プロローグ
どうやら勝ったようだ。あいつはもう死んだ。さっきまで戦っていた兵士たちも恐れ慄いている。喜ばしい勝利だ。家に帰ったら何かやたらと豪華な食事でも用意して、思い切ってお勉強ですらサボってしまって馬鹿騒ぎでもしようではないかと言いたい…はずだった。
今回の勝利の立役者(元凶ともいう)の少女は何やら顔色が悪い。それでいてただ大人しく彼の話を聞いている。
「うん…、うん…。わかった。」
少女の様子を少し前から見ていた者は何と心の強い子なのだと驚くかもしれない。何故なら、彼が話を聞くよう言うまでえらく焦っていた。
急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ……と空中をなぞっていた。まあ、当然だろう。人の生き死にがかかっているときは焦るものだ。
そんな少女を落ち着かせて彼は話す。
大丈夫だと。そんなことをする暇があるならちょいと頼まれろと。
このときの頼みごとは後にちゃんと果たされる。そしてこの日の話は後の少女にきっと影響しただろう。
少女の物語は始まったばかりだ!
しかし、こうやって締めくくるわけにはいかない。話しておかなければならないことはたんとある。
全ての始まりの話からしよう。
やけに目利きな元社畜
学問に救われたチートスキル保有美少女
パーティー追放された人、追放した人、往生際の悪いシスコン、その愛を受けていた人
これら全ての因果に影響を及ぼす記念すべき(当事者は大変だろうが)な出来事が起きたのはあの日だ。
異世界から勇者が召喚された。もう何か起こりそうだ。