ジーニアス帝国とクラフタリアのロボット事情
「うまい!?」
「ジン様、本当に美味しいです!」
「美味いなぁ…… 魔物だけど……」
騙されて仲間を失った悔しさから、地面を叩き続けるリューナをなだめた後……
神宮真太郎ことジンは、ネネと食料を探すと……
「家庭菜園? 野生化しているみたいだが…… 食えるか?」
廃墟と化した街の中で…… 野生化した家庭菜園を見付けて、ネネとリューナに聞きながら食えそうな野菜を収穫した。
「とりあえずは、大丈夫そうだな……」
「肉は…… 無いのか?」
「さすがに無理だろう?」
5年以上放置された街で、肉や魚は無いだろうなとジンは思ったが……
「お前が私に投げた黒い玉…… そこから美味そうな肉の匂いがするぞ?」
「お前…… 中身が解るのか?」
「コレとコレ…… コレも美味そうな匂いがする……」
ジンとネネは、リューナが指差した黒い髑髏マークカプセルの1つを見ると……
「確か…… 魔物の中には、高級食材と言われる物も……」
「龍が感じる美味そうな匂い……」
興味に負けて…… ジンはデッドラインに乗り込み、ネネに黒い髑髏マークカプセルを投げてもらったら……
「ブモオォォォォォ!!!」
「「ブラックカウボア!?」」
ネネが投げた黒い髑髏マークカプセルが開いて、ジンの3倍はある黒い牛と猪が混ざった様な魔物が現れた。
「逃がすな!」
「幻の超高級食材ですよ! ジン様!!」
『今日は焼肉食い放題だぁ~!!!』
デッドラインの電磁ナイフが…… ブラックカウボアの首に刺さるのだった。
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「リューナが解体できて助かったぜ……」
「ちょっとしたお料理はできるのですが……」
「ネネよ、気にするな。ネネの下処理で肉と野菜の臭みが無いし、ジンの調味料が良く合う♪」
リューナが狩りで解体スキルを、ネネが王女だったが食に興味を持って料理スキルを覚えていたので……
ジンが〝ガチャ〟で引いた【無限調味料】で、焼肉パーティーとなっていた頃……
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~ クラフタリアの兵器工場 ~
「これなら……〝巨人の足〟の本来の性能に近付ける筈だ」
クラフタリアの兵器工場には、ジンのデッドラインと〝同型〟のロボットの脚部がある……
「しかし…… この足を龍は引き千切ったんでしょう? そんなんで龍に勝てるんですか?」
「バ~カ~、龍のブレスに重戦士みたいに大盾構えて立ち向かえてか? 鉄どころか魔鉱すら溶かすのに」
「コイツは、俺達が持てない龍を斬る為の巨人の武器を振るう為の身体だ」
「戦い型は、避けて斬るが基本の軽装の剣士型なんだろうよ…… せめて胴体が在ればよ~」
「胴体は無かったんでしたっけ?」
「胴体は帝国だよ…… あの〝首無し〟の元になっているらしい」
「あの鎧着たゴーレム戦車が!? コイツとは真逆じゃないですかぁ~」
「あそこは魔法文化が1番発達しているからな…… 魔導具として再現しようとしたんだろうな?」
「魔導具だなんて、無理でしょう…… 何でうちに来ないんです?」
「持ち主がいるからだとよ」
「持ち主?」
「コイツの胴体に乗って、帝国に逃げた流れ人がいるんだとよ」
「うちは残された足と見取り図から再現しているのに……」
「上層部は、兵器を持ち込むならクラフタリアと思ったんだろうが…… 流れ人ならスキル持ちだから、待遇の良い帝国に行くだろうよ」
「うちだったら…… 兵器買い取りの一時金だけでしょうからね…… 魔法系スキル持ちなら帝国に行くでしょうね」
「うちの上層部も馬鹿をやらかしたもんだ」
「大魔窟の在る禁断の地に住む蛮族が、自分達が再現できない様なこんな物を作っていたから…… 嫉妬と欲に駆られたんでしょうね?」
「普通に同盟を組めば良かったのによ~」
「国が無くなれば難民から技術が流出すると楽観的に考えたんだろうよ…… 馬鹿が、商人が戦争屋の真似なんかしやがって…… 大魔窟に逃げたと言う連中には、相当怨まれてるだろうな……」
「まさか…… あの大魔窟ですよ!? あの蛮族達とは言え…… 生きていませんよ……」
「若いなぁ……(その蛮族に世界を救われた事を忘れて、滅ぼしたツケは……)何時払わされる事になるのかね?」
そう呟く技術者の前には…… 物言わぬクラフタリア製の量産型ロボット兵器が立ち並ぶのだった。
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~ ジーニアス帝国 魔導兵器開発所 ~
「いったい何時になれば、コイツの足を直せるんだよ」
開発所の奥で……〝足〟が無いデッドライン3号機が吊り下げられた前で、一人の流れ人の青年が騒いでいた。
「申し訳ありません…… なにぶん、我等には未知の技術ですので……」
「そうなの魔法で、どうにかできるだろうが!!」
魔導兵器の技術者達に当たり散らすのは…… ネネの祖国からデッドライン3号機を盗み、ジーニアス帝国に亡命した流れ人の……【トモキ】だった。
(((((怒鳴るくらいなら…… 壊して持って来るなよ)))))
トモキは、強力な土魔法のスキルを持っていたが……
デッドラインなどのロボットに関する才能は無かった。
魔法や魔導具の知識は持っているジーニアス帝国だったが、ロボットなどの機械的な技術は持って無く…… デッドラインの修復ができずにいた。
「お前達が不甲斐ないから、俺がわざわざコイツと同型のゴーレム機兵〝デュラハン〟を作ってやったんだからな? 早く直せよ!」
機械的な技術を知らないジーニアス帝国は…… 下手に自分達で復元するよりも、開発者を捕らえて復元させては?との技術者達の意見を受けて……
大魔窟に逃げたネネの祖国の人々を捕らえる為に、その兵器開発を…… 亡命して来たトモキに依頼したのだ。
とある条件を付けて承諾したトモキは、デッドラインを型取り首の無い騎士型ゴーレム機兵〝デュラハン〟の基本ゴーレムを作り……
それを元にジーニアス帝国の魔導兵器の技術者達が大量生産し、大魔窟への侵攻開始したのだった。
「もうすぐだよ…… ネネ……」
そう呟くと…… トモキは不気味に笑うのだった。