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*番外編* 初めてのクリスマス

本編は秋で止まっていますが、あまり気にせずに…。

近い未来の話ということにして下さい。

「え、この世界ってクリスマスないの?」


「ああ。その、くり…すます?という物は聞いたことがない」


「りーなも、しらない」


「僕もです。何をする日なのですか?」






こちらの世界に来て、初めての冬。


暦を日本と同じように一年を12の月に分けているこの国は、季節もほぼ日本と同じように巡る。


今月は丁度12月に当たる光月(と言うらしい)。


12月と言ったらクリスマスよね!


と思って、ラピスラズリ家でレオンハルトさん、リーナちゃん、レイ君とお茶を楽しんでいる時に聞いてみたのだが、結果は冒頭となった。


まあでも、本当はキリスト教の行事だもんね…異世界にあるわけがない。


でも、クリスマスについて知らなくてもサンタさんが来るのは嬉しいはず。


「あのね、サンタクロースっていう赤い服を着たおじいさんが、クリスマスの日にトナカイが引くソリに乗って、良い子が寝てる間にそっと枕元にプレゼントを持って来てくれるのよ」


「あかいふくきたおじいさん…」


「…不法侵入ではありませんか?」


「雪が積もっていなかったら、ソリは動かせないのではないか?」


「……あ、うん、話だけ聞くとおかしい事だらけだよね…」


ここは簡単紙芝居の出番ですね!







「…そしてサンタさんは枕元にプレゼントを置くと、優しく微笑んで次のプレゼントを待つ良い子の家へと向かったのです。おしまい」


「さんたさん!すてき!!りーなのところにもくるかな!?」


「翌朝目覚めたらプレゼントがあるなんて、きっと喜ぶでしょうね。ルリ様の世界には素敵なイベントがあるのですね」


「成る程。これは子ども達が喜ぶだろうな」


良かった…絵と物語の力は偉大だ。


私の説明で怪訝な顔をしていた三人も、それぞれ期待や納得の表情に変わっていた。


リーナちゃん、サンタさんが来てくれるとかなり期待してるみたいだし、これはエドワードさんとエレオノーラさんにも言わなくちゃな…。


パパ・ママサンタの出番だね!







「…と言うわけで、リーナちゃんはサンタさんが来てくれるのではと期待しています。レイ君は…分かっているような気もしますが、ひょっとして?とちょっぴり期待しているのではないかと。ここは是非お二人にサンタさんになって頂きたいなと!」


その夜、リーナちゃんとレイ君が寝室に入った後、レオンハルトさんと一緒にエドワードさんとエレオノーラさんにクリスマスの話をした。


もちろん、先程の紙芝居も読んだ。


イメージ、大事。


「ははあ。子どもの夢と言うやつだな。面白そうじゃないか」


「そうね。レイモンドなんて普段は子どもらしく無いけど、どんな反応するのか楽しみだわ」







と言う訳でクリスマス大作戦が始まった。


…の前に、こっそり朝食の後、エレオノーラさんのいないところで、エドワードさんに耳打ちをする。


「ちょっと耳、貸してください」


「?どうした、ルリ」


「あのですね、クリスマスなんですけど、実は私の国では恋人達の重要なイベントでもあるんです。プレゼントを贈ったり、お洒落をしてご馳走を食べたり。どうですか?特別な日に、特別なプレゼントなんて」


恋人はサンタクロースってやつですね!


「ほう、それは興味深いな。考えておくよ。ありがとう、ルリ」


良いことを聞いた、と頬を緩ませたエドワードさんとはここで別れ、リーナちゃんの元へ。


「リーナちゃん、何してるの?」


「るりせんせい!あのね、さんたさんに、おてがみかいてるの。るりせんせいのくにでは、おてがみをかくんだったよね?」


パッと顔を上げたリーナちゃんの手元には、まだぎこちない文字が並んだ、一生懸命書いたであろう便箋があった。


「すごい、ずいぶん上手になったね。サンタさん、きっと読んでくれるよ」


うん!と元気に返事をしたリーナちゃんは、かなりクリスマスを楽しみにしているようで、サンタさんが出てくる紙芝居を読んでほしいとねだる日が多かった。







そして、クリスマス・イブ。


一日中そわそわしていたリーナちゃんと、何でもない顔をしながらもチラチラと外を気にするレイ君の姿に、大人組はほっこりさせられたものだ。


因みに翌日が公休日ということもあって、レオンハルトさんも泊まりに来てくれた。


翌朝のリーナちゃんとレイ君の反応が見たいんだって。


何て言うか、レオンハルトさんて意外と親バカになりそうだよね。


甥・姪でさえこの可愛がり様なんだから、自分の子どもができたら猫可愛がりしそう。


…ま、まあそれは置いといて!


「リーナちゃん、そろそろ寝る時間だよ。レイ君も」


「うん!ね、さんたさん、くるかな!?」


「リーナ、明日の朝のお楽しみだよ。早く寝ないと」


「どきどきして、ねむれないかもー!」


うーん、元の世界(あっち)でもこの世界(こっち)でも、だいたい子どもって同じ反応するのね。


寝ないと来てくれないんだから、早く寝よう!とか言ってるレイ君、可愛いんですけど。


私は知ってますよ、レイ君もちゃんとサンタさんへのお手紙を書いていた事。


超期待してるじゃないですか!!


