真剣勝負
夕食の席でパーティーのゲームを提案した私だが、出席予定のクレアさんにネタバレもあれなので、とりあえず場所を移して説明することに。
リーナちゃんも眠い様子だったので、応接室にはエドワードさん、エレオノーラさん、レイ君、レオンハルトさんと私が集まった。
マーサさんとマリアが食後の温かいお茶を出してくれた。
今日はアップルティーのようで、口に含むとふわっと優しい香りが鼻に抜けていった。
「それで?どんなゲームをやろうと思ってるんだ?」
「はい、私たちの世界では、パーティーなんかの時に景品を賭けてこのゲームをするんです。"ビンゴゲーム"と言います」
そう言いながら、日本人ならお馴染みのあのカードを見せる。
因みに厚紙で作った私の手作りだ。
「何ですか?カードに数字が並んでいますね」
「特に規則性などはないが…。カード一枚一枚並びや数字が違うのか?どういう意味があるんだ?」
まずレイ君とレオンハルトさんがカードを手にとって疑問を投げ掛けた。
それを見てエドワードさんとエレオノーラさんもカードを手に取る。
「では、実際にやりながら説明しますね。せっかくなので、マーサさんとマリアもどうぞ」
「え、私達もですか?」
「ぜひ!カード、一枚ずつどうぞ」
戸惑う二人にもカードを押し付け、説明に入る。
「まずはカードの中央、freeと書かれたマスを、こんな風に折って下さい。破りやすくなってますから、どうぞ」
不思議そうな顔をして皆が折るのを確認して、説明を続ける。
「ここに1から80の数字が書かれたクジの入った箱を用意しました。ここから一枚ずつ紙を引いてもらいます。最初は私が引きますね。…25番です。カードに25が書いてある方はいますか?」
「あ、僕あります」
「レイ君、すごいね!じゃあ25のマスを折って」
レイ君がパキッとマスを折る。
「こんな風にクジで引かれた数字のマスを折っていきます。では一度ずつ引いてみましょうか」
本当はカラカラ回すビンゴゲーム機があると良いのだが、そんな物この世界にあるはずがないし、作ることもできないのでクジにしてみた。
まあ無かったら無かったでどうとでもなる。
「じゃあ次は僕が。…3ですね」
「37だ」
「55よ」
「28です」
そんな感じで一周すると、皆いくつか穴の空いたカードになった。
「皆さんまあまあ空いてますね。こんな風にどんどん空けていって、縦・横・斜めのいずれかの列が早く揃うのを競うゲームなんです。揃ったら、ビンゴ!と言います。よく聞いて、よく見ていないと上がれませんし、この数字出ろ!とかワクワクしながらできるんです。私のいた世界では定番のゲームなんですが、意外と熱中しちゃうんですよね。良い景品があると尚更」
「ああ、なるほど。パーティーのお礼の品を何種類か用意して、このゲームで上がった順に選んでもらうということか?」
「そうです!さすがエドワードさん!」
「なるほどねぇ…。確かに色んな品があるとパーティーの後も話題になるし、新しい試みだから興味を持ってもらえそうね」
確かに、と皆が頷く。
「では、私はあと6が出れば上がりという事か?」
「え!?レオンハルトさん、もうリーチですか!?」
レオンハルトさんのカードを見せてもらうと、確かに6が出れば横の列が揃うようになっていた。
まだ7回しか引いてないのに…すごい運だな。
「ルリ様、リーチとは?」
マーサさんの質問に皆が私の方を見る。
「あ、あと一つで揃うよ、って時はリーチ!って言うんです。別に理由はないんですけど、皆に知らせる感じですね」
へえ、と皆が納得したようなので、どんどんゲームを進めていく。
「ねえ、全然当たらないわ」
「私はたくさん空くが、なかなかリーチにならない」
「あーん!マーサ様、次30引いて下さい!」
「そんな無茶な…」
「あの皆さん、これ一応お試しのゲームなので…」
「「「ルリは黙ってて」」」
わーお、みんな真剣ね。
別に景品も無いのに熱中している。
と、その時。
「あ。…私、ビンゴです」
なんとマーサさんが一位で上がった。
「ああん、悔しいわ!」
と悔しそうだったエレオノーラさんもすぐに二位で上がり…。
「あ、ビンゴです」
「私もだ。レイモンド、引き分けだな」
エドワードさんとレイ君も上がる。
「えーと…ビンゴ、です」
マリアも上がった。
…という事は。
「…私が最下位か」
…ビンゴゲームあるあるです、最初にリーチになった人が最下位。
レオンハルトさん、持ってますね。
「いや、単純だが、意外と面白いな。くくっ、レオンのカード、あんなにリーチがあるのに、最後まで空かないとはな」
「五月蝿いです、兄上」
からかうようなエドワードさんの言葉に、ちょっぴり拗ねたようなレオンハルトさん。
うーんこの二人の兄弟っぽいやり取り、ちょっと可愛いかも。
兄弟仲が良いのって素敵よね。
小さい頃はどんな感じだったんだろう?
少し歳が離れてるし、優しいお兄ちゃんとお兄ちゃん大好きな弟だったのかな?
それとも意外とケンカばっかりだったり?
でもどちらにしろ二人とも可愛かったんだろうなぁ。
おもちゃの取り合いとかしたのかな?
いや貴族のお坊っちゃまだし、おもちゃは豊富か。
ならおやつの取り合いとか?
うーん、食べ物もふんだんにあるよねぇ。
「ルリ」
お兄ちゃんがやってるの真似して剣の稽古始めた、とかはありそうだよね。
「…おい、ルリ」
それなのに剣が重くて泣いちゃったりとかしちゃったり?
かーわーいーいー!!
「ルリ!戻って来い!」
はっ!
「あれ?呼んでました?」
「…嫌な予感がするから何を考えていたのかは聞かないが、話を戻しても良いか?」
あ、ビンゴのことね。
危ない危ない、私ったらまた想像の世界に入っちゃってたみたい。
「見ての通り、私達も楽しめたからな。きっと招待客達も喜ぶだろう」
「では!」
「ええ、是非誕生パーティーでやりましょう!あとはプレゼントよね。色んな種類を用意して、上がった人から選べるようにするのよね?」
「あ、それなんですけど………」
ビンゴが採用してもらえたのは嬉しいが、懸念もあるので、ここで相談しておく。
「ーーーーーーーーしてはどうかなと」
「ーー成る程な。ルリの考えは良く分かった」
全て言い終わると、それまで真剣な顔で聞いてくれていたエドワードさんがにっこりと笑った。
あれ?レイ君とエレオノーラさんは驚いたような表情のまま固まっている。
私変なこと言ったかしら?と不安になってレオンハルトさんを見ると、大丈夫だと微笑まれた。
「では、その意見を考慮して色々手配しよう。ルリにはカードの製作や進行など、まだまだ力を貸して欲しい事があるからな。また相談させてくれ」
そこで今夜はこのあたりで、と解散の運びとなった。




