絶対絶命
ひとしきり三人で、貴族の思惑なんかに負けないわよ!!!と盛り上がり一息つくと、紅緒ちゃんが思い出したように話し始める。
「それで話は戻るけど、リリアナちゃんの誕生会では、料理を出すだけ?瑠璃さんならなんか色々考えてそうだけど」
誕生会…正確にはパーティーなんだけど、なんかその響きだと親しみやすくなる不思議。
紅緒ちゃんて、何か良いわぁ…。
「あのね、料理もいくつか提案してるんだけど、ひとつゲームをやろうと思ってて」
「「ゲーム?」」
「うん、これ」
そう言って私はゲームで使おうと思っている物を、手持ちの袋から取り出して見せる。
「ああ、最近も何度かやりましたよ。意外と楽しいんですよね、これ」
「あたしは久しぶりだわ。これなら確かに子どもから大人まで楽しめそうね」
やった!このゲームを知っている二人からお墨付きをもらえたなら、やってみる価値ありそう!
今夜にでもエドワードさんとエレオノーラさんに相談してみよう。
「あ、お疲れ様ですルリ様。今日は何だかいつもにも増して楽しそうでしたね」
「…ベニオ様、時間が過ぎておりますが」
「お疲れ様です!オウカ様、次は講義の時間ですので、ご用意をお願いします!」
うーん、いつ見ても護衛騎士さん達が三者三様すぎて、面白い。
まあ、例によってみんな顔が良いので、並んでいると眼福である。
「陛下がお待ちです。訓練場へ参りましょう」
この人は紅緒ちゃんの護衛騎士のアルバートさん。
黒髪黒目の短髪で、ガタイも良くいかにも騎士さんって感じ。
私より少しだけ歳上らしいんだけど、寡黙であまり感情を表に出さないので、実年齢よりもっと上に見られてそう。
「オウカ様はまだお時間大丈夫ですよ!先生も聖女様方と積もる話もあるだろうからと、ゆっくりで良いとおっしゃってましたから!」
こっちの小柄な金髪碧眼の美少年は、リオくん。
黄華さんの護衛騎士で、見た目どおりのピチピチの10代。
元気いっぱいで、私にもいつも愛想良く話しかけてくれる。
「分かってる、遅くなってごめん。けど、あんなヤツ別に待たせたって…」
「ベニオ様」
「はいはい分かってるわよ!ごめんね、あたし先に行くわ。瑠璃さん、誕生会の準備頑張ってね」
そう言って紅緒ちゃんは、アルバートさんに急かされながら足早に訓練場へと向かっていった。
何か、紅緒ちゃんてよく陛下がらみで急がされてる気がする。
まあ一国の王様だしね、忙しいんだろうけど。
「では、私も失礼します。またパーティーのお話、聞かせて下さいね」
黄華さんもリオ君と一緒に講義へと向かった。
去り際にリオ君がひらひらと手を振ってくれたので、つられてへらりと笑って振り返した。
と、アルからじとりとした視線を感じる。
「…何よ」
「いえ、別に」
何よー!何か言いたいことがあるって顔してるじゃない!!
「…また無駄に愛想ふりまいて、とか思ってるんでしょ」
「おや、ルリ様も心を読むスキルを習得されたので?」
「…意地悪」
「ふっ、すみません」
私がむくれていると、苦笑いをして謝ってきた。
「それがルリ様だと分かってはいるのですが、あまりに無防備なので。男相手にそうそう愛想を振り撒いてはいけませんよ?」
でもリオ君はかなり年下だし…と言いかけたが、前回のこともあるので口をつぐむ。
「…気を付けます」
「ああ、それが良い」
素直に反省の言葉を告げると、アルのものとは違う、聞き慣れた低い声が響いた。
「レオンハルトさん!?」
「ああ、いらっしゃいましたか」
いきなりの登場に驚く私と、まるで来るのが分かっていたかのようなアル。
しかも、それでは私はこれで、とさっさと歩いて行ってしまった。
ど、どういうこと?
「サファイア殿に頼んでおいたんだ。交流会が終わる頃に迎えに行くから、そのまま私がラピスラズリ家に送っていくと。少し話をしたいと思ってな」
「話?」
「ああ、馬車で送って行く。中で話そう」
そう言うとレオンハルトさんはすっと手を差し出してきた。
…これは、手を取れってこと、だよね?
まじまじと掌を眺めていると、頭上から苦笑が落ちてきた。
「良ければ手を取ってくれるか?馬車置き場までエスコートさせて欲しい」
「!あ、ごめんなさい!その、こういうの慣れていなくて…。あの、失礼します…」
慌てて手を重ねると、優しく握られて歩き出す。
…っ、な、何か恥ずかしい。
いや、良い大人がこれくらいでと思われるかもしれないが、相手はレオンハルトさんだ。
しかもお仕事仕様、騎士団長服でかなり凛々しい装いとなっている。
そんな超美形騎士に微笑まれながら手を取られてドキドキしない女子がいるだろうか。
いやいるのかもしれないが、生憎私は平凡を絵に描いたような人間なので、平静とか無理です。
「ルリ、交流会は楽しかったか?」
「へっ!?は、はい?あ、うん、楽しかったよ!!」
急に顔を覗き込まないでぇぇぇーー!!!
驚いて変な声出ちゃったじゃない!!
そして堪えてるようだけど、肩震わせて笑ってるの分かってるんだからねーーー!!
「それで、話って?」
拗ねた私の頭をひとしきり撫でて、レオンハルトさんはまず私を馬車に乗せた後、自分も乗り込む。
パタンと扉を閉め、こちらを見つめる瞳には、先程までのからかいの色はなかった。
…あれ?私何かした?
さっきまであんなに優しそうに微笑んでたのに。
拗ねすぎて呆れた、とか?
い、いや取り敢えず話を聞かないと。
レオンハルトさんが纏う空気の変化に居住まいを正すと、徐に口を開いた。
「あまりこういう事を言うものではないと分かっているのだが…。ーーールリ、アルフレッド=サファイアとデートしたんだって?」
「………は?」
………デート?
………わ、
忘れてたぁぁぁ!!!
予期せぬ質問に一瞬ぽかんとなった私は、脳をフル回転させてこのピンチをどう乗り越えるのか考えるのであったーーー。




