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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第二章

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小さな決意

「さて、じゃあそろそろお昼用にクッキーでも作りましょうか」


「わーい!あたし、ちょこのやつがいい!」


「わたし、こうちゃのくっきーがたべたい」


「じゃあその二つと、チーズのクッキーにしましょうか」


「「「やったー!!」」」


うーんみんなクッキー好きだなあ。


個人的にはスコーンの方が好きなんだけど、まあそれはまた今度作ろう。


確かに子どもにはちょっとパサパサしてるし。


「じゃあテオさんにちゃんとご挨拶すること!できるよね?」


「「「はーい!!」」」


「良いですね。僕も後からご馳走になっても?」


勿論ですとも!


次の講義があるというレイ君とは、お昼の約束をして別れた。






と言うことで厨房へ。


「テオさん、すみません今日も良いですか?」


「おう、ルリ!もちろん良いぞ。クッキーだろ?今日は何だ?」


「チョコチップと紅茶、それにチーズ入りを作ろうと思ってます」


「チーズ?そりゃ初めて食べるな!期待してるぞ」


いつものイイ笑顔で返される。


いつも快く厨房を貸して下さるんだから当然です!





クッキーはもう何度も作っているので、二人ともお手の物だ。


捏ねるのも型抜きも、かなり上手になっている。


「ねーねーまま、これさっきのやつににてない?」


「あ、そうね確かに。まあ、粘土は食べられないけどね」


「これ、かたぬき、ねんどでもつかえそう」


「それいい!ねえるりせんせい、やってもいい?」


はい、予想通りのお言葉ありがとうございます。


「そうね、型抜きを使うともっと楽しくなりそうね。テオさんに余分なものがないか聞いておくね」


ま、勿論用意してあるんですけどね。






そうして皆でお昼のお茶を楽しみ、その後少しだけ小麦粉粘土をして遊んだ。


型抜きも大好評!


粘土用にと作ってもらった物なので、これからずっと使える。


まあ小麦粉粘土は数日しか保たないけどね。


この国、小麦粉は大量生産してるみたいなので、安価で購入できるのが嬉しい所だ。


今度は孤児院の子とも遊ぼうかな?






「今日は楽しかったね。アリスちゃんとも可愛い粘土ケーキ作ってたし」


「うん!かたぬきつかうの、おもしろかった。けーきもじょうずにつくれたし!」


二人の作品はそれぞれのお家に飾ることにした。


アリスちゃんは玄関に飾ると言っていたし、リーナちゃんもお部屋の置物たちと一緒に飾った。


魔法で清浄して菌を減らし、乾燥しないように膜を張ったので、しばらくは保つだろう。


自分の作ったものがあると、なんだか嬉しくなるよね。


リーナちゃんはエドワードさんやエレオノーラさんにも見せて、すごいね!とたくさん褒めてもらって自慢気だった。


「明日はクレアさんが来る日だね。明日は私にもフォルテ、聞かせてね。じゃあそろそろ寝ましょうか」


「うん!いっぱいれんしゅうしたから、だいじょうぶ。おやすみなさい。きょうはじぶんでねむれそう」


「そう?じゃあお休み」


そうやり取りすると、たくさん遊んだからだろう、リーナちゃんはすぐに穏やかな寝息をたて始めた。


この頃は子守唄がなくても眠れるようになってきたのだ。


クレアさんやレイ君の先生と話すことも、私がいなくても出来ている。


この世界に来た当初は人見知りで、いつも不安そうで大人しい印象だったけど、少しずつ自信を持ち始めて、積極的な姿も見られるようになり、とても成長を感じる。


リーナちゃんも、紅緒ちゃんや黄華さんも、みんなそれぞれに前に進んでいる。


私も、みんなに負けずに前に進みたい。


この世界で生きていくという事は、そういう事だと思うから。






リーナちゃんの部屋の扉をそっと閉め、少しだけ夜風に当たろうと近くのバルコニーに出る。


今夜は月明かりが優しくて、穏やかな気持ちになれる。


そこで先日レオンハルトさんと話した内容を思い出す。






私はずっと心のどこかで何故自分が、と思っていた。


何故そんなことをしたのか、と恨む気持ちが無かったとは言えない。


けれど、この世界での出会う人はとても優しくて、温かで。


彼らの事情を聞き、それが生半可な気持ちからではないと知って、責める気持ちになれなくなった。


誰もが皆、大切な人がいる。


それを守りたいという気持ちは、普通の感情だ。


だからと言って何でもやって良いという訳ではないけれど…。


でも、レオンハルトさんのように私達に罪の意識を持って苦しんでいる人も、きっとたくさんいる。


多分、ずっと聖女召喚を反対していたと言うカイン陛下も。


私がこの世界に来たばかりの時、聖女召喚の話をしていたメイドさんは言っていた。


『だからこそ、聖女様には心からお仕えしないといけないんでしょ。この国で、幸せになってもらう為に!』


…過去には、辛くて、悲しくて、苦しんだ聖女様もいたのかもしれない。


()()()この国で幸せを見つけて貰いたいと、そう思ってくれるのならば。


意志を尊重してくれて、断る権利がある、一人の人として向き合いたいと言ってくれるのならば。


恨んで苦しむよりも、力を合わせて幸せを見つける方が、ずっと私らしい。


『辛くて悲しくて泣いちゃう時もあるよね。でも、泣いてても何も変わらないの。変わりたいなら、自分で動かないと』


『ごめん、って謝ってくれた人の気持ちも考えてあげてね。辛いのは自分だけだなんて、考えちゃダメよ。もしかしたら、相手も辛いのかもしれないよ?』


『誰かの役に立てるって、嬉しいよね。ありがとうって言ってもらえたら、心がぽかぽかして、もっと頑張ろうって思っちゃうよね』


子ども達に伝えてきた言葉が、自分の胸に響く。


決して聖女召喚が良いことだと肯定はしたくないけれど、今ここにいることを、無駄にはしたくない。


この世界で出会った人。


言葉。


思い。


それを否定しては、いけないと思う。


だから、私は。






聖女であることを受け入れて、この世界で幸せになる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 『ごめん、って謝ってくれた人の気持ちも考えてあげてね。辛いのは自分だけだなんて、考えちゃダメよ。もしかしたら、相手も辛いのかもしれないよ?』 今回は、違うけど、もし二十歳を過ぎた一人娘が急…
[一言] 子供たちに伝えてきたことを、自分でもやらなきゃと思える。瑠璃さんは本当に子供たちにとって良い先生だったのだろうと思います。 「変わりたいなら、自分で動かないと」 そう言っても自分で行動出来る…
[良い点] 人は生きている限り前を向いて歩いて行かなければならない。そういう瑠璃の前向きなところは好きですね。 [気になる点] 今後も聖女召喚が行われるとしたらそれだけ犠牲者が増えていく訳ですか。何と…
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