の常識であった。


 さらに人柄がよいだけでは、人に騙されたり 感情に流され愚かな決断を下しかねない。

 そのような者を身内にかかえるは、己で己の腹に大穴を開け心の臓を傷つけるのと同じ。


 さらに 知能は遺伝子により決定され、それが環境と本人の努力により知性として発現するというのはこの世界の常識であったので、愛した人が凡庸な人物であった場合

領主が「愛のためにその責を他者に譲って一般人となる」のも、この世界では当たり前のことであった。


 さもないと・・お家騒動が発生して 結局おとりつぶしや爵位没収という事態になり、自主返還しておけばもらえるはずだった年金の権利が 自分にも配偶者にも子供たちにも与えられない(懲罰的に取り上げられる)ことになるのである。



領主の配偶者に選ばれることの多い「貴族出身者」の中には、貴族籍を抜けて平民になった者達とその子らも含まれている。


「腐っても鯛」ということわざには、暗に、貴族籍を抜けても、しっかりと教育を受け知性を磨き教養を身に着けた人物は、身分の変化とは関係なく優秀であることに変わりなく、本人の心がけ次第では、わが子に良き教育を施し、その子は同じ環境で育った子供よりも優秀に育つ可能性がある、という意味をも持つ。

 要は 人間の能力というのは、「遺伝子・運も含めた環境・教育・本人の努力」の四つの要素の組み合わせにより発現するのだから。

 


 そもそも 貴族というのは、朝から晩まで、日暮れてからも仕事をしなければならないことが多い。


 平民は お日様の照っている間だけ働けばそれでよい。


 日の出とともに活動開始といっても、賃仕事は だいたい8時~16時までだ。

  日の入りの早い冬場は15時には仕事が終わる。


 金銭的に余裕のある者は 暗くなってからも明かりをともして 生活を楽しむこともできるが、

我が家だけ明かりをつけていても悪目立ちして嫌だなぁと、暗くなるとサッサと寝てしまう者がほとんだ。


 しかし 領主ともなると そうはいっておれない。

明るいうちは領民たちとともに働き、夕食後は 明かりをともして書類仕事なんてざらだ。


 あと 研究熱心・勉強熱心な者達も 明かりをともして勉強をする。研究する。


 官僚もまた、9時~5時で働いて、それから帰宅して食事や身の回りのことをしていると・・灯をともす生活となってしまう。


 けっきょく 平民というのは、汗水流して明るい間は働いても 1日の半分近くは寝て過ごせる気楽な身分。己と家族の食い扶持さへ稼げばそれでよい責任の軽さ。


 それに比べて 貴族と官僚(元貴族も多い)は あくせくあくせく昼夜なく働いたり勉強したりが必須。


 なので 貴族籍にあこがれる平民はほとんどいなかった。


言い換えるならば、王国では 各々の役目による立場の違いはあっても、格差がなかったのである。

 その分 王族や領主・官僚には、責任の重さを自覚し お役目大事でせっせと働くまじめ人間をそろえていたのであった。


◇ ◇


このような王国の公爵家に生まれた清明は、弱視であった。

それゆえ 両親は この子が成人したら平民として気楽にくらせるようにと、自分達で清明の為の年金を設定し、別邸で養育することに決めた。


もちろん 信頼できる者達を雇い、貴族の子供として必要な教養を身に着けられるようにと えりすぐりの家庭教師もつけた。


さらに 視力が弱くて 一人で自由に外を出歩けない清明の体を鍛えるために、優秀な剣術の師匠もつけた。

 師匠は 居合切りの名手で、目隠ししてでも「据えもの切り」やら、飛んできた棒切れをスパッと切り落とす人であったから、視力の弱い息子に寄り添える部分も多いのではないかと考えての人選であった。


とまあ 愛情深く賢明な両親ではあったのだが、子育てと言うのは、親がいくらがんばっても 周囲の回り合わせがよくないと、子供が変な影響を受けてよじれて育つことがある。

 こればっかりは どうしようもない運不運かも?の世界である。


もちろん しっかりと家庭運営をして どの子も立派に育つお家も珍しくないのだけど、そううまくいかない家庭もあるのが 世の現実。

 特に 優秀な長男が不慮の事故でなくなったりすると、跡継ぎ問題で一家崩壊というのは アルアル話である。



そして コンコーネ公爵家は 家庭運が悪い方にころがってしまい、

とうとう公爵位は一時王家あずかりとなってしまった。


その時のどさくさに、あれやこれやの出来事が重なって、

清明は 少年時代から一人で放浪生活をおくることになってしまったのだが

ドワーフのボロンや大魔法使いのスカイと出会い、目も治してもらい、

ドラゴン・クランのメンバーとなって 心眼使いの技を使いつつ、一般常識やらなんやらかんやらをしっかりと学び、


今ではコンコーネ領の敏腕領主&公爵にしてスカイ国王の友人と、王国内でも名の知れた存在となっていた。


読みに来てくださってありがとうございます。


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よろしくお願いいたします。☆彡

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