タカシ君は自動操縦より賢い
え、何、この人たち?この国の人達みんな白人っぽくてカラフルなアニメ髪ばっかりだと思ってたのに何で急に黒髪で平たい顔のザ・日本人?いや待て待て待て。そういう決めつけは良くねえぞ、いわゆる人種の坩堝ってやつでアジア系の人がいるのかもしれないじゃないか。まあ彼らの容姿のことは置いとこう、僕たちはこれからこいつらの目的を問い詰めなくちゃならんのだ。
「あなt…お前たち、何者?」
少し間を置いて少年の方が答える。
「…俺はケイタ=ツキシマ。こいつはチトセ=ミミズク。あんたと同じ日本人だ。」
あっ同郷でした。ケイタ君にチトセさんか、てかチトセさんの名字ミミズク⁉︎どうせならまずは佐藤とか鈴木とかに会いたかった。
「ねえ…この人たち、あなたとどういう関係?何で奴隷魔法かけられてるの?」
あ、やべ、吸血鬼ちゃん置いてけぼりにしてたわ。というか何ですか、その禁術感のある魔法は。
「どうやら僕と故郷が同じらしい。向こうで会ったことは無いけど。てか奴隷魔法って?」
「えっと、この人たち、顔に模様あるよね?これは奴隷魔法かけられた証拠で魔法をかけた人に逆らえなくなるの。魔物とか猛獣以外に使ってるの初めて見た。」
はーい人権ナッシングな展開でーす。やっぱ異世界召喚ものの召喚主は信用できねーな(極めて偏見)。
にしてもこいつは困ったな。こりゃ僕たちを襲ったのも絶対こいつらの意思じゃないパターンだろ。まあひとまず尋問つづけよ。
「僕たちを狙った理由は?」
「そこの吸血鬼にあんたを襲わせるよう命令された。それで生き残った方を俺たちが殺せって。カタリスの命令だ。」
でしょーね。この2人召喚したのあいつだし、そりゃ奴隷魔法もかけたい放題だろ。
まあ、ひとまず敵キャラが誰かはこれで明確になった。あとはどうするか…。王道の展開なら魔物たちひいては魔王と手を組んでカタリスに復讐って展開だけど。その前にこいつらどうにかしねーとな。仮にも吸血鬼ちゃんのファミリー(広義)の仇なわけだし。
「というわけだけど、君はこいつらをどうしたい?君は仲間と家族殺されてるわけだからある程度意見言う権利はあると思うよ。」
頼むから殺すとか言わないでくれ!
「…こうやって自由じゃなくなった魔物もいっぱいいる。彼らだって本当は嫌な殺しをいっぱいさせられて、怒った人間にいっぱい殺された。私は人間どもの同類になんかなりたくない。だからこの人たちを殺さないことが私にとって最強の反撃なんだと思う。」
要するに殺したくない、か。ひとまず安心だな。
「よし、そういう事なら僕も気にしない。じゃあとりあえず2人を動けるようにしてあげ…」
「ま、待って!」
チトセが叫ぶ。
「私たちはあいつの魔法のせいで体の自由が効かないの。あいつにあなたたちを殺すよう命令されてるから、自由の身になったらまた体が勝手に…、」
なるほど、そいつは厄介だ。
「体が勝手に動く、それってゲームのNPCみたいな感じ?」
なるべく若者に寄せた例えだがどうだ?
「う、うんそんな感じ。あいつの命令を果たすために体が勝手に動くの。」
そりゃだいぶキツいだろう。人形の中に魂だけ入ってるようなもんだ。だが、驚いたことに突破方を閃いたかもしれん。
「その自動操縦、無くせるかも。」
「「え⁉︎」」
「まあ、見てな。すぅ、約束しよう、もし2人が自由の身になったら僕を殺してくれて構わない!…よし、これでいいと思う。スキル解除してみて。」
「え?ええと、わかった。」
数式が元に戻る。
W=mg
これで軽くなったはずだ。あとは襲ってこないかどうか。
2人は立ち上がったまま動かない。剣も握らない。やった、成功だ!
「…ウソだろ…あんな口約束で。おい、あんた、何で上手くいったんだよ?」
「うーん、簡単に言うと君らを動かしてたコンピュータが馬鹿だったからかな。」
「「は?」」
「そうだな、例えば君らが宿に入ってきたとき。あのとき君ら僕らがいないのにいきなり1階で暴れ出しただろ?それに僕が君たちをここに連れてくるとき、君ら全速力で走ってなかったろ?多分舐めプでもいけるって思ったんじゃないかな。要するに体乗っ取られてる時の君らの選択はあんまり頭良くない。だからさっきうまいこと僕を殺せるような口約束をして自動操縦をオフにしたってわけ。」
2人はぽかーんとしてる。まあ体の自由奪われてたらそんな分析できんわな。
「とにかくこれで自由の身なんだ。良かったじゃないか。」
「「ありがとうございます!」」
なんて素直な感謝の言葉だろう。いい気分だ。
「まあ、念のため鑑定で2人の様子も見ておこう。他にも悪質な魔法かけられてたらマズいし。」
2人に対して鑑定を使う。
「あ、」
「「?」」
そのとき頭の中に表示された情報は
ケイタ=ツキシマ
スキル:剣士
状態:隷属
チトセ=ミミズク
スキル:痛覚変換
状態:隷属
ごめん、治ってねーわ。
啓太と千歳を殺そうか迷って結局生かすことにした優しい作者であった。




