厨二スキル
【お知らせ】
タカシ君一人称から三人称視点に変わります。
タカシ「な、何故急に?」
リカイ「その方がラクだってさ。もう1つの連載
と一緒で分かりやすいって。」
リーヴァ「なんか、その、ごめんなさい。」
タカシ「死人がでたら助けてもらおうかな」
※クロスオーバーの予定はありません。
日牆璧のルビ少し変えました。
慣れない馬車の中で若干酔いそうになっているタカシに、御者の男が話しかける。
「護衛を引き受けてくださりありがとうございます。この辺りは魔王領に近いもんで、魔物に出くわしやすいんですよ。」
「いえ…お気に…なさらz、ウェッ!」
タカシは己が食した食物が地上に返り咲かんとするのを必死に防いだ。これで7度目である。
それを見て心配そうなリカイとエーレ、頼むから自分たちの方へ吐瀉物が来ないようにと願うケイタとチトセ。つまりタカシだけがこの様なのだ。
「エーレ、治癒魔法とかで何とか。」
「できる。けど、慣れた方がいい。」
いつの間にか互いにタメ口となったリカイにエーレが辛辣に告げる。もはや純粋に心配しているのはリカイだけである。
話は前日に遡る。
その日の前の夜にカタリスから逃げるべくいっそ魔王領を目指そうとなったタカシ一行だが、手段に悩んでいた。目指すは東の果て、魔王領に最も近いぺハロの村。移動の為の足がないのだ。そこで提案されたのがエーレの案である。
「護衛、引き受けたら、良い。魔物多いから、需要、絶対ある。」
「なるほど、でも僕たち強そうに見えるかな?実際僕は弱いし。ケイタとチトセの強さアピールするにしてもそんな機会があるとは…」
「僕に任せて。顔が利く。」
「そ、そうか。なら良いけど。」
斯くして護衛就活生となったタカシたちは2組に分かれた。依頼を見つける班と、長距離の移動に備えて物資を調達する班だ。前者にはケイタとエーレ、後者にはタカシ、リカイ、チトセだ。ケイタは強そうなので同伴して欲しいとのことらしい。一方お使い組は
「このメモのもの、買ってきて。お金、これで足りる。返さなくて良い。覚えるの、めんどくさい。」
と、計画から費用まで全てエーレ持ちである。まあ仕方ない。転移者3人は元々文無しだし、リカイとて命からがら逃げてきたので金など持っておく余裕も機会も無かったのだ。
「ん?でもリカイはどうするの?今昼間だよ。」
吸血鬼のリカイにとって、日光は致命傷になる。
「問題ない。ちょっと待って。すぅ、
太陽は命の源である。太陽は死神とならない。暗き所の命よ、今その源と手を取りたまえ。日牆璧!」
リカイの体を薄暗いもやが一瞬包んで消える。
「これで大丈夫。丸一日だけ、あなたは、日光に当たっても平気。代わりにその間、あなたの魔力少しずつ、消費される。あなたなら、大丈夫。」
しれっととんでもない事をやってのけたエーレにタカシたちは驚きを通り越して少し引いた。
その後、タカシたちがお使いに行ってる間にエーレとケイタは護衛依頼を受けるべく、ぺハロ行きの馬車を探していた。
「えっと、ぺハロ行きの行商人を探せば良いんだよな?」
「そう。僕が見つけるから、ケイタは何もしなくて、いい。」
「お、おう。」
そうして探す事数分。
「いた。」
「え、まじ?」
あっさり見つけた馬車にエーレはスタスタと近づく。ケイタは取り敢えず後ろで傍観している。
「ぺハロの村行き?」
「え、ああはい。そうですが。」
「護衛を引き受けたい。代わりに一緒に村まで連れてって。」
「ん?あんたの顔どこかで…て、ああ!あんたあのエーレか!」
