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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第二章

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悩みの解決と継続

クレアさんと話した日の夜、早速エドワードさんとエレオノーラさんにも相談してみた。


二人とも話を最後まで聞いてくれて、私が決めた事なら応援してくれると言ってくれた。


そしてもう一つ、気になっていた事についても話してみた。


それは、私の家庭教師という立場だ。


確かに私がこの世界に来た当初は、リーナちゃんが誰かに教わることが難しく、懐いた私に白羽の矢が立ったのは分かる。


でも、今は違う。


私がいなくても人と関わることに慣れてきているし、学びたいという意欲もある。


これから少しずつお茶会などにも顔を出し、貴族のお友達も作っていこうとしている。


けれど私にはお茶会に必要なマナーを教えることは出来ないし、この国の歴史や常識もまだよく知らない。


そんな私が家庭教師という立場に置かれたままなのは、おかしいと思う。


最悪、クビだって有り得ると覚悟していたのだが。


「まあ、家庭教師という枠に囚われなくても良いのではないか?」


「そうよ。貴女が気に入ったから誘ったというだけだもの。何ならお友達枠としてここで暮らしてくれても良いのよ?」


…何だそんな事か、と笑われてしまった。


とりあえず、やりたい事はやれば良いし、このままリーナちゃんと過ごせる時は遊んでやってほしい、という事だ。


こんな都合のいい話ある?


現代日本なら間違いなく詐欺を疑うレベルである。


まあ何にしろ、これで不安に思っていた事は少し解決した。


すぐに二人に相談して良かった、と心から思う。







「そう、ですか。ルリがそんなことを」


「ああ。お前は複雑かもしれんがな」


ルリから相談を受けた数日後、エドワードは第二騎士団の団長室に来ていた。


他でもない、ルリの申し出についてだ。


「結局、私の心配など必要なかったという事ですね」


「はは。思っていた以上に強い女性だったという事だろう。それに、あの晩お前と話してからだぞ?ルリが自分の意志でもってこの国と関わりたいと言ってきたのは。お前の気持ちが、ルリを動かしたのかもしれないな」


()は、別に…」


「恐らくだが、これまでのルリは、どこかでこの世界で生きることを否定していた。自分から外に出て行くことも、力を見せることもしなかった。むしろ、隠そうとしていた。だが、そうはしつつも、()()に存在している理由を求めていたし、一人の人間として見てもらいたいとも思っていた。その、見方によれば相反するとも言える感情に寄り添ったのが、お前だったのではないか?」


「…自分でも分からなかったんです。()は、騎士団長だ。国を思えば、ルリの力を求めるべきで、彼女に選択の自由など与えてはいけない。でも…できなかった」


「ルリを一人の人間として見て、その意志を尊重したかったのだろう?」


「…そんな崇高な考えではありませんよ。ただ、俺にとっては、側に居てくれるだけで良かったんだ。聖女だから惹かれたのではない。ルリだから、求めた。…後は、自分だけの物にしたかったという、ちっぽけな独占欲でしょうか。だからと言って、結局国を捨てることもできず、ルリの優しさに甘えてしまった訳ですが」


いつの間にか一人称が()になっている弟に、エドワードはふうっ、と溜め息をつく。


堅物のこの男が、身分も地位も考えず、()()()()()()として話す時にだけ表れる癖だ。


「それは、無理に答えを出さなくても良い事なのではないか?大切に思うものに順序を付けるなど、簡単に答えの出るものではない。人間、一つや二つ、生涯に渡って悩む事があっても良いだろう」


「ははっ、兄上らしいですね。…でも、ありがとうございます。俺も、吹っ切れました」


冷徹だと言われてきた弟の、こんな表情が見られるようになるとは、とエドワードは思う。


まるでただの恋に翻弄される少年だ。


「まあ、存分に悩むと良いさ、青年」


何ですかそれは、とムッとした表情すらも、微笑ましい。


「ところで教育に携わりたい、となると…やはり彼にご助力頂くのですか?」


「ああ、陛下にも話を通してある。また一人、聖女様が国を思って動いてくれようとしていることに、宰相は大喜びだそうだ」


「あの狸親父…」


宰相の掌で踊ることにはなりたくないな、と思うレオンハルトの眉間には、深い皺が刻まれていた。






「あれ?ルリさん、今日はどうしたんですか?サファイア様も、お疲れ様です」


「第二のルイス=アメジストか。これから訓練か?」


「はい」


アルと一緒に王宮を歩いていると、後からルイスさんに声を掛けられた。


「例の遠征食のことで、保存用の缶とパックが出来たって呼ばれたの。折角だから厨房で作ってみようかと。密封とか保存期間とかも気になるし、回復効果が持続するのかも試したいから」


そう、ついに缶詰と真空パックが完成したのだ。


賢い人って本当にすごい。


「なるほど。ルリさんのおかげで次の遠征はまともな食事が食べられそうだ、って第二の連中もすごく期待してますよ。もちろん、俺も」


「期待に沿えられるように頑張るね。あ、そうだ。もし余ったら、差し入れに持って行こうか?」


「マジで!?うわー嬉しい!!」


ルイスさんの目がぱっと大きく開いて満面の笑みとなった。


何気なく言っただけなのに、そんなに喜ぶことかしら?


あ、聖女様の作った物だからか。


「あの、そんな大層な物じゃないからね?回復効果はあるけど、味は普通だし」


「いや、絶対美味しいですって!例のお礼のクッキー貰った第一の騎士も絶賛してましたし。まあそんな謙虚な所も、ルリさんの良いところですけど」


みんな大袈裟じゃない?


悪いけど、元の世界でも料理上手って褒められたことないよ?


…まあ、食べてもらう男性(ひと)がいなかっただけかもしれないけど!


「おーい!ルイス急げ!」


「あ、やば、呼ばれてる。すみませんルリさん、俺行きます。楽しみに待ってますね!」


「うん、訓練頑張ってね」


軽く手を振ると、ルイスさんも人懐っこい笑顔を返してくれ、走って訓練場へと向かって行った。


「ルリ様、貴女って人は…」


「ん?どうかした?」


「…いえ、別に。彼もですが、第二の団長が気の毒でなりません」


「へ?あ、そうだね、レオンハルトさんの分もあった方がいいよね!って言うか、訓練してるんだから、騎士さん達もいっぱいいるだろうし、差し入れもたくさんないといけないかも!」


「…はあ。別に、適当で良いんじゃないですか?」


…何でアル、溜め息ついてるのよ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の立場を気にするとは瑠璃も真面目だなあ。そういうところが彼女の長所だと思いますが。 それでも気になるならリーナちゃんの後見人になるというのはどうでしょうか。聖女の威光を盾にリーナちゃん…
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