「さあ、リリアナもレイモンドも、寝室へ行こう。明日、どんなプレゼントが届いたか教えてくれるか?」


「うん!」


「勿論です」


レオンハルトさんの言葉に、おやすみなさい、と挨拶をして二人は寝室へと向かった。


さーて、二人は何時くらいに眠れるかな?


「きっと、楽しみでなかなか眠れないかもしれないね」


「そうかもな。まあ、この先は二人のサンタに任せよう」


そうだね、と私達は微笑み合った。







「…もう寝たか?」


「はい、リリアナお嬢様は興奮していらっしゃいましたが、割とすぐ。レイモンド様はいつもよりかなり遅くに寝付かれたようです」


「いよいよ私達の出番ね!ドキドキするわ~」


マリアの言葉に、エドワードさんとエレオノーラさんが準備をする。


手紙のおかげで、ばっちり欲しい物はチェック済みのようだ。


クリスマスって子どももドキドキだけど、大人も任務が無事バレずに遂行できるかドキドキするらしい。


まあ、私はやったことないから分からないけどね!


「じゃあ、行ってくる!」


「頑張って下さい!!」


小声で言葉を掛けると、お二人は物音をたてないように、忍び足でまずはレイ君の部屋に入っていった。


…侯爵ご夫妻も、日本の一般庶民と同じことするのね。


異世界とは言え、皆同じらしい。


暫くして出てくると、親指を立ててエドワードさんがウインクしてきた。


「…兄上、楽しそうだな」


「…そうね」


お茶目なこの夫婦は、子どもにも負けずクリスマスを楽しんでいるようだ。


そしてリーナちゃんの部屋からも同じようにそっと出てきて、扉をパタンと閉めた所で息を吐いた。


「ふう、これでバッチリだな!」


「明日の朝が楽しみね!」







そのまま四人で応接室に戻ると、満足そうにお二人は笑い合った。


うーん、まさかこれ程本気でやってくれるとは…。


貴族だし、「上手くやれよ」とか言ってセバスさんやマーサさんに任せてもおかしくないのに。


まぁ、そんなところがこの二人の良いところなんだけど、ね。


「さて、ではもうひとつ、やり遂げなくてはな」


「?まだ何かあるの、エド」


不思議そうに首を傾げたエレオノーラさんの前に、エドワードさんがスッと綺麗に包装された小箱を差し出した。


「ルリに聞いたんだ。クリスマスは、恋人達の特別な日でもある、って。私達は夫婦だが、いつまでも君に恋していることに変わりはないからね。受け取ってくれるかい?」


優しく微笑んで甘い台詞を紡ぐエドワードさんに、エレオノーラさんの目が見開かれる。


「…まさか、私にもサンタさんが来るなんて。びっくりしたけれど、嬉しいわ。私も、いつまでも愛してる」


嬉しそうに小箱を受け取ったエレオノーラさんの目には、うっすらと涙が滲んでいた。


「…ルリ」


そこでレオンハルトさんにくいと袖を引かれ、二人の邪魔にならないよう、静かに部屋を出た。







「…まさか私達のいる前で渡すなんて」


まだ顔が赤い気がする。


そりゃそうだ、あんな甘いシーン、間近で見せつけられたら。


「相変わらずだな。まあ、仲が良いのは良いことだが」


そう溜め息をつくレオンハルトさんと一緒に、上着を羽織って庭園へと出た。


「やっぱり、雪!」


そう、今夜は降るらしいと聞いていたので、私も楽しみにしていた。


ホワイトクリスマスなんて、憧れよね。


「そう言えば、あの二人の手紙には、何が欲しいと書かれていたんだ?」


「ふふ、知りたい?」


あのねーーーー


『おうちのみんなと、るりせんせいと、いつまでもいっしょにいたいです。あと、あたらしいふぉるてのがくふも、たくさんれんしゅうするので、ぷれぜんとしてください』


『父上や母上、リーナやレオン叔父上、ルリ様や使用人の皆が、いつまでも幸せでいられますように。…それと、新しい歴史書も。外国のことをもっと勉強したいです』







「あの二人らしいな」


「ね、可愛いでしょう?素敵なプレゼント、きっと喜んでくれるよね」


「そうだな。ーールリ、俺からだ。受け取って欲しい」


そう言うと、突然レオンハルトさんはポケットから小箱を取り出し、私の前に差し出した。


「…え?」


「俺も、兄上から聞いた。()()恋人ではないが、好きな異性に贈っても問題ないのだろう?喜んでもらえると良いのだが」


「~~~っ!不意打ちなんて、ずるいです!」


「兄上に見せつけられてはな。それと敬語、戻ってるぞ」


その甘く細められた瞳に、私は小声で「…ありがとう」と呟いて小箱を受け取ることしか出来なかった。






それからしばらく。


貴族の間でクリスマスの話題が上り、来年は我が家でも!という声があちらこちらのお茶会や夜会で聞かれた。


その発信源は、真新しいラピスラズリの耳飾りをつけて幸せそうに語る、ラピスラズリ侯爵夫人だったのだとか。






*I wish you a Merry Christmas*

仕事も落ち着いてきたので、第三章は来週あたりから始めたいと思います。

また瑠璃達をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] メリークリスマス! サンタさん、いいですなあ(*´∀`*) 子供に夢を与えるのは良いことです。 [気になる点] シーラさんがサンタになるかと思ったらそんなことなかった。 瑠璃が寝ているとこ…
[一言]  なんて酷いことを…独身者にとってはひたすら寒くて沈鬱な日なのに…ルイス君が可哀想だろう!(笑)
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