登録で波乱が起きるのは王道
魔王ファフニールがタカシたちを盛大にしょうかいしたことで通行人たちは大騒ぎしている。当然だ。今タカシたちがいるのは魔物の国ヴェクタブルグなのだから。
混乱する者たちに向けて、今度はヨグトが叫ぶ。
「落ち着け皆の者!此奴らは陛下が信頼に値するとお認めになった者たちである!お前たちに危害を加えないことは陛下とこのヨグトが約束しよう!」
「おい、聞いたか?人間がやってくるなんて。」
「でも陛下とあのヨグト様が大丈夫だって仰ってるぞ。」
「まあ確かに信じられないけど、ヨグト様が大丈夫って仰るなら。」
「ヨグト様のお墨付きなら信用できるかも。」
「なあヨグト、何で我の宣言よりお前の方が説得力あるんだい?」
「お父さん、すごい……」
「大したことでは無い。」
何故か民衆からの支持が厚いヨグトであった。
「さて、我はそろそろ仕事に戻ることとしよう。流石にサボりすぎだしね。」
「そもそもサボらないでください。」
「前向きに検討しつつ善処したい所存であります。そんじゃあとはヨグトに任せるよ。じゃあね。空間魔法 転移」
こうしてファフニールは仕事に戻っていった。一方タカシたちはヨグトの案内である場所に向かっていた。ちなみにヨグト以外にも大型の魔物はちらほら見かける。
ふと、タカシがある疑問を口にする。
「そういえばヨグト、僕たち入国の手続きとか全然してないけどいいの?」
「問題ない。今頃陛下が全て済ませている。あの方は適当に振る舞っているだけで適当ではない。」
ヨグトの言葉には強い信頼がみてとれた。おそらくあれだけ気楽に会話している点からも、ヨグトとファフニールは親しい間柄なのだろう。
歩くことしばらく。
「着いたぞ。冒険者ギルドだ。」
「ここが……」
「啓太、ヤバい、全私が感動しとる。」
「で、デカすぎんだろ。」
連れてこられたのはかなり大きな2階建の建物だった。入り口はヨグトでも入れる。所謂ユニバーサルデザインというやつだろう。
「お前たちには冒険者登録をしてもらう。面倒な手続きはさっさと済ませてしまうに限る。」
そう言ってヨグトを先頭にタカシたちが中に入る。中は魔物たちでごった返していた。中には剣や槍などの武器を持っている者たちも少なくない。
ヨグトに連れられて受付に向かう。
「これはこれはヨグト様。本日はどういったご用件ですか?」
「此奴らの冒険者登録の手続きをしたい。本日より我が国の住人となった者たちだ。身元は陛下が保証なさっている。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
受付嬢が一旦奥に消えると、リカイが道中での疑問を口にする。
「ねえお父さん、お父さんって何であんなに人気あるの?」
「……昔、少々ヤンチャしただけだ。」
何故か気まずそうに話すヨグト。
そうこうしていると、受付嬢が小さな金属板とナイフを持って現れた。
「お待たせしました。こちらの冒険者カードに血を垂らしてください。魔力を読み取って自動的に登録が完了します。」
「うぅ、啓太、私指切るのは……。」
「しゃあねえだろ我慢しろ。俺がついてるから。」
「……うん。」
一部が難色を示したものの、タカシたちは登録をしていく。まずはタカシがやってみせた。
「こうかな。」
指を少しナイフで切り、その血を冒険者カードに垂らす。すると、カードが淡く光り、カードに文字が浮かびあがる。
タカシ=カズノセ 人間 Fランク
「え、人間?」
受付嬢が困惑し始めた。
「安心しろ。訳あって亡命してきた者たちだ。さっきも言ったが身元は陛下が保証なさっている。」
「か、かしこまりました。」
引き続き登録を済ませていく。
リカイ 吸血鬼 Fランク
ケイタ=ツキシマ 人間 Fランク
チトセ=ミミズク 人間 Fランク
そして残すはエーレのみとなった。
「よし、エーレ、さっさと済ましちまえ。」
「うん。」
そう言ってエーレが指を切りカードに血を垂らす。
すると変化は起こった。
カードはタカシたちとは比べ物にならないほどの光を放ち始めた。
「うわ、まぶし!」
「お父さん、何これ?」
「し、知らん。こんな現象今まで無かったぞ!」
タカシたちが混乱していると、不意に、パキッと何が割れる音がして光が収まる。
「ん、何だ今の音……て、エーレ、それ!」
エーレ 人間 Fランク
確かにカードにはそう記されていたが、
「うそ、冒険者カードが……」
エーレの名が記された冒険者カードは……真っ二つに割れていた。
「あれ、僕、何かやっちゃった?」
何かエーレの私TUEEE物語になってきた……。




