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ラピスラズリ家

成る程、この世界の言葉が理解できるのは、所謂チートってやつね。


そういう小説とかアニメが流行ってるから、何となくだけど知ってる。


でもまあ、とりあえず異世界から来たらしいことは、この場では黙っておこう。


と言うか、信じてもらえるわけがない。


いや、子どもならキラキラした目ですっげー!!とか言うのかもしれない。


でも、ここには私以外にも大人がいる。


ドア付近に佇む、三人の人達。


二人は、多分メイドさん。


お揃いの制服を着ていて、四十代くらいのベテランっぽい人と、私と同じくらいの年頃の可愛らしい人で、お茶とお菓子を用意してくれた。


そしてもう一人は、執事さんみたいな初老の男性。


怪しい以外の何者でもない私に、少し眉間に皺を寄せたが、リーナちゃんが私の腕をぎゅっと掴んで離れないのを見ると、少し表情を緩めて応接室に案内してくれた。


そんなリーナちゃんは、いまだに私の隣にピッタリくっついている。


何故だか懐かれてしまったようだ。


「それにしても、本当に驚きです。リーナが初対面の人にこんなに心を開くのは。普段は家族と、何人かの使用人にしか話さえしてくれないのに」


レイ君が苦笑してリーナちゃんを見つめる。


少し困ったような表情だが、その目は間違いなく妹を可愛く思っているものだった。


ちらりと隣のリーナちゃんを見ると、僅かだが微笑んでくれた。


ガタッ!!


「「「お、お嬢様が、笑った!!?」」」


…いや、笑うくらいするでしょう?






どうやら、リーナちゃんの人見知りはかなり酷いらしく、笑顔なんて自分達にもなかなか見せてくれない、と三人は言った。


その分、それが見られた時は言いようがない程に癒やされるらしい。


分かる。


美少女の微笑み、プライスレス。


頷き合っている大人達の心は今、一つだ。


「とりあえず、イズミ様がラピスラズリ家に悪意ある者でないことは間違いないようで、安心致しました。リリアナお嬢様がこれ程懐いてらっしゃるので、大丈夫だとは思っていましたが」


そうか、リーナは愛称で本当はリリアナちゃんというのね。


どちらにしろ、可愛い。


「うん。それにルリ様の話を聞くと、外国からの旅の方みたいで、特に急いで帰らないといけないとか、そんなことはないみたいだね。なら、お願いしてみるのも良いかと僕は思うんだけど、どう思う?セバス」


外国どころか多分異世界から来たし、帰る場所ももちろん無いけど、嘘は言っていない。


てか、執事さん、セバスさんっていうのね。


予想通りでびっくりする。


ところでお願いとは何だろう。


「はい、私共もそう思っておりました。旦那様は公務が立て込んでいる為お戻りが遅くなりますが、奥様はもうじきお帰りになるはずです。まずは私からお伝えしてみます」


「頼んだ。ルリ様、宜しければ今日はこちらにお泊まりになって下さい。父や母にも紹介したいですし」


何のことやら分からないが、一泊でも安心して過ごせる場所が確保できたのは大変有難い。


「はい、迷惑で無ければ是非。ご両親にも挨拶させて頂きたいです」


「迷惑だなんて。こちらがお願いしているのですから、そんなに畏まらないで下さい。それに、リーナも喜びます」


レイ君の言葉に、リーナちゃんがきゅっと私の袖を引っ張る。


「るり…いる?」


「うん、今日一日よろしくね。…あれ?ひょっとして、眠くなってきた?」


よく見ると、リーナちゃんの目がとろんとしている。


「ああ、そろそろお昼寝のお時間ですね。お嬢様、マーサと一緒にお部屋に参りましょう?」


「や。るりと、はなれたくない」


うーん、可愛い。


「じゃあ、私と行こうか?」


「るり、いっしょ?」


「うん、一緒」


コクリと頷いて、手を繋いできた。


あー可愛い。


「ではイズミ様も一緒に。どうぞこちらへ」


「リーナ、お休み」


「お休みなさいませ」


「ん、おやすみ…」







二人のお母様が帰宅したら呼んでくれるとのことで、マーサさんと名乗ったベテランのメイドさんに案内されてリーナちゃんの部屋へと向かう。


予想通りの豪華なお部屋で、お姫様ベッド(天蓋つき)に心の中で興奮した。


リーナちゃんが私の手を離さないので、ベッドの側に椅子を持って来て、優しく髪を撫でながら子守唄を歌う。


すると、程なくしてすうすうと寝息が聞こえてきて、手を握る力も緩んできた。


そっと手を抜いて、ほっと息をつく。


子どもが無事に寝ると、やった…!って思うのは私だけじゃないはず。


「ありがとうございます、イズミ様。こんなにスムーズにお嬢様がお休みになるのは、とても珍しいです」


そっと寝室のドアを閉めると(なんと部屋は寝室が別についていた!)、マーサさんが感心したように言う。


「それに、あの歌…聞いたことのない曲でしたが、とても安らぐメロディですね」


まあ、日本の子守唄なんて知らないに決まっている。


「はい、私の故郷の歌で、子どもを寝かしつける時に歌うんです」


「そうでしたか。では、私はお茶をご用意します。じきに奥様がお戻りと思いますが、お着替え等ありますので、しばらくここでお待ち下さい」


「あ、それならーーーー」


一瞬マーサさんは戸惑いの表情を浮かべたが、私のお願いを快諾してくれた。


そしてテキパキと温かいお茶を入れ、頼んだ物を持って来てくれると、にこりと微笑んで退出していく。


うーん、さすが貴族、外出から戻っても着替えに時間が掛かるのね。


さて、では暫く集中しようかな!

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