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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第二章

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再会

「瑠璃さんただいま!!」


「何とか怪我なく、戻れましたわ」


「お帰りなさい!二人とも、無事で良かった」





今日は紅緒ちゃんと黄華さんの初陣…と言うと仰々しいが、初めて日帰りの魔物討伐に出た日だ。


私達が召喚されてから魔物の数も落ち着いたし、それ程強い魔物はいないと聞いていた場所だったが、やはり心配だった。


訓練では魔物の相手なんてしたことがないのだから、()()があっても不思議ではない。


それでもしもの時の為に、癒しの力を持つ私が呼ばれたのだ。


もちろんそれだけじゃなくて、ただ心配だったから、という理由もある。


「瑠璃さんが作ってくれた缶詰とパックの昼食、すっごく美味しかったわ!食べると回復までするし、ホントすごい!!」


「騎士さん達なんて泣きながら食べていましたよ。瑠璃さんのこと、女神様だ…!なんて言ってる人も」


「えぇ…それはちょっと……」


黄華さんの言葉に後退りしてたじろぐと、背中が誰かに当たってしまった。


「あ、ごめ…」


「聖女様方お揃いで、仲のよろしい事ですね」


振り向くと、ウィルさんだった。


「良い事じゃないか」


レオンハルトさんも一緒だ。


ぶつかった際、さりげなく両肩に置かれた手を振り払うようにして、間に入ってきた。


「お二人も、お帰りなさい。ご無事で何よりです」


「おや、私の事まで気遣って頂かなくてよろしいのですよ?」


「またお前は…」


うーんウィルさんと会うのはあの日以来だけど、やっぱりどことなくトゲがある気がする。


でも苦手だからって避けてても仕方ないしね。


「そんなこと言わないで下さい。国を守る為に戦ってくれている騎士さん達です、皆に労いの気持ちを持つのは当然の事ですよ?」


これは本音。


「まあ、それにあたし達の事も守ってくれたしね。ありがとう」


「そうですね、事前に色々注意して下さったので、避けられた危険もありました。ありがとうございました」


私に続いて紅緒ちゃんと黄華さんがそう伝えると、ウィルさんは居心地の悪そうな顔をして黙ってしまった。


…おや?照れてる?


「良かったわね、素直じゃないアンタのこと、ちゃんと見ててくれる聖女様達で。さあ、みんな今日はお疲れ様!ご馳走たくさん作ったから、遠慮なく食べて!聖女様方も遠慮せずどうぞ」


一緒についてくれていたベアトリスさんがそう告げると、騎士の皆は我先にと料理に群がった。


紅緒ちゃんと黄華さんもポカンとしている。


うーん、さすがの食欲。


一応私も何品か作ったのだが、少しでも量を増やせて良かったのだろう。


因みに二人の分は別に用意されていた。


あの集団の中に取りに行け、とはさすがに言えないよね…。


「全く…聖女様達も一緒なのだから、もう少し節度というものをだな…」


レオンハルトさんも呆れ顔だが、止める気配がないので、恐らく騎士さん達を労っているのだろう。


因みに陛下も討伐には参加していたのだが、「俺がいない方が気楽に楽しめるだろう」と言ってさっさと自室に戻ってしまったらしい。


「あいつ、変な所で気い遣いなのよね」


「まあまあ、後から瑠璃さんのお料理、運んであげてはいかがですか?」


何であたしが!!と紅緒ちゃんと黄華さんが言い合いを始めた。


また…と思いながら宥めていると、ウィルさんが思い出したように口を開いた。


「レオン、そろそろいらっしゃるのではないか?」


「ああ、もうこちらに向かっているはずだ。…ああ、来たぞ」


誰が?と思いながら聞いていると、黒を基調としたローブに身を包んだ人物が現れた。


フードから綺麗な金髪が零れており、小柄なこともあって女性なのだろうと思う。


女性は私達のところまで来ると、一度礼を執ってゆっくりとフードを取った。


「あれ…?」


「お初にお目にかかります、聖女様方。アレキサンドライト国、魔術師団団長のシーラ=アレキサンドライトと申します」


優しく微笑んだ彼女には、見覚えがあった。


「あ。そうだ、王宮の庭園で会った人だ」


ぽろりと零した言葉に、その場の全員の視線が私に向いた。


「ルリ…何だって?」


「あ、いえ、以前王宮でお会いして、少しだけお話したんです。貴族のご令嬢かなーと思っていたんですが、まさか魔術師団の団長さんだなんて…」


と、レオンハルトさんがもの凄い勢いでシーラさんの肩を掴んだ。


「やだ、バレちゃった」


すると、てへ、という音が聞こえそうな表情を浮かべた。


…何だかお茶目な人だ。






レオンハルトさんとシーラさんは距離をとって、二人でコソコソとあーでもない、こーでもないと話し出した。


うーん…この二人も絵になる。


片や騎士服の長身美形、片や金髪の守ってあげたくなる系美人。


…物語に出てくる騎士とお姫様って感じ?


レオンハルトさん、女性は苦手って聞いてたけど、シーラさんとは仲良さそうだし…。


もやっ…


ん?


何だ今の"もやっ"は?


「なーんか怪しいわね、あの二人」


「どういうご関係でしょうか?」


「紅緒ちゃん、黄華さん。うーん…知り合い、っぽいですよね」


何となく胸が苦しいのに、私はその時気付かないふりをした。






「おい、シーラ。どういうことだ?」


「やだレオン、落ち着いて?痛い痛い、肩痛いから。」


「お前…勝手に会いに行ったのか!?」


「だってーなかなか会わせてくれないから、素性隠して会いに行っちゃえ!って…。ちょ、痛いわ、さっきより力強くなってるから」


「余計なこと話してないだろうな!?」


「ちょっと挨拶しただけよ。ねぇ、それより良いの?この状況。ルリちゃん怪訝そうに見てるわよ?」


そこでレオンハルトはぱっと手を離し、ルリの方へと足早に向かって行った。


「あー痛かった。でもルリちゃん、私の事覚えててくれたのね」


うふっ、とシーラは嬉しそうに笑ってレオンハルトの後を追いかけた。






話がついたのか二人が戻って来たので、改めて挨拶することになった。


「改めまして。…私が貴女方をこの世界に召喚しました、魔術師団の団長です」


ドクン…。


あ、そうだ。


魔術師団の団長さんってことは、そうだよね。


ーーーー私達を、喚んだひと。


シーラさんに目を向けると、まるでどんな文句や苦情も受け付けます、というような穏やかな顔でじっと佇んでいた。


多分、少し前だったら心を乱していたかもしれない。


でも、今は違う。


「…先日は何も知らずに失礼しました。これから色々と教えて頂けたらと思います。宜しくお願いします」


「…まあ、色々思うことはあるけど、これから討伐で魔術師さんに助けられることがあるだろうし、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします。私もぜひ、魔法についてご教授頂きたいですわ」


少しの間の後、私がそう挨拶すると、紅緒ちゃんや黄華さんもそれに倣った。


そう返されるとは思わなかったのか、少しだけ驚いたような顔をした後、シーラさんも笑顔で「喜んで」と言ってくれた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そうか、ウィルが瑠璃たちにイジワルなことを言ったのは対シーラ対策のためだったのか。先にシーラに出会ったら心穏やかになれなかったですしね。なかなかやりますな。 [気になる点] シーラさんまだ…
[一言]  ギルティィイイ(てへ、じゃねーよ)ッ(怨)
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