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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第三章

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聖女会議4

「こんにちはー」


「いらっしゃい瑠璃さん。あら、今日も大荷物ですわねぇ」


「んん?なんかいい匂いー。今日もお土産持って来てくれたの!?」


すっかり恒例になった聖女の交流会。


今日もいつもの部屋で紅緒ちゃんと黄華さんが待っていてくれた。


二人は私とアルの大荷物を見ると、目を輝かせた。


「はい、また試作品で悪いんですけど。あ、アルありがとう。そこに置いておいてくれる?」


「はい。それでは赤と黄の聖女様、失礼致します」


運んでくれた料理を机に置いて、アルが退室する。


と言っても部屋の前で待っていてくれるんだけどね。


二人の護衛の騎士さん達も一緒だから、まあ暇ではないと思うけど、やっぱり待たせてしまって申し訳ないなぁと思う。


「それで?今度は何の試作品なんです?」


「また日本の料理?楽しみだわ!」


「ええっと、実は…」







「へえ、大変そうだけど楽しそうね!」


「そうなの!リーナちゃんの為だと思うとすごく楽しくて!それにこういうの久しぶりだし」


転移前、現役で学園祭などを楽しんでいた紅緒ちゃんは、すぐに話に乗ってくれた。


私も向こうでは毎月の誕生会や運動会、発表会などイベントをこなしていたから、久しぶりにこういう仕事ができて嬉しい。


「この食パンのサンドイッチ、久しぶりに食べたわ!中のクリーム?ジャム?すごく美味しいけど、何?」


「あ、気に入ってくれた?それ市井の青果店で見つけたの。ほら、これ。バンレイシって言うんだって」


二人に袋に入ったバンレイシを見せると、紅緒ちゃんが、まつぼっくり?と呟いた。


やっぱりそう思うよねー。


「あ、私これ知ってます。元の世界で食べたことがあります」


「え、向こうにもある物だったんですね。私、初めて見ました」


「あたしも」


「ええ、私も一度だけおーーーー」


そこで黄華さんの言葉が途切れた。


「黄華さん?」


どうしたんだろうと思って聞き返すと、にっこり笑って話してくれた。


「いえ、知り合いがペルーだったかしら?出張土産に持って来てくれて。ジャムにしても美味しいんですね。パンにとても合います」


「へえ。見た目地味だけど、サンドイッチにしちゃえば気にならないわね。それにこのプチハンバーガーも可愛い!あとポテトも。懐かしいー美味しいー!!」


そうそう、アルが取り入れてみては?と言ってくれたので、ハンバーガーをミニサイズにしたものを試作品として作ってみたのだ。


お子様も多いし、パーティーならこれくらいのサイズが良いかなと、小さめで。


因みにバンズもちゃんと作ってみましたよ。


配合はうろ覚えだったけど、一応作ったことがあったしね。


「ハンバーガー、まさかこちらで食べられるなんて思いませんでしたねぇ」


黄華さんの様子は気になったけど、すぐにいつもの様子に戻ったし、元の世界のことを思い出して感傷的になったのかもしれないので、そっとしておくことにした。


と、そんな黄華さんがぽろりと零した。


「…でも意外です。聖女だってこと隠してたくらいですから、瑠璃さんは目立つの苦手なのかと。貴族の集まるパーティーに出るなんて、ずいぶん思い切りましたのね?」


私達ですら断り続けてるのに、という言葉に、私は固まったのだった…。







かくかくしかじか。


「…ははあ、なるほどです。瑠璃さんの弱点はリリアナちゃんでしたか」


「瑠璃さんて、チョロ…い、いや、優しいから、ね!断りきれなかったんだよね!?」


紅緒ちゃん…自分でもチョロいって知ってるから、言い直さなくても良いのよ?


