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開戦

 街道を進軍するローマ軍は、森まであと少しの所で停止した。


 軍の指揮は、実質的にウォレヌスさんに丸投げしているけど、一斉に全員ピタッと止まるのは圧巻だった。


 練度以前に、長年軍に滞在していた百人隊長の貫禄を見せつけられたようで、ゲームをプレイしているかのような安心感がある。


 「ここまで警戒しつつ進軍して来たが、バーサーらしき人影も伏兵も見当たらない、か。 不気味な事この上なしだな」


 同感だ、 絶対に奇襲して来ると思っていたんだけど。


 「奴等の目的が分からない。 侵略戦争をふっかけて領土拡大だと思ったけど、実際に確認したのはバーサー一人だし、例え小規模でも戦争をするという雰囲気すら感じないんだ」


 頷くウォレヌス。


 「だが、油断は禁物だ。 ユグルド男爵の古城を襲撃した際も、何の前触れも無かったと聞く」


 確かにそうだろうけど、と呟きつつ街道の部隊を振り返る。


 何だろう、この違和感は。


 「気のせいだろうけど、人数が減ったような気がする」


 慌てて振り向いたウォレヌスが部隊に号令を出す。


 散開した部隊の一部に、いきなり出現した敵が取り囲むと、それを合図に各所で戦闘が始まる。


 間違いない、ここに来るまでの間、後続の部隊が食われている。


 「あの敵、コバルトだ。 グリフォンの厩舎でも見たけど、あいつら、土木工事が一流の工作部隊だよな? まさか、この荒野全体が奴のダンジョンになってるんじゃないか?」


 俺の言葉に舌打ちするウォレヌス。


 「東ローマ王国とコバルトは敵対関係だから油断していた。 男爵の古城が襲撃された時、我等が攻略していたダンジョンこそがコバルトの物だったというのに、だ」


 ウォレヌスの合図と共に、街道経由で森の中へと進軍するオーク達。


 前列がもう少しで森に差し掛かるというタイミングで、森の一角が炎に包まれた。


 「ファイヤーボール! くそっ、バーサーか」


 魔法の飛んできた方向を見ると、瓦礫の山に佇むバーサーがいた。


 奴を見つけたオーク達が襲いかかろうと近付くと、瓦礫の中にあったぬかるみにはまる。


 そのまま周りから飛び道具を食らい、各個撃破されるオーク達。


 「一網打尽に出来ないならコバルト達にやらせるか。 あいつ、遊んでやがるな」


 オークの一人が、やけくそ気味に投げ槍(パイク)を投げると、正確にバーサーへ向かって飛んでいった。


 既の事躱したバーサーが、憤怒の形相でオークに向き直る。


 「てめぇ、ザコキャラのくせにいい度胸してんじゃねぇか!」


 怒りに任せ、ファイヤーボールで、仲間のコバルトごと敵を吹き飛ばすバーサー。


 戦場の時が一瞬、止まる。


 「テメェ等、何ビビってんだ? 流れ弾の一つや二つ、今に始まった事じゃねぇだろうが!」


 そうわめきたてるバーサーの元に、何者かがやって来た。


 怪訝そうな目で相手を見るバーサーが、唖然とする。


 そこにはアトスがいた。 全裸で。


 理解出来ずに佇むバーサーの前に、アトスの後ろから、二人の青毛の人狼(トロール)が現れる。


 「アニキ!」


 「おう、覚悟はいいのか?」


 頷く青毛の人狼(トロール)。 頷くアトス。 そして……




 「胴金(ドウガネ)」「武威(ブイ)」「武威(ブイ)




 バーサーの前で、三人の体が魔法の光に包まれていく。


 あっけに取られて見ていたバーサーの前で、火だるまになる青毛の人狼(トロール)


 「はは、バーカバーカ。 おメーら獣人は魔法が弱点だったんじゃねぇか。 |フェニックスを信仰する者《フェニキア人》でも無ぇおメーらが魔法を使ったら、そーなるわなぁ? こいつら自殺してやがんの」


 腹をかかえて笑うバーサーに向かって襲いかかる青毛の人狼(トロール)


 「我等、命に代えても主ミッター伯爵の仇を討たん」


 火だるまになった青毛の人狼(トロール)は、気が済んだとばかりに、どう、と倒れた。


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