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プロローグ

 人生に疲れていた。


 生きていても何も楽しいことなどない。生き甲斐とする何かも、社会で活躍する能力のひとつもない。せめて人生楽しいことだけをしてやろうと家に引きこもり、娯楽に没頭していても世の中からは引きこもりというだけで軽蔑の目を向けられる。


「――2番線電車が参ります。」


 多くの学生が、会社員が、それぞれの目的を遂行するために黄色いラインの前へと一斉に立つ。

 果たしてこのラインに立つ人間たちは、この世の全ての人間たちは何を生きがいとして生きているのだろうか。金のためか、はたまた名誉のためか、夢か、仕事か、家族か、友人か、恋人か·····。しかしそれらが無い者達は一体どう生きていけばいいのだろうか。なんの楽しみも生きがいもない。それらを全てを奪われてしまった者は一体どう生きていけばいいのだろうか。


「――黄色い線の内側まで下がってお待ちください。」


 もう疲れてしまった。

 せっかく見つけた唯一の楽しみも大人たちによって非難され奪われる。更にはその者自体も社会のゴミとして扱われ始末される。そんなしょうもない世の中だ。また居場所を見つけようとするのも、そこから前に進もうとするのも既に疲れてしまった。


「――――」


 足元に引かれた黄色いライン。

 もし、この足を一歩踏み出したら果たして楽になれるだろうか。この黄色いラインを一歩飛び越えれば、自分はこの途方もない苦しみから解放されるだろうか。

 正直わからない。ここで人生を終わらせていいのか否かもさっぱりだ。でも一つ確かなのは生きているだけ感じるこの胸の痛み、苦しみだ。どうせこのまま生きていてもそれは何も変わりっこない。生きてるだけでもう辛いんだ。それならいっそのこと·····。


「黄色い線の後ろに下がってください!後ろに·····」




 ――死んでしまえ。




 2020年5月17日。

 一人の少年はこの世を去った。

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