黄華さんの発言には否定できないし…。


テーブルさん、今日も私のほっぺたと仲良くしようね。


ああ…冷たくて気持ちいいです…。


「何項垂れてるんですか。決まってしまったものは仕方ありません。リリアナちゃんを喜ばせてあげて下さい。本当は私達も行けると良かったのかもしれませんが…」


「え、何それ。ラピスラズリ家ならあたしも行きたい!」


珍しく?黄華さんが真剣な表情で言った言葉に、紅緒ちゃんも参加したいと言ってくれた。


確かに二人も一緒なら心強い、けど。


「いえ紅緒ちゃん、今回は止めた方が良いですわ。今まで表に出なかった私達が揃って出席などしたら、あまり良くないことになりますわ」


「…ですよね」


そう、いきなり三人揃って現れたら、ラピスラズリ家に何かあるのでは!?と邪推される可能性がある。


微妙な貴族社会の勢力バランスとかもあるだろうし、ね。


「ああ、そう言われれば確かに。はぁ、ホントこっちの世界ってめんどくさいのね。残念だけどお宅訪問はお預けね。美味しいパーティー料理も」


紅緒ちゃんも納得したらしく、つまらなそうではあるが諦めた様子だ。


「…二人も、パーティーや公共の場に出ることはしていないんですよね。どうしてですか?」


「あたしはそういう堅苦しいのは嫌いだもの。聖女様らしく振る舞う自信もないし。ラピスラズリ家なら、聞いた感じわりと緩そうだし?いいかなーって思ったんだけど」


「私も、傅かれたりするのはちょっと。騎士の皆さん、特に第三騎士団の皆さんはわりかしそういうところ、気楽なんですけどねぇ」


そうか、二人もあまり聖女様待遇を望んでいるわけではないのか。


そう言われてみると、二人ともたくさんの取り巻きを連れて歩いたり、王宮で贅沢してる雰囲気ないもんね。


そういうのを望んでも良いんですよ?と私も一度アルに言われたことがある。


でもねぇ…贅沢三昧の生活良いなーとか思っていても、実際自分の身の上に降りかかると、躊躇ってしまうという…。


結局、庶民気質なんですよ。


平凡万歳。


「ですが、いつかそうした場に出なくてはいけない時は来るでしょうね。聖女として生きると決め、国に守られている私達には、その義務があります。そして、その時はそう遠くないと思いますよ」


黄華さんの言葉に、私達ははっとする。


「…そうね。アイツは何も言わないけど、宰相様達に色々言われてるのは、知ってる」


「ええ。何だかんだ言っても、陛下は優しい方です。今は転移してそう時が経っていませんから、この世界に慣れようとしている私達を気遣う声も多いです。ですが、聖女という立場はとても利用価値のあるものです。国を統べる者ならば、利用したいと考えるのは当然でしょうね」


「…そう、ですね」


沈黙が落ちる。


私のことにしても、きっとエドワードさんやエレオノーラさん、レオンハルトさん達が守ってくれていたのだろう。


ひょっとしたら、すでにそういう話が出ていて、少しでも近くにいられる所から始めようと、今回誘ってくれたのかもしれない。


ラピスラズリ家でのパーティーなら、確かに私も安心できる。


きっと、知らない所でたくさん気遣われているんだろうな…。


「…むかつく」


「え?」


ポツリと零れた声に、はっと顔を上げる。


「何よ、結局アイツに守られてるってワケ?あーーー腹立つ!あたしはそんなに弱くないっつーーーの!!!何よ、パーティー?夜会?出てやろうじゃないの!望むところよ!!」


ふーっふーっ、と息巻く紅緒ちゃんに、私は唖然とする。


「ふっ、あははは」


すると、堪えきれなかった、という様子で黄華さんが笑い出した。


何笑ってんのよ!と紅緒ちゃんは怒ったが、何だか私もあれこれ考えていたのが急に可笑しくなってきて、つられて笑ってしまった。


「瑠璃さんまで!ひどい!!」


「ご、ごめんなさい。でも、何だか元気出ちゃった。紅緒ちゃん、ありがとう」


「本当、紅緒ちゃんは可愛いくて、強いですね。これは私達大人組も負けてはいられませんね?」


そう言って私と黄華さんは思い切り笑い合い、腑に落ちない顔をする紅緒ちゃんを宥めるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは、、、パーティーでトラブル発生するフラグ立ちましたか?w
2021/01/07 06:43 退会済み
管理
[一言] 3人の仲が良いことはとても良い事だと思います。
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