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余談ー1 宇喜多直家の虚実

 感想を読んだことから、余談が2つになりました。

 宇喜多氏及びその周辺ですが、同時代史料の研究が進んだ結果、かつては江戸時代の史料に基づいて書かれた説が通説として流布していましたが、昨今ではそういった旧通説については否定されることが増えているようです。


 例えば、宇喜多能家が同僚の島村盛実に居城の砥石城を攻められて1534年に自害したというのが旧通説でしたが、昨今では同年に赤松晴政に砥石城を攻められて、宇喜多能家が自害したとの説が強くなっているようです。

(そもそも史実上、島村盛実という人物が存在しないそうです)

 更に言えば、宇喜多直家の父の興家にしても1536年か、1540年に自害したと伝わっていますが、これまた実は島村家の若衆との争論の果てに殺され、若衆も喧嘩両成敗で殺された。

 更にその裁きには島村盛貫が関わった、というのが史実のようです。

 

 そういった史実がない交ぜになった結果、宇喜多能家が島村盛実に攻められて自害し、宇喜多能家の孫の直家がその仇を討って、島村盛実を殺したとの話が出来上がったとのことです。

(更なる余談をすれば、実の旧字体は實であり、そうしたことから島村盛貫が島村盛実に誤って伝わる事態が起きたようです)


 実際、旧通説の通りならば、砥石城にいる宇喜多能家を同僚の島村盛実が攻めたのを、主君の浦上政宗が看過しているというおかしなことになります。

 それに対しては、いわゆる上意討ちで、浦上政宗が島村盛実に命じて宇喜多能家を攻撃させたという主張がありますが、何故に城攻めという大仰なことをする必要があるのでしょうか。

 それに宇喜多能家、興家の死後、宇喜多能家の弟の浮田国定は、浦上政宗に引き続き仕えています。


 これに対しても、浮田国定は兄の宇喜多能家と不仲であり、能家を政宗に讒言し、更に島村盛実と手を組んで、砥石城を攻めおとしたという反論がありますが。

 そういった同時代史料は無く、それこそ江戸時代の軍記モノが出典とのことで、これまた信頼できない話になります。

(そもそも島村盛実という架空人物が出てくる時点で、おかしな話になります)


 他にも中山信正の娘を宇喜多直家は娶っていたが、主君の浦上宗景の命によって義父の信正を直家は謀殺したと江戸時代の二次資料ではなっていますが。

 改名した可能性は否定できませんが、この当時の中山家の当主は勝政という名前とのことで、これまた史実では存在しない人物の娘を、直家は娶っていることになります。


 そして、中山勝政と島村盛貫ですが、尼子氏の備前、播磨への侵攻への対処等から対立した浦上政宗と浦上宗景兄弟の対立に際して、浦上政宗方として動いていたようです。

 その一方で、宇喜多直家は浦上宗景に仕えています。

 尚、浦上政宗と宗景兄弟の対立が始まったのは1551年頃のことで、それまでは浦上家は政宗を当主としてまとまっていました。 


 更に言えば、1562年に浦上兄弟の対立は和睦が成り、浦上政宗が播磨を、浦上宗景が備前を治めるという形で終息しましたが。

 その過程において、浦上宗景が備前で政宗方として活動していた中山勝政や島村盛貫を粛清したのが、結果的に宇喜多直家の暗殺と誤って伝わったようです。


 他にも穝所職経(元常)の暗殺が、宇喜多直家によるモノとされていますが、実は毛利家の家臣によるモノだったとか。


 こうしてみていくと、宇喜多直家の旧通説に関してはかなり誤りが多い。

 本当に何でこうなったのか。

 私としては、備前出身の江戸時代の儒学者、湯浅常山の「常山紀談」の影響が大きいのでは、という疑惑を覚えます。

「常山紀談」は史実性を軽視した逸話集なのですが、それが史実として流布したようなのです。

 何だか司馬遼太郎の小説を想わせる話です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 宇喜多直家さん、事実よりも悪人にされている説。納得。 [気になる点] 戦国大名や戦国武将は、子孫縁者が江戸時代に栄えていると、美化され、子孫縁者が寂れていると悪人にされ易い疑い濃厚。 …
[良い点]  うわー「暗黒下剋上男」の物語としてはサイコーに外道でそれゆえにファンの多い宇喜多直家像が揺らぐ「実は江戸時代の史学者気取りの小説家」の書物が根本史料になっている疑惑がここで立ち上がるー!…
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