夏祭りの日は気を付けて。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第四弾!
ヒトがいる。
たくさんのヒトが。
今日は夏祭り。
ヒトだけでなく。
ヒトならざるモノも集う日。
私は母上と父上と、そんな祭りの会場を駆ける。
綿菓子に焼きそばにりんご飴に金魚すくい。
その他にもいっぱい、いっぱい屋台が並んでいる。
「あんまり遠くに行ってはダメですよ」
母上は言う。
「いや、それ以前に私達から離れるなよ」
父上も言う。
「「いろんなモノが集うこの場は、危険ですからね」」
そして同時に、二人は言う。
確かにこういう場は危険かもしれない。
いろんなヒトが行き交う場は。
小さい私にとっては踏み潰されかねない場だ。
母上も父上も、そう言っているに違いない。
だけど私はへっちゃらだ。
私は常日頃、この祭りにもやってきているであろう友人達と一緒に様々な場所を駆け回っている。この程度の人ごみなど、私にとっては止まっているようなものだし、障害物を避けるのも、友人達の中では特に得意なのだ。
だから私は、この時、調子に乗っていた。
様々な存在が集っている、この祭りの中で。
そして、その末に……私は母上と父上と、いつの間にやら……はぐれてしまっていた。
「は、母上ぇ……父上ぇ……」
途端に寂しくなって、私は半分べそをかきながら二人を呼んだ。
だがこの、様々な存在が集う人ごみの中から、母上と父上が私を見つける事は、難しいかもしれない。
そして、その事に気付いた私はそのまま泣きそうになった……のだが、
「ああ、やっと見つけましたよ」
「全く。心配をかけるんじゃない」
その人ごみの中から、母上と父上の顔が現れた。
「母上! 父上!」
私はすぐに二人に飛び付いた。
「さぁさぁ、もうすぐ花火が上がりますよ」
「早い内に、よく見える場所を確保しておこうか」
そして母上に抱っこされながら。
私は母上と父上と一緒に場所を移動して……でも辿り着いた場所は、祭りの会場からあまりにも離れていて。
「?? 母上? 父上? ここがよく見える場所なんで……むぐっ!?」
そして、私は袋に詰められて――。
※
「ふぇっふぇっふぇっ。まさかこうも簡単に妖の子供を捕まえられるとは」
変化の妖術を解いた、人間の男がニタニタ嗤いながら言う。
「まだ子供なのだ。仕方あるまい」
その仲間であろう人間も妖術を解き、ニタニタ嗤う。
「さてさて。本物の親に見つかる前に、早いところ、ガキを買ってくれるところへ行こうぞ」
※
祭りには、様々なモノが集う。
ヒトも。
ヒトならざるモノも。
ヒトならざるモノを捕まえんとするヒトも。
夏魔釣り(◞≼⓪≽◟⋌⋚⋛⋋◞≼⓪≽)