「そう。あとこいつ含めて僕の仲間が4人いるけど多いに越したことはないでしょ?魔物も出やすいんだし。」
「ガハハハハ!エーレさんとそのお仲間とあっちゃ大歓迎だ。いいともいいとも。そんじゃ明日の朝、門に来てくれ。あー、こりゃ今回の仕事はいいもんが見られそうだ!」
こうしてエーレたち、というかエーレはあっさり仕事を完遂した。が、ケイタには少し疑問があった。
「なあ、エーレ。何であんたあんなに人気なんだ?あの行商人、大爆笑してたぞ。あとあんた交渉の時だけすげー饒舌じゃなかったか?」
「交渉は、慣れてるから、平気。あと、僕、強いから人気ある。あとは、そのうち分かる。」
「?」
こうしてタカシたちは行商人の馬車に護衛として乗せてもらっていた。1人死にかけているが。
「そろそろ…止まりませんか…死ぬ。」
タカシがそう言った直後、本当に馬車が止まった。
「え…そんなお気遣いなく…」
「タカシ君違うよ。魔物だよ。」
「!」
「おーいエーレ!あんたらの出番だよ!」
意識を取り戻すタカシ。そして馬車から降りるとそこには数匹の薄緑色の皮膚の小鬼がいた。
「ゴブリンだよ。頭も悪くて魔法も使えない雑魚だ。さっさとやっつけよう。」
リカイがそう言い放つ。魔物のリカイが魔物を殺すことに抵抗はないのかと心配だったが、前日のうちにリカイに訊いたところ、
「人間が動物を狩るようなもの。よっぽど賢かったり同族じゃない限り平気。」
との事だった。
「タカシさん、ここは取り敢えず俺が。ゴブリンくらいならもう何匹も倒してます。」
「分かった。頼む。」
「おっ、兄ちゃん張り切ってるねえ。」
相手が雑魚だからなのかやけに楽しそうな行商人を背中にケイタか剣を構える。ちなみに顔の模様がなくなったケイタとチトセは軽装に着替えていた。
「いくぞ。」
そして斬りかかる直前、ケイタが唱える。
「我が刃よ、汝の無慈悲なる斬撃を以て、我が敵を殲滅せよ。ハッ!」
一気にゴブリンたちに詰め寄り全員を一撃で倒すケイタ。
「これが俺の能力〈剣士〉!俺の斬撃はどんな敵であろうとダメージが増幅される!さらに剣を持っている限り、俺の身体能力そのものが底上げされるんだ!」
誰に話しかけているのか堂々と宣言するケイタ。
その様子を見てチトセは引いていた。
「ちょっと啓太…あんた…いつの間に厨二病に?」
「え?あ!本当だ!何だ今の⁉︎」
露骨にパニックになるケイタ。
「ガーハッハッハ!兄ちゃん、あんたやっぱり聞いてなかったのかい!」
そんなケイタを見て笑い転げる行商人。
「ちょっとおっさん、あんた何か知ってんのかよ⁉︎てかもしかしてあんたの仕業か⁉︎」
「ガハハハハ!俺じゃなくて、あんたの連れのせいだろうが!」
笑いながら行商人が指したのはエーレだった。
「⁉︎エーレ!てめえ昨日そのうち分かるって言ってたのはこれか⁉︎教えろ!俺に何をした!」
エーレが動じる事なく口を開く。
「前に一度話したはずだよ。僕のスキル〈強制詠唱〉と〈情報公開〉。僕の近くでスキルや魔法を使ったら、しなくてもいい詠唱をするし、手の内を全部喋っちゃうの。どっちも解除できないんだ。ごめんね。」
この時、タカシたちは自分も厨二病と化すかもしれないということに恐れをなした。
タカシ「まさか君のタメ口化も作者の気まぐれ?」
エーレ「いや、ちゃんと、あなたたち仲間と、思っ
た。だから、敬語やめた。」
タカシ「何でそんな急に…」
エーレ「言いたくない。伏線にする。」
タカシ「そういやケイタは?」
チトセ「落ち込んでる。」




