聖女会議2
「きゃー!フルーツケーキ!?カツサンドに照り焼きチキンサンドも!!」
「まあ、こちらは鯖味噌ですか?ぶり大根に豚の角煮…ご飯が欲しくなりますわぁ」
という訳で。
作ってみました、試作品。
そうなんです、西洋風の世界だから諦めてたんだけど、醤油も味噌もみりんもあったんですよ。
なんて都合の良い…と思わなくもない。
とりあえず缶詰や真空パックに詰められそうなものと、冷凍できて騎士さんが好みそうなもの、そしてそれを使って簡単に出来るサンドイッチを作ってみた。
今日は紅緒ちゃんと黄華さんに試食してもらおうと、王宮にそれを持って来たのだ。
「この世界、普通にご飯美味しいしそんなに不便はないんだけど、ちょっとが足りないのよね…。あ、ブランデーが利いてて美味しい」
「そうですよねぇ。平民の皆さんは召し上がっているみたいなんですけど、こういう物はなかなか王宮では食べられなくて…。うん、大根に味がしみてて懐かしい味がしますわぁ」
二人ともほっこりしてしまった。
やはり。
ちょっとが惜しい、のちょっとを意外と求めていたのだろう。
「それに、魔物討伐に出掛けてもやっぱり美味しいもの食べたいしね。私達の初遠征前に瑠璃さんが食事事情を改善しようとしてくれて助かったわ。カツサンドうまっ!!」
「確かにそうですよね。私も考えていませんでしたが、遠征食がマズ…口に合わないのは辛いですよねぇ。あぁ、白いお米…誰か!!」
「…また、作ってきますね。試作品じゃないやつも」
人間の三大欲求だもんね、食欲。
日本人って舌が肥えてるしね。
マズいのは嫌ってことですよね、分かりますよ。
「それにしても、紅緒ちゃんはともかく、黄華さんまで討伐に参加することにしたんですね。今さらなんですけど…黄華さんはどんな魔法が得意なんですか?」
「支援系ですね。私は光属性魔法がLv.MAXになっています。防御力や魔法耐性力を上げたりして、騎士さん達の強化を担当するんです」
「それで"祝福"なんですね。紅緒ちゃんは炎属性魔法が得意なんだっけ?」
この前の訓練の時、陛下が言ってたよね。
確かにあの炎のドラゴン、凄い威力だったし、炎属性魔法がLv.MAXなのかな?
「炎も得意だけど、一番は闇属性。この世界、闇属性魔法が使えるのは魔族だけだ~とかそんなんじゃないから普通に受け入れられてるけど、闇属性が得意なのに聖女って、ちょっと違和感あるわよね」
確かに…と、遠慮がちにだが頷いてしまった。
闇属性魔法=魔王みたいなイメージあるもんね。
そう言えば光・闇・聖の属性持ちは希少だってレイ君の先生が言ってたな。
レベルは低いが、一応私も闇属性を持っている。
「闇属性魔法ってどんな事が出来るの?」
「うーん…見に来てくれた時の、アイツの剣にかけた魔法も実は闇と炎の複合魔法だったのよね。分かりやすいのだと、ブラックホールみたいなの作ったりとか?空間魔法的な?ほら、よくマンガで"闇に葬る~"みたいなやつあるでしょ?あんな感じね」
「ああ…"粛清"ってそういう…」
炎も浄化だもんね。
人が死んだら火葬するやつ。
何となく二人の得意属性が見えてきたぞ。
聖女だからか全員全属性使えるらしいんだけど、それぞれレベルはバラバラなのよね。
「瑠璃さんは"癒し"だから分かりやすいですよねぇ。本当にこのお料理食べたら、疲れが消えましたもの」
「いかにも"聖女"って感じね。あたしとは大違い。やだ、これも美味しい。瑠璃さん天才!!」
もぐもぐと今度は照り焼きチキンサンドを頬張っている紅緒ちゃんは、そう言いながらも大して気にしていない様子だった。
「紅緒ちゃんも、いかにもな聖女様が良かったですかぁ?」
「全然。あたしバトルゲーム好きだったし、こっちのが性に合ってるわ」
「そんな感じですねぇ」
どうやら紅緒ちゃんにはお兄さんがいるらしく、その影響で小さい頃からゲームが好きだったらしい。
「RPGもよくやってたから、レベル上げて強くなるのとか楽しいわよ。アイツとの連携も、嫌々だけどやっていく内になかなか様になってきたし。まあ現実とゲームは違うから、そう簡単には上手くいかないけどね」
「へぇ…。そういえば最近ステータス見てないけど、紅緒ちゃんとは随分差がついちゃったかもなあ。あ、そう言えば二人も鑑定って使える?」
「使えるわよ」
「使えますね」
やっぱりこれって聖女特典なのかな?
少し前に、鑑定のスキルはこの国でもほんの数人しか持っていないと聞いて、びっくりしたものだ。
うーん、良かった二人がいて…。
「でも鑑定にも得意分野があって、瑠璃さんの見える情報と、あたしが見える情報は違うはずよ」
「え、そうなの?」
「はい、例えば紅緒ちゃんなら対象の耐性属性は見えますし、私は弱点が事細かに分かりますが、状態異常などは分かりません。ほら、魔法騎士団長さんの呪いの件、私達には何も出来なかったのをお聞きになっているでしょう?」
そう言えば、聖女様方に見てもらったけど、分からないって首を振られたって言ってた気がする。
なるほど、私は"癒しの聖女"だから呪いの情報が見えたし、対処法も分かったという事か。
「あの時は本当に申し訳ない事をしたわ。見ず知らずの人とは言え、苦しんでいる人に何もしてあげられなかったんだもの」
「紅緒ちゃん…」
「そうなんですよ、こんなんですけど、意外と優しくて真面目なんですよね~紅緒ちゃんて」
「あ・の・ね・え、アンタあたしのこと何だと思ってんのよ!ケンカ売ってんのか!!」
「嫌ですわぁ、褒めてるんですよ?」
コロコロと笑う黄華さんに紅緒ちゃんはイラッときたらしい。
どこがだ!?とケンカになりそうになったのを止めたのは、勿論私だ。
黄華さん、一言多いんですよね…。
って言うか、さらっと言ってたけど、黄華さん弱点見えちゃうんだ…。
しかも事細かに…。
こわっ!!!
私、この人だけは怒らせないようにしよーっと。




