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裁きの光

 始発電車に揺られ、フィレンツェに到着した俺を待っていたのはギルドマスターのラリーだった。


 「ようこそニールさん。 さっそくお願いしますね」


 握手した手に握られていたリフトの鍵を受け取り、俺はさっそく資材倉庫のリフトへと向かった。


倉庫内は半分ほど空になっていて、一区画が開いている所もある。


 「そこは鉄骨なんかが置いている場所だな。 ただでさえ足りないのに、勇者っていうテロリストが好き勝手やったせいでこのザマだ」


 吐き捨てるように言う現場監督。 俺も同感だ。




 前にも借りたギルドのアパートに寝泊まりして一週間が経った。


 『絶望の壁』と呼ばれる巨大な壁の前に積載された4個のコンテナを空にした頃には資材倉庫の大半は資材で埋め尽くされている。


 「ご苦労様。 今回、君が請け負った分の仕事は、これで終わりだ。 予定ではフィレンツェの滞在期間は十日になっているから、あと三日は観光でもするといい」


 意外にもノルマを達成した後は解放してくれるスタンスらしい。


 ブラックという訳でもないんだな。


 報酬を受け取った後ラリーさんに礼を言い、手早く着替えをしていると『絶望の壁』あたりが騒がしくなった。 野次馬根性で近付く。




 『絶望の壁』から、大型クレーンが生えていた。


 ゆっくりと、壁が開く。


 壁の隙間から発せられた陽光に目がくらんだ。


 目が慣れると、二基の大型クレーンを設置した基部がせりあがって来る。


 背景は巨大なクレーター、いや、火口湖・・・


 海に面した円形の湾内には海上都市があり、そこからモノレールのようにクレーン基地そのものが、ゆっくりと近付くのだ。


 やがて停止した基地は、クレーンで積載したコンテナを下ろすと、代わりに俺達が空にしたコンテナを積載し、ゆっくりと帰っていく。


 「驚いたか?」


 いつの間にか隣にラリーさんがいた。


 「あの都市は一体何ですか?」


 「あれは海上都市アトランティスだ」


 自慢げに説明するラリー。


 「この世界では、ローマがアトランティスなんですね」


 「いや、アトランティスは時速二十ノットで海上航行出来るんだ。 世界中を航海していたから、様々な国で噂になっている。 アトランティス大陸が世界中にある訳だ」


 苦笑しつつ答えるラリー。


 「所で、この世界のローマって、どこにあるんですか?」


 一瞬、固まるラリー。


 「消えたよ。 『裁きの光』に灼かれて、一瞬でな。 後に残ったカルデラ湖に到着したアトランティスが新しいローマって事だ。 それ以来、あの壁は『絶望の壁』と呼ばれている。 壁が開くたびに、避難したローマ市民に絶望げんじつを突き付けるからな」


 吐き捨てるようなラリーの口調が気になった。




 その夜。


 「ワシはやっておらんぞ」


 いや、まだ何も言ってませんから。


 「『裁きの光』で人類が滅びかけた訳ですよね、何ですかその『裁きの光』っていうのは」


 ため息を吐く神様。 こっちの方が吐きたい。


 「この世界にある魔法は、ワシのように「他人の心を読む」という魔法もあるのじゃ」


 唖然とした。 それって、筒抜けって事か。


 「そこまで便利なものではない。 相手が意識した単語が分かる程度じゃ。 だが興味を持った貴族が『使徒』を拷問して秘密を聞き出した」


 俺は再び唖然とした。


 「その結果、世界大戦が始まった。 責任を感じた使徒は、禁忌とされた『裁きの光』を解放し、ご覧の通り・・・・・じゃ」


 何も言えなかった。 この世界では、人類が滅亡する程の秘密が眠っている、という訳か。


 「俺、どうすればいいんですか?」


 「ワシの言葉に従う以外は普通に暮らして貰いたいの。 不埒者がよこしまな気持ちを持たんとも限らぬから、お主が『使徒』だとバレぬようにするのじゃぞ?」


 村中に轟いてますが? 俺が思った後、神様の表情がこわばった。


 「フィレンツェの酒場でも酔っ払いが「俺様は使徒だぞ」とくだを巻いていたのを見てますし、そんなに目くじらを立てる程とは思えませんが?」


 「うーむ、「喉元を過ぎれば熱さを忘れる」という訳じゃな。 平和ボケが過ぎて逆に怖いぞ?」


 同感です。


 「それで、どうなれば良いんでしょうか? ここまで放置しておきながら後で泣き付かれても手遅れで困るんですけど?」


 そう言うと、マリーが俺の腕にしがみついてきた。


 あー、はいはい、言葉を選びますよ。 神様は心を読めるから無意味だけどね。


 「お主には獣人達がおるから大丈夫じゃろう。 何かあった時は、今まで通り伝えるから安心するがよい」


 自分からやっかい事に首を突っ込まないようにしろ、という事か。


 獣人オーク部隊の面々を想像した。 うん、無理。  

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