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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第三章

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パーティー7・想いの強さ

今回短めです、すみません。

声のした方を見ると、そこには小柄だが、凛とした立ち姿のご令嬢がいた。


但し、その意志の強そうな瞳には、うっすらとだが涙が溜まっているように見える。


「やっぱり…」


何事だろうかと戸惑う私達とは逆に、レイ君は眉を顰めてそう呟いた。


何か事情を知ってるのかなと考えていると、今度は慌てたような声が響いた。


「き、急にどうしたんだアメリア?」


お父様だろうか、品の良い男性がアメリアと呼ばれたご令嬢に駆け寄る。


「トパーズ子爵。貴方の娘さんですか?」


「ええ。申し訳ありません、ラピスラズリ侯爵。ほら、皆様もうお帰りになったぞ、我々も行こう」


エドワードさんの問いかけにさらに顔色を悪くした子爵は、さっと手を取り会場から連れ出そうとしたのだが、アメリアさんは動こうとしない。


「いやよ、お父様。…聖女様、ご無礼を承知でお尋ねします」


子爵の手を振り払うと、アメリアさんはキッと強い眼で私を見つめてきた。


え…と、多分私とは、今日が初対面よね?


「トパーズ子爵令嬢、申し訳ありませんが、これ以上はお控え頂きますよう」


「え…っ」


庇うように前に出てくれたレイ君に、アメリアさんも流石に怯んだ様子で後ずさった。


するとそこへ、さらにレオンハルトさんも前に出る。


「トパーズ子爵令嬢。聖女様は国王陛下にも並ぶ立場のお方。そのお方に無礼を働いてまで尋ねたい事とは、それ程重要な事なのですか?ましてや客はお帰りになったとは言え、まだここは私の姪であるラピスラズリ侯爵令嬢の祝いの場。今一度、考えて頂きたい」


つまりは、立場と状況を考えて言動を慎め、ということだ。


その言葉にアメリアさんはかっと顔を赤くして俯いてしまった。


「ま、待って二人とも。アメリアさん、私に話があるんですよね?顔を上げて下さい。聞きますから」


張りつめた空気に割って入るようにアメリアさんに話しかけると、だが…とレオンハルトさんが躊躇いがちに見つめてきた。


そんなレオンハルトさんの様子を見て、さらにアメリアさんは傷付いたような表情をする。


ーーーあ…


これは、と思ったが、気付くのが遅かった。


「…どうしてですか?どうして、その方なんですか?わ、私だって…」


そこまで言うと、再び鋭い視線を向けてきた。


「恐れながら、聖女様はラピスラズリ団長様のお気持ちをご存知なんですよね?聞けば、まだその答えを出せていないとか…。そうやって、エスコート役を頼んだり、揃いの衣装で着飾ったり、期待させておいてそれですか!?優しさに甘えていて、団長様のお気持ち、考えていないんじゃないですか!?好きなら好きって、早く伝えてあげて下さい!!それとも、やっぱりそういう想いではない、っておっしゃるのなら…」


捲し立てるようにそこまで言葉を続けると、一呼吸置いて、アメリアさんは一度レオンハルトさんを見つめてから、再度私に向き直った。


「…私に、譲って下さい!心優しいって評判の聖女様なら、許してくれるでしょう…?」







ああ、私は本当に甘えていたんだって、その時思った。


せっかく黄華さんやアルが教えてくれたのに。


何度もレオンハルトさんは伝えてくれていたのに。


自分を守る為に逃げて、先延ばしにして。


それで結局、知らない所で人を傷付けた。


こんな自分は、レオンハルトさんに相応しくないのかもしれない、そう思った。


そう、思ったのに。


それでも、私はーーーー。







「ーーーアメリアさん」


自分でも驚く程に冷静な声が出た。


言うだけ言ったら力が抜けたらしく、お父様に宥められながら座り込んでしまったアメリアさんに、静かに近寄り膝を屈める。


その気配に、そっと彼女も顔を上げた。


ーーーきっと今までもたくさん泣いたのだろう。


綺麗な黄緑色の眼に涙をいっぱい溜めて、必死に歯を食い縛っていた。


わたしのせい。


色んな事を考えたら、多分聖女というややこしい立場の私の相手なんて、きっと苦労する。


もっと彼に相応しい人なんて、沢山いる。


そして、彼に惹かれている女性も、またきっと。


『ーーーそれでも、彼と一緒にいたいと思えますか?』


目の前の意志の強そうな瞳を真っ直ぐに見つめる。


「ごめんなさい、それは出来ないわ」


驚くように見開かれた眼を、それでも逸らさずにしっかりと見る。


「レオンハルトさんの優しさに甘えていたこと、浅慮だったこと、認めるわ。本当に申し訳ない事をしてた。貴女の言っていた事は正論よ。ーーでも、でもね?それだけは出来ない」


『譲れる恋は、本物ではないのですよ』


今なら、その意味がよく分かる。


そっと、レオンハルトさんにプレゼントされた耳飾りに触れる。


あの甘い眼差しが、私以外の誰かに向けられるのを、私は笑って見ていられない。


元の世界を懐かしんで泣いていた私を包んでくれた、あの温かい温もりが他の誰かを包んだとしたら、きっと私は耐えられない。


譲るなんてこと、出来るわけがない。


彼女の想いの強さに触れても、なお。







「ーー私は、レオンハルトさんが好きだから」


負けたくない、そう思ってしまったのだから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あまり異世界召喚って好きでは無いですが…(だって自分達の国の事を自分達で解決出来ずに他の世界から同意無しで誘拐して来るって考えるとね。異世界人にもその世界で大切な家族とか友人とか、大切にし…
[一言] アメリアちゃん可哀相、、、どんな性格かはわからんけど。
2021/01/28 07:01 退会済み
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