パーティー2・パーティー料理とお客様
ーーーーって、ここには他にも人が…!
そう思い出してパッと振り替えると、嬉しそうな顔のレイ君とリーナちゃんがいた。
「ふたりとも、なかよし!」
「そうだね、仲良しだね」
あああああ!!ちびっこの前で何てことを!!!
恥ずかしくて目を逸らすと、恐らくレオンハルトさんの笑顔にあてられたのだろう、侍女さん数名が壁に向かって悶絶している。
…恐るべしお色気スキル。
「待たせたな、少し準備に手間取って」
「みんな揃ってるかしら?」
ちょっとカオスなこの空間に、エドワードさんとエレオノーラさんがやって来た。
「「………………」」
何かを察したのか、ふっと目を伏せて見なかった振りをされたのだった。
さて、始まる前に色々ありましたが、無事パーティーは開始されました。
リーナちゃんの始めの挨拶、ちょっぴり緊張してる感じが初々しくて、でもしっかり練習通りにお話出来ていて、お姉さん思わずスマホは無いのかとポケットを探しましたよ。
まあドレスだからポケットすら無いのだけれど。
「そして本日のお料理についてですが、我が家に滞在しております、青の聖女、ルリ様より異世界のレシピを提供して頂きました。ご本人にもお手伝い頂き、ラピスラズリ家の料理人達が丹精込めて作りました。どうぞ、ご賞味下さい。そして、そのレシピの一つ、ポテトサラダですが、本日4歳となったリリアナが、皆様をもてなしたいと懸命に作ったものです。そちらもどうぞ、口に運んで頂けたらと思います」
「まあ、聖女様が?」
「リリアナ嬢が作った?まだ4歳なのに可能なのか?」
エドワードさんの案内に、会場がザワザワする。
私はともかく、リーナちゃんが作ったことは疑わないで欲しいなぁ。
「まあ!りりあなさま、すごいですね!わたしたべてみたいです」
「わたしも!わあ、とてもかわいいカップに入っていて、おいしそう!」
「ありがとうございます!ぜひ、どうぞ」
…心配する事無かったかも。
どうやら少しずつ参加し始めたお茶会でできたお友だちが興味を示してくれたようだ。
みんな美味しそうに食べているし、そんな子ども達の様子を見て、大人も水を差すような事は言うまいと、それぞれ料理に手をつけ始めた。
子ども達、グッジョブ。
「まあ、可愛らしい盛り付けね。これは…サンドイッチかしら?」
「ハムやチーズ、ジャムなど色々パンと一緒に巻かれているね。どれ、ひとつ………うん、美味しいね!」
「このジャム、何かしら?食べたことのない味だけど…」
最初に注目を浴びたのは、食…箱パンで作ったロールサンドイッチだ。
様々な具材を巻いたものを可愛く積み上げ、フルーツやお花で飾って、見た目も素敵な物になっている。
バンレイシのジャムも好評みたい。
あ、給仕役のマリアが色々聞かれてる。
「こっちのサンドイッチも変わってるわね。あら、具はお肉かしら?うん、小さくて食べやすいし、美味しいわ。この刺してある旗みたいな物も可愛いわね」
ピックで刺したプチハンバーガーも意外と受け入れてもらえたみたい。
かぶりつく、ってなると上品な貴族の皆さんには無理だろうし、ミニサイズにして良かった。
さすがにポテトフライは断念したけど。
「まあ、初めて食べるサラダだけど、美味しいわね。ふふ、不揃いなりんごが可愛らしいわ。お嬢様が作られたと言うのは本当のようね」
「そうだね、私たちのために作って下さったとは、何とも嬉しいもてなしだ。幼いながらも心優しいご令嬢のようだね」
そうなんです!そうなんですよーーーー!!
分かって下さいますか、素敵な旦那様、奥様!!!
お二人の会話を聞いて、周りの方もポテトサラダに手を伸ばしているのが分かる。
うんうん、ほらね、美味しいでしょ?
そんなお客様の様子をニコニコ見ていると、隣で笑う気配がした。
「まるで褒められた子の母親のようだな。リリアナの料理が認められて、そんなに嬉しいか?」
「い、いいじゃない別に。…少し前までは、人見知りで表情が乏しいなんて言われていたんでしょう?今日のリーナちゃんを見て、そんな事思う人、誰もいない。優しくて素敵な女の子だって認めてもらえている。それが、嬉しいんだもの」
感極まってちょっと涙目になってしまった私に、そうだな、と答えると、ポンと頭を撫でてくれた。
それがちょっと恥ずかしくて、慌てて話題を変える。
「あ、他のお料理も皆さん笑顔で召し上がってるわね。良かった」
その他に用意した馴染みのある肉料理やスープなど、テオさん達が一生懸命作っている料理はどれも好評なようだ。
さすが侯爵家のお抱え料理人の皆さんだ、味もだけど盛り付けも素晴らしい。
…大雑把な私がやらなくて良かった、とちょっとホッとしたのだった。
あ、エドワードさんやエレオノーラさん、お客様から代わる代わる挨拶されている。
招待した全員と挨拶しないといけないんだもんね、ホストは大変だ。
因みに私の所にも貴族の方々がたくさんいらっしゃったんだけど、どうやら聖女って、立場的にはかなり偉いらしく…皆さん挨拶程度ですぐに離れてくれた。
チラチラ視線は感じるし、もっと話したいオーラを出して近寄ってくる人もいるけど、そこはレオンハルトさんがさりげなく庇ってくれた。
うう…そんな所もかっこいいと思ってしまう訳ですよ。
自覚した途端、レオンハルトさんがますますかっこ良く見えて困る。
あ、でも知らない人ばかりじゃなくて、ルイスさんと一緒に参加して下さったクレアさんとも、少しだけど一緒に話すことが出来た。
ルイスさん、一生懸命私のドレス姿褒めてくれたなぁ。
お世辞と分かっていても嬉しかったよ。
クレアさんからは、気を抜くと猫背になりますよ、としっかり指摘を受けた。
はい!ピシッと頑張ります!!
それから、シトリン伯爵も奥様と一緒に挨拶に来てくれた。
案の定、天使衣装のリーナちゃんにメロメロで、かわいいを連発していた。
奥様もポテトサラダを絶賛。
二人とも褒め言葉しか出ていなかった。
それを見たエレオノーラさんが、私には厳しかったくせに…と零していたが、ジジババなんてそんなモノです。
あと、びっくりしたのが…
「ルリ様、本日はお招きありがとうございます」
「!!!ベアトリスさん!?」
スラッとした赤のドレスを纏い、ゴージャスに装った王宮料理長。
いつもの凛々しいコック姿もかっこいいけど、今日は美女オーラがすごい。
そしてその隣に並ぶ、これまた長身ダンディーな素敵な男性。
「お初にお目にかかります、青の聖女様。ベアトリスの夫で、レオナルド=ガーネットと申します。妻がお世話になっております。これからもどうぞ良くしてやって下さいね」
「あ、こちらこそ!いつも遠征食のことでお世話になってます…って、ガーネット?」
ベアトリスさんって、確か家名はルビーじゃなかったっけ?
「ああ、仕事中は旧姓でやってるの。だから今日はガーネット伯爵夫人、ベアトリス=ガーネットよ。改めまして、よろしくお願いします」
さっとレオンハルトさんの方を向く。
「…忘れていた」
もぉぉぉーーー!!
とまあ、教えてもらっていなかった事を怒ってはみたが、自分の無知さも改めて感じ、ちょっぴり落ち込んだのだった。




