復旧
神様に今日の出来事を報告すると、なぜか喜ばれた。
何でも、神様本人は世界に直接手出し出来ないので天使や使徒を使い干渉するしか手は無いのだとか。
力を手に入れるチャンスがあるのなら神だろうが悪魔だろうが遠慮なく利用するがいい、とまで言ってくる。
こいつ、本当に神様か?
まあ、俺としては有利なフラグが立ちそうなイベントに参加しない手は無いと思っていたけどね。
ダンジョンの復旧が一段落した日、アーラコッラ達が俺を迎えに来た。
ヒポグリフに引かれた空飛ぶ馬車の内部は狭く、上空での揺れを緩和する為のぶ厚いクッションに寝た時は棺桶に入れられたみたいで縁起が悪い。
MRI検査に何時間も拘束されたような気分を味わっているうちに、ダンジョンへ帰還していた。
アーラコッラの村に到着した時の事は何となく覚えてはいるが、霧がかかったように不明瞭な記憶だ。
彼等が一斉に俺をのぞき込んだ時、悲鳴を上げそうになったよ。
アーラコッラ達の黒い大きな目は感情が無く、まるで宇宙人……い、いや、まさかね?
正直、儀式の記憶が無いっていうのは不安な事この上ない。
俺、一体どうなっちまったんだよ。
ダンジョンの復旧が一段落し、獣人部隊の再編も完了した頃、ギルドから呼び出しがあった。
物資が足りなくなったので補充するので手伝って欲しいとの事だ。
鉄骨などの補強材は底を尽き、フィレンツェでは各地から集められた資材の搬入でてんやわんやなのだとか。
冒険者達を使って侵略行為を行ったんだから、これはもう戦争だなと大はしゃぎのオーク達。
彼等をなだめて村へ帰ると、ギルド内に集まった冒険者達も戦争だと浮かれまくっている。
神様、俺はたしか『国盗り合戦』を止める為に転生した筈ですよね? 俺には無理です。
軽いめまいを感じながら家に帰ると、ターカーが待っていた。
「家なら誰にも聞かれないからな。 さっそく報告して貰おうか」
「獣人達の活躍で、『厩舎』はほぼ復旧しました。 アーラコッラ達の村に疎開していたグリフォン達も無事に帰り、全員無事です。 オーク部隊も人員が補充されて戦力も戻り、ギルド内の冒険者以上にヤる気です」
「村の資材倉庫は空だ。 今また襲撃されたら、今度はお手上げだな」
俺とターカーのため息がハモる。
「帝国では軍を国境近くまで進撃させる予定だったが、王国の使者が来て謝罪し『厩舎』の損害を全額返済と賠償金の支払いで和解する事になった」
「あの冒険者達は帝国と王国、両方のギルドに登録していたらしいですね。 まるでイソップ童話のコウモリだ。 彼等はどんな言い訳をしたんでしょうね?」
「「ボク、何かやっちゃいました?」だそうだ」
うあ、マジでイラッと来る。 生前の俺の気持ち、よーく分かるわ。
「俺が帰った時、ギルドに列車が止まっていたから荷物はリフトで下ろしておきましたよ。 『厩舎』の資材はすぐに搬入したいからまとめてくれとギルドに伝えておきました」
「相変わらず手際が良いな。 さすがは『使徒』だ」
「茶化さないで下さい。 生前、現場監督をやっていたおかげで段取りが出来るだけです」
満足げに頷くターカー。
「予備の資材を運び終えたら復旧は完了、という訳だな。 それが済んだらすぐに報告してくれ。 フィレンツェにある鉄道運輸の連中がお前をご指名だそうだ。 グリフォンの事なら私が飼育するから安心しろ」
ああ、フィレンツェでリフトを使った時の現場監督さんね。 さーて、忙しくなるぞ。
昼食を手早く済ませ、資材倉庫の近くに馬車を止める。
ワーラット達と一緒に倉庫の周り置かれた資材をバケツリレーの要領で次々に馬車へ乗せた。
「これで全部の筈だ。 それじゃ行って来ます」
「え? 今さっき列車から資材を下ろす仕事を終えたのに、まだやるの?」
パークさんが驚いている。 現場監督だと普通なんだけどな。
「フィレンツェの方でもお呼びが掛かっているんだ。 出来れば今日中に作業を終えたいからね。 今から急げば、夕方の列車に乗って村に帰れるんじゃないかな」
愛想笑いを浮かべながら答えた。
「これがケモナー補正か。 ニール、あなた、怖いわ」
そう言うと、逃げるようにギルドへ駆け出すパークさん。
はやし立てるようにチューチュー言うワーラットがウザい。
『厩舎』付近の資材倉庫に横付けした馬車から手渡しで次々に補強材が運び込まれた。
このペースだと一時間ほどで終わるだろうとたかをくくっていたが、途中で報酬代わりのワイン瓶が入った箱を発見したオーク達と一悶着あり、ダンジョンを後にしたのは夕暮れ時である。
途中で夜になると危ないからと言われ、新人のオークが相乗りする事になった。
オークは夜目が利くから任せろという訳だが、嫌な予感しかない。
案の定、途中から「そんなにちんたら進んでたらワインが飲み干されちまう。 いいから貸せ!」という怒声と共に手綱を奪われ、夜の街道を馬車で駆け抜ける。
こうして俺は森に住む野生動物にも愛用されている街道を全力疾走するという、某テーマパークのアトラクション並の恐怖を満喫しつつ帰路に着いたのだった。




