進軍
目が覚めると、指揮所にいた。
誰かが掛けてくれた毛布を脇にどかし、椅子が立ち上がり伸びをする。
テーブルに並べられた地図の端に書かれた、「ピサは安全」という走り書きに、羽根ペンで線を引いた。
部屋にいた人達が、一斉に振り向く。
「大事な話がある。 責任者をここに集めてくれ」
主要な人物が集まったのを見計らい、俺は報告した。
「今、神様から伝言があった。 神殿の方でクーデターがあり、地上では強硬手段で変革するらしい。 端的に言うと、今の戦乱は神様が原因という訳だ」
辺りがざわついた。
「今までは安寧をむさぼっていたオエライさん達がヤる気になって、周りの者が混乱している状況だろう。 バーサーのように、最初からヤる気のサイコがヒャッハーしているだけで、他は様子見って所だろうな」
ウォレヌスが立ち上がる。
「それで、どうするんだ?」
「バーサーを含めた先遣隊を倒す。 そうすれば膠着状態になる筈だ。 世界情勢が安定したってのに、また戦争かよ!? というのが転生者達の意見だろうから、そのうち沈静化すると思いたいな。 楽観的すぎるか?」
苦笑するウォレヌス。
「転生者の大半が日和見主義だと聞いている。 お手並み拝見と行こうか」
ごめん、と言って周りを見回す。
あきらめ顔で苦笑する人達が俺を見返していた。
ピサの町を走る街道からアーチをくぐると、開け放たれた門の外には瓦礫を一直線に突き進む街道だけが伸びる。
今はオークの即席スラム街に取り囲まれる格好になっているが、それも過ぎると荒野が広がっているだけだった。
恐らく点在していたであろう民家は瓦解し、まき散らされた瓦礫に同化している。
そのまま野ざらしになった瓦礫に草木が生い茂り、襲撃者が近くに紛れていてもおかしくはない、そんな気分にさせられる場所。
呼集を掛けられた兵士達は、この城に到着するまでの間、ちょっとした冒険気分だったんだろうな、と俺は思った。
ここで問題になるのはオークの方が多い事で、通常はローマの兵士達が八十人にオークなどの外人が二十人の混交部隊となる所が、今はオークの方が八十人という逆転現象となっている。
これは大部分のローマ兵が本物の皇帝に追従しカルタゴへと向かったからだった。
残存したローマ兵には素行が宜しくない連中も混じっており、統率がとれるのか不安だったが、そこは腐っても鯛、いざ戦闘ともなると望む所、なのだろう。
元百人隊長のウォレヌスが三百人隊長に昇進し、オーツが百人隊長に復帰する。
ローマ軍からも三百人隊長が選ばれ、俺は六百人の軍人を指揮する皇帝となった。
「大丈夫だ、俺達が何とかするから、後はお前が同行するだけで事足りる」というありがたいウォレヌスの言葉に励まされつつ出発するローマ軍。
本当に大丈夫かな、これ?
「ニール、あたしも加勢するわ」
いつの間に来たのか、受け付け嬢のパークさんもいた。
オーク達はモエーモエーと大喜び。
「パークさん? えっと、俺ら戦争に行くんですが?」
「あたし、強いよ?」
笑顔で答えるパークさん。 なぜか怖かった。
「血が騒ぐな」
ターカーと母のマリーもいる。
まあ、ある意味心強いけど、戦争とは?




