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ヒロインの兄とお友達ちゃん  作者: さもはさうえい
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禁断?の恋と勘違いの失恋

何はともあれ情報だ。友達ポジションは情報が命だ。


「聞きました。なかなか相談してくれなくて言えなくて、ごめんって言われちゃいましたけど……」


ゆらめちゃんは恋愛相談をしてくれない子だった。高一で出会い。一年目は派手なイケメンと話したり遊んだりしたけどあくまで友達としてに見えた。相手は意識してたけどゆらめちゃんは気付かないのか、その遊びに私も誘ってくれてたので間違いないと思う。


貸し切りプールになかなか取れないテーマパークチケットに気付かない。無自覚モテ子。恐るべしだ。高校生活二年目。彼女は何かに悩んでた。一度だけ相談ぽい事をされた事がある。


「一生結婚出来ないかも。って悲しそうに言ってたのに……」


好きになってはいけない人を好きになったかもしれない。確かに彼女はそう小さな声で言った。そんな言葉を聞いて一人だけ浮かんだ人がいる。


実の兄の『ゆらぎ』さんだ。


ゆらめちゃんは二年目と三年目はイケメン達と遊ばず女友達かお兄さんと遊んでいた。お兄さんとは私も含めた三人でよく遊んだ。二人の間に疚しさ(やま)さ色気はまったく無かったと思う。


だけど、もしかしたら?何て思ってしまっていた。相談された時。彼女は泣いていた。だから禁断の恋だと思っていたんだけど真実は違ったらしい。


「もしそうなったら二人で暮らそうか!……何て言ってたんだよ?二人きりで猫なんか飼ってずっと二人でってさ」


顔を手で覆いだす彼に泣き出すのかと少し間を詰めて座り直した。


「……それがさ」


あまりに可哀想な姿に背中くらいは擦ろうか?と背に手を添える。


「それが何だよ!男の『娘』って!お兄ちゃん頭がパンクしちゃうよ!?」


が、めちゃくちゃ通るぶちギレ半泣きボイスに勢い良く手を退ける。声がばかデカイ。


「お兄さん!ここ縁側!!お兄さん綺麗で通る声だから音量下げて!」


ゆらめちゃんは恋をしていた。生物学的には禁断ではない恋を……男の娘との恋だ。


「ごめんね。少し落ち着いたよ。」


「あ、ハイ。そう……ですか。」


普段穏やかでのんびりした優しい彼の新たな一面を見た。ゆっくりと麦茶を飲んで落ち着く彼を見て私も少し叫んだので麦茶を飲む。星野家のお茶は美味い。


「少し早いかもと思ったけど両親はハワイに永住するから、この家を両親から買ったんだ。」


びっくり発言で浴びるほど勢い良く飲んでしまう。常識人なお兄さんが妹の為にそこまではっちゃけるとは思ってなかった。


「株で稼いでたし家事が苦手なあいつの為に家でも出来る仕事でなかなか稼げる会社に内定が決まったのに……」


お兄さんは止まらない。いや、止められないのかもしれない。血走った目。低い低い声。拳がぎちぎちと握り過ぎで音が鳴っている。ちょっと怖いです。


「あ、愛されているんですね?ゆらめちゃん。」


怖くて距離を心と一緒に物理的に離れる為に横に移動すると腕に何かがすり寄ってくる。……猫だ。


「大事な妹だからね?そりゃ、結婚出来ない何て泣いた跡のある顔で言われたら何とかしてやりたいだろ」


膝に登ってきた猫を何となく撫でながら彼の横顔を見れば真剣さがあるものの恋愛的な空気は感じない。禁断の愛は無いらしい。良かった。


「それが何だよ!?男の()って!見た目は女の子だけど男で趣味で恋愛対象は女の子だから失恋したって思ってたら付き合えちゃいましたって!!初対面の時に気付かないで同じ部屋に泊めちゃっただろ!ふっざけんな!何、家族への婚約同棲挨拶でゴスロリ着てんだよ!」


「お兄さん!ここ縁側!落ち着いて!こらえて!」


さらさらと薄い茶色の美しい髪が揺れる。その揺れが気になったのか猫が膝から降りて彼の頭に触れた。


「ふふ……ありがとう。ミルク。慰めてくれるんだな?」


ミルクと呼ばれた猫の偶然の行動に先ほどの激しさは消えて穏やかな空気が流れる。例えこの猫も結婚しない妹の為に飼われた存在だろうと妹に向けるにはクソデカ感情だろうと良い空気だ。


「妹の幸せは祈ってる。だけど……まだ、前向きになれないんだ。呼び出してこんなで、ごめん」


「……お兄さん」


数々の激重なエピソードの一つで高校で海外留学したお兄さんは大学でこちらに戻って来てわざわざ彼女の行きそうな大学に通っていた。私の将来の夢に近い場所で沢山勉強を彼女のついで教えてもらった恩がある。


失恋ではない。だけど心の一部だった存在の巣立ちは失恋に似ている。かけてあげる言葉は難しい。


そんな事を考えでとりあえずまた距離を戻し背を軽く擦ろうかと、とってた距離を縮めた。が、横からくる突然の重みに体が動いた。


「……友子ちゃん?」


気付けば肩に寄り添う形になってた。お兄さんの肩のぬくもりを感じる。犯人はミルクちゃんだ。そんな私を見てゆっくりとこちらを向きお兄さんは両手で肩を掴む。ドキリとした。だって激重の兄でもすこぶる顔が良いからだ。


「ゆら「ごめん。君はゆらめの友達としてしか見れない。考えた事もないんだ」」


失恋した。


「本当にごめん」


え、いや。勘違いですと口を開くも優しく頭が撫でられる。


「また。おいで?」


ちょっと肩に寄り添っただけで何がごめんだ?勘違い……するわ。この人イケメンだし帰国子女だしモテモテだし論破しても言い訳に聞こえてしまうだろう。


とりあえず空気を読んで帰った。勝手に失恋させられた私は何かショックで寝込んだ。彼からの連絡は無視だ。大学には入学して少ししてから会ったけど無視してめちゃくちゃ避けてやった。


とりあえずキラキラした人が集まる場所に居るから避けやすい。キラキラはキラキラを呼ぶ。それから数日後。彼の影響で専門学校を目指した『彼女』から連絡が来た。


彼のマンションに引っ越して遠くなったから『お兄ちゃん』の様子をたまに見てやってくれないか?と……。

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