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*番外編*名前

せっかくのクリスマスなので、短編を書きたくなりました!(今日の話はクリスマス関係ないです)

今日と明日投稿します。

「そう言えば、実はずっと気になってたんですけど、この国の家名って…」


「ああ、宝石の名前のことですか?」






ある穏やかな秋の日、私たちはラピスラズリ家の庭園でプチお茶会を楽しんでいた。


メンバーはエレオノーラさん、レオンハルトさん、レイ君、リーナちゃん、そして私の5人だ。


因みにエドワードさんはお仕事。


「私だけ仲間外れなんてずるい!!!ルリ、絶対新作の菓子は残しといてくれよ!!!」


と名残惜しそうに出ていかれた。


…侯爵様相手に失礼な気もするけど、可哀想なのでお菓子はたくさん残してあげようと思う。


と、話は逸れてしまったが、家名が宝石と関係があるのだろうかと秘かに気になっていたのを思い出し、聞いてみる事にしたのだ。


レイ君がすぐに察してくれたので助かる。


「あ、やっぱりこの世界にもある宝石なんだね。どうして宝石の名前を?治めている領地でよく採れるとか、そういうことなんですか?」


「そうね、特産品であることは間違いないわ。けれど、それとは違う意味でも重要な宝石なのよ」


エレオノーラさんがひとつ息をつくと、すっとその綺麗に整えられた左手をかざす。


その薬指には、小振りだが深い海のような色合いの宝石が加工された、上品な細工の指輪が嵌められていた。


「プロポーズする際に男性から女性に渡す宝石でもあるの。エドも、私にラピスラズリの指輪をくれたわ」


「ええっ!?何ですかそれ素敵!!!」


思わぬ情報に目が輝く。


いくらアラサーとは言え立派な女子、ロマンチックな話は大好きです!


どうやらこの国には、これからその名を名乗って下さい、という意味合いで家名の宝石を女性に贈る習わしがあるようだ。


うーん、そりゃあ女性なら憧れるに違いない。


きっとエドワードさんならスマートに渡したんだろうなぁ。


「母上、話が若干逸れてしまっていますよ。ルリ様、家名に宝石が使われるようになったのは、元々この国の創世記によるものなんです」


「あら、ごめんなさい。そうそう、どうして宝石の名前が使われるようになったか、よね」


レイ君曰く、この国の初代国王は女神様に認められた勇者だった。


そして魔王を倒すためにたくさんの宝石の化身を仲間として国王の側に付かせたのだとか。


その末裔達が今の貴族…という、よくラノベの世界にありそうなものだった。


「なるほど…じゃあエドワードさんやレオンハルトさんのご先祖様はラピスラズリの化身だったってことですね」


「そういう事になるな。創世記によると、我が祖先は穏やかで冷静な、国王を善く導く助言者のような立場の方だったらしい」


レオンハルトさんがご先祖様について、そう教えてくれた。


なるほど…たしか、ラピスラズリは幸運を運び、知恵を授ける石だった気がする。


きっとその石の持つ力に相応しい人だったのだろう。


「確かにラピスラズリ家の皆さんにピッタリですよね。みなさん良い人ばかりですし、話もちゃんと聞いてくれて、ちゃんと助言も下さいますもの!」


今まで受けてきた親切を思い浮かべると、自然とそう口から言葉が出てきた。


「るりせんせいも、だよ?」


「え?」


と、ぽつりとリーナちゃんから声が上がる。


「せんせいも、わたしのはなし、ちゃんときいてくれるし、いろんなことおしえてくれる。だから、いっしょだなっておもったの」


「…ありがとう、リーナちゃん」


思いもよらず褒められ、ちょっぴり照れてしまう。


うーんリーナちゃんの天使っぷり、以前にも増してませんか?


お姉さん、メロメロです。


「あ、そう言えば」


前から奇遇だなと思っていたのをふと思い出したので、せっかくの機会だし、伝えてみる事にした。


「私の名前、瑠璃って、実はラピスラズリのことなんです。私が住んでいた国ではそう呼ばれていて。だから、私がこの屋敷に召喚されたのも、すごく素敵な偶然だったんだな、って。シーラさんに感謝しないといけないですね。皆さんに本当に良くして頂いて、私すごく幸せです!」


「ルリ…」


「ルリ様…」


感謝の気持ちを込めてそう伝えたは良いが、何だか恥ずかしくなってきてしまった。


「あ、えっと、お茶!お茶とお菓子のお代わり取ってきますね!!ちょっと待ってて下さい!」


誤魔化すように早口でそう言うと、皆の反応を待たずに逃げ出すことにした。


あああーーーっ!!恥ずかしいこと言っちゃったかも!?







ルリが逃げた後のお茶の席。


まず口を開いたのはエレオノーラだった。


「貴方達、聞いた?」


「はい、母上」


それにしっかりと頷いて答えたのは、レイモンドだ。


「ルリってば………もぉ可愛いんだからーーーっ!!!あんな笑顔であんな可愛い事言ったりなんかして、みんなメロメロになっちゃうじゃない!?」


「るりせんせいは、いつもかわいいよ?」


「うん、そうだな、リーナ。ところで叔父上」


妹に優しく微笑んだレイモンドは、瑠璃の笑顔の可愛さに固まっていたレオンハルトに視線を向ける。


そして早口でこう宣った。


「あんなのほっといて大丈夫なんですか?余裕かましてると他の虫がわんさか湧いて出てきますよ?って言うか早く極上のラピスラズリ用意してルリ様に結婚申し込んで一緒にこの屋敷で暮らしたらどうですか、叔父上!」


「…考えておく」







そんな会話がなされていたとは露知らず、私が席に戻る頃には、和やかなお茶会が再開されたのだった。


レオンハルト「……と言っていたぞ」

シーラ「るり先生マジ天使っ……!」


っていう後日談があったかもです。

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