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あなたは何者?

リカイが寝てない理由を少し変えました。

「私の先生になって」

リカイは唐突に、タカシにそうお願いにした。


「えっと、急にどうしたんだい?」

「いや、前にも私お願いしてるよ。いろいろあって忘れちゃってるかもだけど」

「あ……」



 そう、リカイは以前にもタカシに似たようなことをお願いしている。奴隷魔法に操られたケイタとチトセが襲ってくる直前、


「私にこの文字の読み方を教えて!」


確かにそう言っている。



 リカイとしてはすぐにでも教えてもらいたかった。しかし、カタリスから逃げ、ヴェクタブルグへ向かう中で、そんな余裕は無かったのだ。


「そう言えばそんなこと言われたな」

「何で忘れてるの、酷いよ!」

「ご、ごめん」

「じゃあ数式の意味教えてくれたら許したげる」

「わ、分かりました!」

「んふふ、素直でよろしい」


何処か楽しそうなリカイ。


「えっと、じゃあ明日から教える感じでいいかい?もう遅いし、流石に眠い」

「うん、いいよ。約束だからね?」

「分かってるよ。おやすみ、リカイ」

「おやすみ、タカシ君」


そうして自分の部屋へ行こうとして、タカシはある違和感を覚える。


「ん?リカイ、君、夜に寝るの?」

「何言ってるの?吸血鬼は寝なくても大丈夫だよ?今までも寝てないでしょ?」

「え、そうなの⁉︎あ、でも言われてみれば……」


タカシがリカイと出会って数日が経つが、今のところ、タカシはリカイが寝ているところは見たことがない。実はこれは吸血鬼の特性らしい。

 リカイ曰く、吸血鬼は日光が弱点のため夜に活動することが多い。しかし中には元は人間だった個体も多く、このような夜行性には急になれないこともある。そういった個体たちが混ざり合った結果、吸血鬼は睡眠を必要とせず、昼でも夜でも起きられる種族となったとのことだ。


「便利な体だな……」

「仲間たちの中にも元は人間だった人は多かったよ。実際私のお母さんもそうだったみたいだし」

「あ、うん」


気まずい雰囲気が流れる。昼間のヨグトの話はあまり楽しいものではなかった。望まずしてリカイを宿し、結局カタリスの陰謀によって殺されてしまったヒルデの人生は、幸せと断定できるものなのかタカシには分からなかった。



 そんなタカシに、リカイは言った。

「タカシ君」

「ん?」

「私はお母さんたちと12年間一緒に暮らしてきた。それでね、私はね、お母さんも楽しそうだったと思うよ。だからね、タカシ君も信じて。お母さんの人生は、絶対に幸せだったって。私や仲間たちといられて、お母さんは幸せだったって信じて」

「……!」

(この子、勘がいいな)

「そうだね、悪かった。リカイの言う通りだ。リカイと一緒にいられて幸せじゃないわけあるもんか」

「うん!ありがとうタカシ君。それじゃあ、明日からよろしくね」

「うん、よろしく」

こうして2人の新しい毎日は始まった。




 タカシたちがヴェクタブルグで初めての夜を過ごしてした頃、ヴェクタブルグ王都某所にファフニールとヨグトはいた。


「いやー、今日は楽しかったな。久々にあんな面白い子たちに出会ったよ」

「左様ですか」

「おや、随分と薄いリアクションだね。君も本当はあの子に会えて嬉しいだろ?お父さん」

「あまりからかわないでください陛下」

「悪い悪い。それで、ヨグトは彼らのことどう思う?明らかに普通じゃないだろ?」

「それは賛成です。そもそも吸血鬼であるリカイをあんなにあっさり受け入れてるのは喜ばしいことですが、同時に怪しくもあります」

「うーん……見た感じ騙してるってわけでもなさそうだしな。やっぱりあれか、異世界人か」

「でしょうね」

アシドー王国が勇者召喚の儀を行ったことは大々的に知らされている。ただその勇者たちの素性が明らかでないだけだ。当然ヴェクタブルグもその情報は掴んでいる。


「変わった名前だったし、それならあの強さも納得だね。あの子たちはそこまで強さを自覚してないだろうけど」

「ですな、あのタカシとかいう者のスキルは気になります。あとの2人もかなりの可能性を秘めている」

「そうだね。まあそれは追々分かってくるだろう。問題はもう1人。そうだろう?」

「ええ」


彼らが話しているのは、エーレのことである。


「タカシたちは異世界人だろうけど、エーレはおそらくこの世界の人間だろう。だが、明らかに魔力と魔法のセンスが規格外だ。我の封印魔法をあんなにすぐ解除できるなんて有り得ないよ普通。数時間は眠ってもらうつもりだったのに」

「加えて、冒険者登録をしようとしたときにもおかしなことが」

「ほう?」

「あの娘の血により、冒険者カードが壊れました。本人曰く、魔力が多すぎた故とのことです」

「え、嘘でしょ?それ下手すりゃ我より魔力多いかもしれないよそれ」

「しかも、破損したカードをあの娘はその場で直してしまいました。無詠唱の回復魔法です」

「待て、訳が分からん。あれはそんなにあっさり加工できる代物じゃないでしょ。しかも何、回復魔法?どんだけ魔法極めてるの?」

「陛下、いかがなさいます?」

「うーん……ヨグト、彼女はどう見えた?」

「……得体は知れませんが、敵ではないと思います。希望も含めてますが」

「そうか、じゃあ今は大丈夫だろう。でも、監視はよろしくね」

「御意」


魔王としては、民の危険はなるべく取り除いておきたかったが、魔物であるリカイが仲間と思っている以上は無闇に手は出せないと思ったのだ。


 つまり、2人にはエーレが何者か、それが全く掴めていなかった。




 同じ頃、タカシたちの家では


「……予想外、でも、いい流れ」


エーレはまだ起きていた。


「待っていろ、最後に、笑うのは、私だ」


誰かに吐き捨てるように、エーレはそう呟いた。

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