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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第二章

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収穫

孤児院からの帰り道、私は真新しいがシンプルな内装の馬車で一人揺られていた。


なんと、王宮から私専用の馬車が贈られたのだ。


でも出先は市井ばかりなので、出来るだけ目立たない、簡素なものにしてもらった。


キラキラ豪華な馬車で町中を走ってたら、悪目立ちするからね…。


簡素、と言っても十分広いし乗り心地も良い。


なので私もとても気に入っている。


因みに御者はアルが引き受けてくれた。


何だかんだ言いつつ、すっかり甘えてしまっている…。


「ルリ様、もうじき侯爵家に到着しますよ」


「うん、ありがとう」


アルに声を掛けられ外を見ると、ラピスラズリ邸と広大な庭園が見えてきた。


季節は、初夏。







こちらの世界…というかこの国にも季節はある。


春夏秋冬、日本とは違って梅雨はなく、夏は普通に暑いくらいで、冬も困るほど雪が降ることはないらしい。


雪遊びは楽しいけど、豪雪地帯は大変だもんね…。


灼熱も辛い。


そんな恵まれた気候なため、植物もよく育ち、畜産も盛んとあって、国も豊かだ。


近年魔物の多発という問題はあるらしいが…。


まあ、取り敢えず食べ物には困らない。


さて、覚えているだろうか。


転移したばかりの頃、リーナちゃんと一緒に植えた野菜たちの事を。


なんとそれら全てが立派に成長し、収穫の時期を迎えたのだ!!


明日、リーナちゃんと収穫してお料理しようと約束している。


わーい!!なに作ろう!?


トマトとキュウリはやっぱりサラダかな?


ナスとトマトを使ってラタトゥイユもいいなぁ。


メロンはデザートだよね…あっ!


良いこと考えた!






「ルリ様、どうぞお手を」


「えっ!?あ、もう着いたのね」


「とても良い顔をされていたので、声を掛けようか迷ったのですが…何を考えていたんです?」


クスクスと、仕方がないと言わんばかりに微笑まれると、恥ずかしくなる。


によによ笑ってる所を見られるなんて…。


「その、明日は収穫した野菜で何を作ろうかな、って。春に種を植えた物が食べ頃になったから、リーナちゃんと料理の約束しているの」


赤くなった頬を掌で隠しながら答えると、アルがキョトンとした顔をした。


「ラピスラズリのお嬢様と?収穫に料理、ですか?」


「あれ、知らなかった?リーナちゃん、植物育てるのも料理も好きよ?」


何かおかしな事を言っただろうかと聞き返すと、意外な答えが返ってきた。


「いえ、普通貴族の令嬢は野菜を育てたり料理をしたりはしないので…」


「ええっ!?そうなんだ、私良くないこと教えちゃったかな…」


農作業はともかく、料理は元の世界じゃ女子の嗜みみたいに言われていたから、こっちでもそうなのかと…。


「いえ。まあ、私は良いと思いますよ。食べ物の大切さや作る苦労を知るのも、大切な事だと思います」


何故か遠くを見ながら、しみじみと言われた。


食べ物で何か苦労があったのだろうか…。


…今は聞かないでおこう。






そして翌日、天気は快晴!


早速アルトおじいちゃんに挨拶して、リーナちゃんと三人で畑へ向かう。


ハサミで切る部分が野菜によって違うから、ちゃんと教えて貰ってから収穫するよ。


「う~ん…ここ?えいっ!」


パチン


「わああ!とまとだー!!みてー!!!」


コロンと掌に乗ったプチトマトは、つやつやしていてとても美味しそうだ。


「うん!上手にできたね!美味しそう」


「はは、まだまだあるからのう。頑張って取っておくれ」


キラキラしたリーナちゃんの笑顔に、アルトおじいちゃんも嬉しそうだ。


「よーし!私も負けないよ」


今日はたくさん収穫して、野菜を美味しく頂くぞー!!






そして一時間後。


籠いっぱいの野菜を持って、私とリーナちゃんはテオさんの所にいた。


「おっ!こりゃあ…これ、ホントにお嬢様が作ったのか?」


「そうだよ。りーなは、やさいのおかあさまだもの!」


エレオノーラさんの言葉をきちんと覚えていたリーナちゃんは、得意気に答えた。


「はははっ!こりゃあいい。リリアナお嬢さまは素質があるな。こんな良い野菜、最近あまり見ないぞ」


テオさんも大絶賛の野菜たち、これは期待できる!!


「じゃあすみませんが、またいつもの場所、お借りしますね」


「ああ、好きに使ってくれ!」


多めに(俺の分も)作れよ、といつもの催促をしてテオさんは自分の作業へと戻って行った。


私が聖女だと知ってからも変わらない態度で接してくれるのが、とても嬉しい。


勿論です!と答えて、準備開始。


手を洗っていると、タイミング良くマリアがやって来た。


「お待たせ!ほら、市場で美味しそうなベーコンと海老、買ってきたわよ!あ~楽しみだわ、ルリの料理!」


「ありがとう。じゃあまずは野菜たちを切りましょう!」


マリアにも手を洗ってもらい、三人で調理スタート!


あ、因みに子ども用の包丁も、テオさんに相談して作ってもらいました。


まだ恐る恐るだけど、やっぱり切る、って作業が自分で出来ると料理してる!って感じするよね。


「まずは玉ねぎね。リーナちゃん、皮剥きお願い」


玉ねぎの先を切り落として、剥きやすくしてからリーナちゃんに渡す。


「うん!かんたんー!」


初めの頃は時間がかかっていた皮剥きも、手慣れたものだ。


「次はくし切りにするよ。半分に切ってくれる?」


「うん。えっと、ねこのてで…」


慎重に玉ねぎを押さえ、半分に切っていく。


「できた!」


「うん!綺麗に切れたね。じゃああと二つもお願い」


リーナちゃんが半分にしてくれた玉ねぎを、私が隣でくし切りにしていく。


これはもうちょっと包丁に慣れてからかな。


「よし、次は…」


そんな感じで次々と野菜を切っていき、厚めのベーコンはリーナちゃんに一口サイズに切ってもらう。


材料が揃ったら、いよいよ煮込み。


いつもならトマト缶使っちゃうけど、収穫したトマトも完熟で皮ごと食べられるらしいから、きっと美味しいはず!


材料を炒めながら加えていくのは、どちらもリーナちゃんの仕事。


味付けだけは私が味を見ながらするけどね。


「お鍋に触らないように気をつけてね。美味しくなーれ、って気持ちを込めて混ぜるのよ」


「おいしくなーれ!おいしくなーれ!」


うん!きっと絶品ラタトゥイユになるはず!

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