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決戦開始前

 ゴブリンとの戦闘のあと、その日のうちに新たな敵には遭遇しなかった。そして、馬車の中ではエーレへの尋問が催されていた。

「おい、エーレ。てめえ、厨二病化する(ああなる)事知ってて黙ってたのか、ああ?」

キレるケイタ。どうやら先程の自分の台詞が余程恥ずかしいのと、チトセの初対面の人を見るような目が相当厳しかったらしい。


「さっきも言ったけど、僕のスキルは発動しっぱなし。言っても、意味ない。」

「だからってなあ、知ってるのと知らないのとじゃ何かこう、心の持ちようっつーか、何かちげーんだよ!」

「ごめん。でも、僕の依頼人、みんな、あれ目当て。」

「ほぅ、詳しく聞こうか。」

「僕も気になるね。どういうことかな?」

「僕のスキルで、恥をかくとこ見て、楽しんでた。それで、商人とか旅人には人気だけど、みんなパーティー組まなくなった。」

「なるほど…。でもあんなに喋ってたらスキだらけだろ。何でみんな君を護衛に雇ってくれるんだい?」

「そんなに、危ない状況だったら、全部、僕が殺ってた。」

「………まあまあ、啓太も許してやんなよ。怪我した訳じゃないんだし。」

「はあ、わーったよ。もう気にしねえ。これでいいか?」

チトセの一声により許したケイタであった。



その後、魔物と遭遇することは無く、数日後には無事にぺハロの村に到着した。

「ここまでありがとうございました。」

「いえいえ、おかげさまで1日目に面白えものも見れましたし。」

「極めてしんどい。」

「まあまあ。」

「ところでエーレさん、帰りはどうしますか?俺はここで数日商売やったら帰りますけど。」

「エイチシェルだと、もう、誰もパーティー組んでくれない。」

「そうですか。楽しみが減っちまうなあ。そんじゃ達者で。」

「ありがとう。それとこれ。」

エーレが何やら小さな袋を渡す。

「魔除け。僕が作ったから、効き目は確か。帰り道も、大丈夫。気をつけて。」

どうやらエーレなりの気遣いだった模様。


こうしてタカシたちはぺハロの村に到着した。しかしこの辺境に来る物好きはなかなかおらず、宿と呼べるものもなかった。ちなみに行商人の男は実家がこの村ということで、そこで寝泊まりしている。


「ねえ、僕たちエーレに言われるがままぺハロまで来たけど、この後の予定何も考えて無くない?」

「リカイ、あとはよろしく。」

「あ、うん、わかった。」

「?」


何故かここにきてリカイに丸投げしたエーレにタカシは?となった。


「えっと、私と仲間たちって元々魔王領目指してたの。だからこの村に来るのも予定のうちで、後の予定は考えてるんだ。」


ここで魔物について解説しておく必要がある。

 魔物とは、魔力から発生した生物及びそれらに近い特徴をもつものの総称である。例えば吸血鬼の場合、魔力の多く集まった場所から自然発生することは稀であるが、人間のように子を成すこともあれば、血を吸った相手を吸血鬼に変えることもできる。一方ゴブリンはそのほとんどが魔力の溜まり場から湧き出てきたものである。ちょうどRPGのようなリスポーンのシステムがあるのだ。そして、この仕組み故、魔物は魔王領だけでなく人間の国でも現れる。そして発生した魔物たちの一部には魔物の国である魔王領を目指す者たちもいる。リカイの仲間たちこそそれだったのだ。


「………という訳で魔王領に近いこの村なら、賢い魔物に会えるかもしれなくて、その人が魔王領に案内してくれるかもしれないっていうのが計画。」

「いや、最後だいぶフワッとしてたよ。ほぼ無計画だよそれ。」

「仕方ない。これが、最善策。」

「にしたってどうやってその魔物に会うんだ?俺たちが探せばいいのか?」

「ノープラン。」


落胆する転移者3人ともはやこれが常識なのでなんとも思わないリカイとエーレ。


 そんな彼らの耳にとある叫び声がとどく。

「村長!魔物だ!今回のはやべえ!」

村人と思われる青年が村の外から顔を青くして戻ってきた。そして、とある民家からは村長と思われる老人が何事かとやってくる。

「どうした、そんなに慌てて。多めのゴブリン如きならいつも湧いてくるだろ。」

「ちげーよ!ワイバーンだ!」

「なっ⁉︎」


ワイバーンとはドラゴンという魔物の一種であり、その飛行能力と獰猛な性格で有名である。ぺハロの村ではゴブリンのような雑魚が村に入り込むことがしばしばあるが、ワイバーンのような強力な魔物などかれこれ数十年は現れていなかった。ようするに打つ手がないのだ。


「くっ、この村には対抗できる人も武器もない。やむをえん。皆に伝えろ。村を捨てて逃げるぞ!」 

「はっ、はい!」


そんなやりとりを見ながらタカシたちは作戦会議を始めていた。

「ワイバーンは基本的に空から襲ってくる。何とかして地上に落とさないと碌に攻撃もできないよ。でも降りてきたところで倒せるかどうか…。」

「俺と千歳は殴る斬る専門だから、弓も魔法も使えねえぞ。そうだエーレ、お前の魔法で何とか。」

「あいつらは、賢い。詠唱してる、間にやられる。その間、引き付けてくれるなら、いいけど。」

「?ちょっと待ってエーレ。ワイバーンって賢いの?」

「う、うん。」

「話せる?」

「魔物の私なら、たぶん大丈夫。」

応えるリカイ。

「タカシ君、それがどうしt…まさか!」

「そうだよ、倒すんじゃなくて捕まえよう。というか話を聞いてもらえればそれでいい。」

タカシ発案の無茶振りが実行されようとしていた。

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