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数式の力

再びタカシ君視点です。

 少女は完全に恐怖に支配されていた。マズい、このままパニックになって余計な行動をされたら詰む。ここは兎に角落ち着かせないと。

「大丈夫!僕がいる。相手は人間なんだろ?僕もいるのに構わず攻撃なんてしてこない。だから安心して!」

少女の肩に手を置き、目を見て訴えかける。よかった、少し顔色が良くなってきた。

「さっき魔力って言ったね、魔力で相手がわかるの?」

「う、うん、強い相手だったら結構わかる。この魔力はあのときの2人組で間違いない。」

なるほど、どうしたものか。ああは言ったが、相手が話の通じる相手とは限らない。一旦逃げて様子を見るか?しかし逃げるってどこから?廊下に出れば間違いなく相手と鉢合わせる。となるともう窓から飛び降りるか?ここは2階、飛び降りても死にはしないだろう。だが足を捻ったりどこか打ったりしたら逃げるのが難しく…ん、待てよ。そういえばあのとき…

「ねえ、君はどうやってこの部屋に入ってきたの?多分窓からだよね?」

「うん、スキルを使ったら偶々上手くいって、その場でジャンプしただけでここまで登れた。」

やはり〈数式〉の能力か。どれをいじったんだ?ジャンプしただけで?あっ、もしかして…。机から羊皮紙とインクを取り出して書き殴る。

「ねえ、その文字ってさっきのこれ?」


W=mg


「う、うんよく覚えてないけど、多分そう。」

そうか、きっとこの数式をいじって重量を弱くしたんだ。いける、逃げられるぞ。この子のスキルの性能しだいだけど、上手くいくかもしれない。

「よし、聞いてくれ、ここから逃げられるかもしれない。」

「え、本当⁉︎」

「ああ、君のスキルが鍵を握ってる。僕の言う通りにしてくれ。」

「うん、わかった!」

「よし、1つ訊くけどこのスキルって君以外にも効果あるんだよね?」

「うん、私の意思で誰にでも効果がある。」

「じゃあ君と僕の両方にスキルを使ってくれ。」

「わかった。どうすればいい?」

「まずこの文字、数式って言うんだけど、を出してくれ。」

「数式ってこれの名前だったんだ…。わかった、んん、えい!」


W=mg


「じゃあこれをこんな風に書き換えてくれ。」

「ええと、わかった。えい!」

読めなくても字の形が分かっていれば大丈夫らしい。空中の数式が書き換わる。


W=mg×1/7


「よし、いける!このまま飛び降りるぞ!」

「ええ⁉︎待って、私そんなに体丈夫じゃないからこの高さでも怪我するかも。」

「君のスキルが効いてれば大丈夫だ。僕を信じて、いくよ!」

「う、うん、わかった、えい!」

僕がカバンに必要なものを詰め込むや否や2人揃って飛び降りる。思いの外ゆっくり落ちていく。当然だ。今僕たちに働く重力は通常の1/7、この世界が地球と同じくらいのサイズとすると月よりさらに弱いくらいだ。

 ゆっくり、ふわりと着地する。彼女にスキルを解除してもらう。

「よし、奴らが宿の中を探してるうちに身を隠そう!」

「うん!」

少女はどこか誇らしげだ。今まで使えないと思っていた自分のスキルが役に立ったのだから当然だろう。

 僕たちは走り出す。魔物とはいえ少女の方が足が遅いので僕が合わせる。いや、僕が担ぐべきか?

 路地裏に入って身を隠す。さあ、この後どうする?このまま逃げ切るか?いや、多分無理だろう。そもそも連中はたった2人で数十人の吸血鬼を壊滅させたんだ。吸血鬼だってそんな雑魚じゃないはず。きっと相手が手練れなんだ。見つかったら即アウトだろう。ならばいっそ…

「考えがある。」

「何?」

「いっそ奴らを捕まえよう。」

「え⁉︎いや待って、無理だよ!あいつら〈蛇皇(ミドガルズオルム)〉にも勝ってるんだよ。私たちなんかじゃ…、」

蛇皇(ミドガルズオルム)〉?さっきも言ってたな。まあ後で訊こう。それと僕だって考えなしに言ってるんじゃない。

「大丈夫だ。勝算はある。まず奴らが君の仲間を襲ったとき、きっと奴らは君たちを倒す準備を念入りにしたはずだ。それに君たちにとって不意打ちだったんだろう?対して今回はどうだ。こちらは奴らが襲ってくると分かっている。それにこちらには隠し玉がある。君のスキル、〈数式〉だ。」

「私の、スキルが?」

「ああそうだ。作戦はこうだ。まず僕らが奴らを上手くおびき出す。そしたら君のスキルを奴らに使って欲しい。僕の言う通りに数式を書き換えれば奴らを捕まえられる。書き換えるのはさっきと同じやつでいい。」

「うん、わかった!」

「よし、じゃあ今度はこう書き変えて欲しい。」


 宿の方へ戻る。外からでも分かる。だいぶ暴れたようだ。中からカタリスの護衛2人組が出てくる。やっぱりお前らかい。2人組がこちらを向き、剣を構える。え、僕のこと殺す気?2人組が一斉に走り出す。あ、やばい、急げ。僕も全速力で走り出す。てかあいつら速っ!しかもだいぶ手抜きっぽい!それだけ僕のことを舐めているのだろう。好都合だ。

何とか所定のポイントまで奴らを誘い込む。奴らはすぐ後ろ、だが、構わん。

「今だ!やれ!」

刹那、背後の2人が地面に倒れ込む。やった、成功だ。物陰に隠れていた少女がこちらに駆け寄ってくる。彼女の近くには書き換えられた数式が浮かんでいる。


W=mg×5


要するに彼らは自分と同じ体重の重り4つを背負っているような状態なのだ。流石に動けないだろう。

「さて、色々訊きたいことはあるけど、まずは顔でも拝ませてもらおうか。」

2人の顔の甲冑を取る。

 驚いたことがある。まず1つ、彼らが思ったより若くしかも片方は女子だった。2つ、この肌と黒髪はまるで日本人だ。3つ、彼らの顔には派手な刺青のような模様が広がっていた。

書いてて思ったこと

吸血鬼ちゃん「えい!」って言いがち

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