お買い物
明けましておめでとうございます。
毎日とはいきませんが、2・3日に一度は更新していけるようにしたいと思っています。
今年も瑠璃達の幸せ目指して頑張ります!
今年もよろしくお願いします(*^^*)
そう言えば今朝何気なくアルと市井に行くことをレイ君とリーナちゃんに伝えた時、レイ君の反応がおかしかった。
リーナちゃんは無邪気にいいなあ!と言っていたけれど…。
ひょっとして、レイ君も同じこと思ったのかな。
私ってば、7歳児よりも分かってなかったって事ですかね…。
…考えれば考える程良くない方向に行きそうだし、答えも出ないから、とりあえず後回しにして買い物を再開しよう!
仕事では、難しい問題ほど絶対後回しにするな!!って先輩方に言われてたんだけどね…。
ごめんなさい先輩、こればっかりは私の恋愛偏差値では無理なんです…。
ちゃんと!後からちゃんとしますから!!!
「ルリ様、青果店に着きましたよ。隣は精肉店、その向かいがパン屋ですね」
結局ちゃんとやらない人が良く言う台詞を心の中で唱えている内に、目的地に着いていたようだ。
うん。
頭を切り替えて、ここからは誕生パーティーの事を考えよう!
決して逃げた訳ではない!!
今やるべき事を優先させただけです!!!
「ルリ様?」
「ご、ごめん何でもない。…わあ!美味しそうな果物がたくさんあるね。野菜も新鮮!種類も豊富で迷っちゃいそう」
完全な言い訳を頭の隅に追いやり、売られている野菜や果物に目を向けると、思っていた以上に品揃えが良くて驚く。
それもほとんどが元の世界と同じものだ。
見たことのない物もあったが、特に変わった見た目の物はなく、もしかしたら私が知らないだけで、元の世界にも存在していた物かもしれない。
「おや、あまり見ない顔だね。こちらに越して来たばかりの新婚さんかな?」
「え?あ、いえ、私達はそういう関係ではなく…」
「いえ、僕達は兄妹です。観光で王都に来ていて。お店を色々見て回っているところなんです」
お店のおばさんの質問に、咄嗟に上手く答えられない私とは違い、アルは流れるように偽設定を口にした。
さ、さすが…。
でも、本当にそういう風に見られちゃうのね…。
まあ歳の近い男女が並んで歩いてたら、私だって普通にカップルかなって思ってしまうし、仕方がないと言えば仕方がない。
「おや、そうだったのかい?そりゃ悪かったね。お詫びに試食、食べていっておくれ」
そんなに悪いことも言っていないのに、気の良いおばさんはいくつか果物を切ったものを出してくれた。
オレンジやベリー系、キウイやチェリーなど、お菓子に使いやすい果物が多く、味も想像していたものに近い。
これなら考えやすいわ、と思っていたら、見慣れない物が目に入った。
ゴツゴツしていて、黄緑色をした松ぼっくりみたいな物だ。
…これも果物?
「おばさん、それは?」
「これかい?バンレイシだよ。最近出始めたものでね。まだあまり認知されてはいないが、美味しいんだよ」
「頂いても良いですか?」
もちろん、と笑ったおばさんは手際よくカットして食べ方を教えてくれた。
スプーンですくって一口食べてみると、すぐに甘さが口に広がった。
「甘い!美味しい!!」
「そうだろう?でも、見た目が地味なせいか、なかなか目に留まらないみたいでねぇ…。」
確かに見た目は松ぼっくりだし、色的にも華やかさに欠ける。
でも見た目からは想像つかない、仄かな酸味のある甘さは濃厚で、クリームやジャムにしても良さそうだ。
あ…そうだ!
「うん、私もこれを皆さんに食べてもらいたいです。実は冬に知り合いの誕生パーティーを開く予定で。是非このフルーツを使ったお菓子を出したいと思うのですが…ご協力頂けますか?」
「店の方、喜んでいましたね」
「上手くいくかは分からないけどね。でも、多分美味しくなると思うんだ」
お試し用に少し買って、上手くいきそうなら、またパーティーの時にたくさん注文させてもらえるようお願いしてきた。
そんなにたくさん!?と驚かれたものの、早めに連絡をくれれば量を確保してくれると約束してくれた。
「さて、次はお肉屋さんかな。どんな物があるのか、楽しみ!」
ベーコンやソーセージ、ハムなどがあるのは確認済みだから、恐らくこちらも期待通りなはず。
お店の扉を開くと、日本で良く見るようなガラス張りのカウンターにお肉が並べられている…ように見えるが、実際は魔道具と呼ばれる、魔力で保冷機能を備えた台とケースらしく、ケースの中のお肉は綺麗な色味で新鮮さが分かる。
見知った形や色のお肉やハム、ベーコンなどが揃っており、こちらも恐らく元の世界のものとそう変わらない味だと思う。
今まで食べてきた物もだいたい同じ味だったしね。
ただ…何と言うか、ある一角にあるお肉の塊が非常に気になる…。
牛や豚、鶏とは違って色が黒っぽかったり、黄色を帯びていたり、中には真っ赤なものも…。
これは一体…。
ちらりとアルの方を見ると、ああ、と気付いてくれたようで説明してくれた。
「この一角は、魔物の肉ですよ。ほら、ブラックベアー、サンダーバードなど、魔物の名前が書かれているでしょう?」
「ま、魔物!?魔物って食べられるの!!?」
「そうですね、そこまで味が良いわけではないので貴族はあまり口にしませんが、値段が手頃なので平民には人気があるんですよ」
そうなんだ…あっちの世界でもカエルとか虫とか食べる人もいるしね…。
まあ向こうには魔物なんていないからカルチャーショックだけど、この世界の人からすれば普通のことなんだと受け入れよう。
…でも、一応調べてみよう。
「鑑定」
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*サンダーバードのモモ肉*
Eランク魔物、サンダーバードのモモ肉。
食用可。パサつくが、割と美味。
鶏肉風味で、雷の魔力により少しピリッとした刺激がある。
効果:HP回復微弱
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ホントだ…食用可って書いてある…。
鶏肉風味で刺激があるのか。
"サンダー"だもんね、雷の魔力を帯びていても不思議はない。
「…ちょっと食べてみたいかも」
「おや、ルリ様は抵抗ないんですね。他のお二人は断固拒否したらしいですよ」
他の二人、とは紅緒ちゃんと黄華さんのことだろう。
話を聞くと、どうやら討伐に出た際、まあまあ美味しい魔物を倒したので休憩中に食べようという話になったのだが、二人は無理!!!と拒否したらしい。
うーん、まあ日本での生活を考えると魔物食べようなんて思わないもんね…。
それが普通の反応だと思うよ。
私も獲れたての明らかに魔物!って感じのグロテスクなものなら即座に拒否するだろう。
でも、今目の前にあるのは、色こそ見慣れたものではないが、形状は他のお肉とそれほど変わらない、きちんと精肉されたもの。
ならちょっとだけ味見してみようかな?と思ったのだ。
「試食なさいますか?サンダーバードなら、ちょうど唐揚げが揚がったところです」
「良いんですか?ぜひ一口頂きたいです!」
割と美味って書いてあったし、何事も経験よね!




