*秘めた想い*
☆コミカライズ記念番外編です☆
シーラ視点のお話。
明日も一話、番外編を投稿予定です。
カインと紅緒の結婚式、その上青と黄の聖女へ、噂のある騎士たちからの求婚まで行われ、大いに盛り上がったその日の夜。
城下からは、まだ祝いの賑やかな声が響いている。
そんな中、シーラはいつもの魔術師団のローブに身を包み、王宮の庭園で月を見上げていた。
「幸せそう、だったわね」
自分が喚び出した、三人の聖女。
恨まれることを覚悟し、彼女たちの幸せを最後まで祈りたいと思っていたのは、カインだけではない。
シーラは、椎名那智として彼女たちと同じ世界を生きていた記憶がある。
しかも、瑠璃とは職場の同僚。
彼女が消えた後、どれだけの人間が悲しんだかを知っている。
「いくら彼女たちが赦してくれたとしても、私自身は私を赦さない。そして、彼女たちの幸せを、最後まで見守りたい」
そのひとつの区切りが、今日だったのかもしれない。
彼女たちは、自分たちで今日のこの日の幸せを掴み取ったのだ。
「おめでとう。また、これからね」
そしてこれからも、新しい道へと歩み進んでいく。
前世と変わらない月。
異世界であっても、変わらない魅力で人を惹き付けてきた瑠璃。
それでいて、自分には決して手の届かない存在。
まるで彼女は月のようだと、そんな感傷に耽っていると、静かな足音が近付いてきた。
「シーラ様、こんなところでなにを?」
アルフレッドだ。
瑠璃の護衛騎士である彼もまた、今日の日を感慨深く思っているのではないだろうか。
瑠璃に振り回されることも多いが、彼女を大切に思っていることは周知であり、今日のあの場面も、穏やかな目で見守っていた。
「月を、見ていたのよ」
「月、ですか?」
不思議そうに見上げるアルフレッドに、シーラは苦笑を零す。
彼もまた、瑠璃に惹かれているひとりではないかと思っていたのだが、正直、全く読めない。
今日だって自分のように、喜びながらもどこか寂しい気持ちになったのではと思ったのだが、すっきりした顔をしている。
とすると、手のかかる妹のように見ていたのだろうか?
「……寂しいですか?」
「はっ!?な、なんのこと?」
ぐるぐると考えていたところに、思いもよらない質問をされて、狼狽えてしまった。
ぱっとアルフレッドを見ると、とても優しい目をしている。
「私は、まぁ寂しさ半分、喜び半分というところですね。といっても、護衛の任を解かれるわけではないですし、これからおふたりの間に御子ができたら、それはそれで楽しくなりそうですし」
くすくすと笑うアルフレッドの言葉に、嘘はない。
瑠璃への想いは、色恋めいたものではないのかもしれないなとシーラは思い直した。
「それで?魔術師団長殿はルリ様を諦められそうですか?」
「ええ、まぁ……って、は?」
しまった、油断した。
ばっとシーラがアルフレッドを振り返ると、にっこりと微笑まれる。
「あなたとエメラルド宰相、どこか似ているなぁと、ずっと思っていたんですよ。ルリ様と一緒にいるあなたを見て、少しずつ、向こうの世界でのルリ様を知っていて、慕っていたのだろうなと、なんとなく思うようになったのです」
当たりましたか?と悪戯な顔をするアルフレッドに、シーラは脱力する。
「……参ったわね。誰にも言うつもりはなかったのに」
はぁっと観念したように息を吐くシーラに、すみませんとアルフレッドが謝る。
「……恋人だったのですか?」
「いーや、俺の片想い。ずっと変わらない」
そう、あの頃と変わらないるり先生に、今も惹かれているけれど。
「……でも今は、レオンと一緒にいるるり先生が好きだからな。ずっと、ふたりを応援するさ」
優しい瞳のシーラに、アルフレッドも目を細める。
「私も、ラピスラズリ団長の隣で笑うあの方が、好きですよ」
その言葉の、意味は。
それ以上を聞いてはいけない気がして、シーラはもう一度月を見上げた。
「な、今からふたりで飲まないか?」
「おや、異世界の話でもして下さるので?」
「んー、まあ、それも良いかもな」
「ところで、男言葉に戻っていますが、よろしいのですか?」
「あ?今日くらいは大目に見てくれよ。失恋記念日なんだからさー。それよりもさ、――――」
その夜、シーラとアルフレッドは、窓から差し込む月の光を酒の肴に、魔術師団長室でふたりだけで祝杯をあげたのだった。
本日配信のBerry's Fantasy vol.30より、コミカライズ連載開始です♡
永倉早先生が描いて下さった、かわいいリーナちゃん達を見て頂けると嬉しいです(*^_^*)




