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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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癒やしと祝福と粛清と

「「「「うわああああ!!」」」」


すると、まるでドミノ倒しのように騎士のみんなが倒れ込んできた。


「いてて……陛下、気付いていたんですか」


「当たり前だ。押し合いへし合い、喧しい」


どうやら、外から一連のやり取りを聞いていたらしい。


あははと笑いながら騎士さんたちが立ち上がる。


そして、その中にいたルイスさんが前に出た。


「陛下ならびに宰相殿、大臣の皆様、発言をお許し下さい」


「許す。思うことを言うと良い」


「ありがとうございます。……確かに、ルリ様の癒やしの力、オウカ様の人を助ける力は、どちらも王妃に相応しい力だと思います」


それには誰もが否定せず、大臣の方々もただ黙って聞いていた。


「ですが、ベニオさまの強さもまた、私たちを助けてくれました。支えるという意味では、他のお二人の聖女様の方が、魅力に映るかもしれない。ですが、そのお二人、そして何よりも陛下が、ベニオ様を妃にと望んでいるのです」


そうだ、と陛下が笑った。


「それに、こちらのお二人の聖女様は、無理矢理王妃になどさせられそうになったら、それこそ、この国は見捨てられかねませんよ?ベニオ様が王妃に就けば、いつまでも側で支えてくれるでしょう」


そこでルイスさんは、パチリと私たちに向かってウィンクする。


「そ、それは色々と困りますな」


「そうじゃのぅ。聖女様方には利用するようで悪いが、ものすごーく、困る」


想像したのか、大臣の方々の顔色も悪くなる。


「……私たちの国では、まあ事情のある方もいますが、基本的には好き合った相手と結婚するのが一般的なんです」


「そうですわね。こちらの世界の考えを押し付けようとは思いませんが、紅緒ちゃんに資質があり、陛下とも想い合っており、ついでに私たちもそれを望んでいる。……何か、問題ありますかしら?」


そこで、ずっと黙っていた私と黄華さんも声を上げた。


「これだけの人が認めている紅緒ちゃんを、どうか、皆さんも認めては下さいませんか?癒やしの力も、祝福の力も、粛清の力も、私たち三人で、足りないところは補って、この国で生きていきたいと思っているんです」


三人並んで、大臣の方々へと向き合う。


私たちのうしろには、護衛騎士の三人と一緒に、レオンやウィルさん、イーサンさんが。


そして、扉の前には騎士さんたちが並ぶ。


「だそうじゃが、宰相殿?」


一番年配の大臣さんが、シリルさんの方を見る。


するとシリルさんは、はあとため息をひとつ零す。


「……よくぞ、皆を納得させるだけの材料を揃えましたね。力と責任感を示し、人を動かし諦めない心を見せ、陛下を一番に考え支えるのだと言葉にした」


そこで言葉を切り、シリルさんはにこりと微笑む。


「今だから言えますが、実は今回以外にも色々と手を回したことがありましてね。ですが、ベニオ様は最後まで諦めずに、陛下を想ってここまでこられた。もう私から反対する要素など、何もありません。……どうか、陛下と、この国のために、お力をお貸し下さい」


そう言って、深々と紅緒ちゃんに向かってお礼をした。


その言葉を聞いて、色々と私の中でストンときた。


「ひょっとして、シリルさんは、ずっと陛下のために動いていた?」


「……ええ。もうずっと、長い年月、約束を守るために」


約束?約束って……。


『それについては、わらわも一緒に説明させてくれんかの』


「え!?この声って……」


突然聞こえた声にばっと天井を見上げると、金色の粒子に包まれて、女神様が姿を現した。


突然の女神様の登場に、陛下や大臣の方々、騎士さんたちが驚きのあまりに、ぽかんと口を開ける。


「話がしたいと言うたじゃろう。ふむ、揃っておるな。さて、大臣方や騎士たちは、ここからは遠慮してもらえるかの。聖女のうしろの六人は残っても良いぞ」


女神様が話とは、何事だろうかと戸惑いつつも、大臣の方々や騎士さんたちが退出してくれた。


そして部屋に残ったのは、私たち三人と陛下、レオン、ウィルさん、イーサンさん、護衛騎士の三人と、そしてシリルさんだけとなった。


しばらくの沈黙の後、女神様がシリルさんに向き直り、口を開いた。


「久しいの、エメラルドの」


「……君は、ちっとも変わらないんだね」


そして、シリルさんがそれに穏やかに応える。


あれ、シリルさんと女神様って、初対面じゃないの?


「いや、()()姿()のこやつに会うのは、初めてじゃぞ?」


え、それって……。


「……私は、創世の物語に出てくるエメラルドの末裔であり、()()()()()()()でもあるのですよ、青の聖女様」


「それは……」


「転生、というやつか?」


「ご明察。さすが陛下ですね」


戸惑う私とは異なる、冷静な声で陛下が聞くと、シリルさんはそれを肯定した。


転生って、じゃあ、シリルさんは……。


「もう、何度目でしょうね。エメラルド家の者として生まれ変わったのは。何度も何度も、この国を守るために私は生き、そして死んでいった。でも、私は後悔していない。……約束だから」


そう言うと、シリルさんは窓の外へと目をやる。


遠い、過去を思い出すように。


「……そなたには、ほんに辛い役目を負わせてしまったと、後悔しておる」


「いいや。これは、私が望んだのだよ。君と共に、この国を守るために」


苦しそうな表情の女神様に、シリルさんは優しい微笑みを向ける。


君のせいじゃないと、言っているかのように。


「初代国王の、アレキサンドライトとの約束だからね」


そして、まるで子どもに昔話を聞かせるかのような、穏やかな声で、シリルさんは語り出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 皆、無事に帰ってこれて良かった(* ̄∇ ̄)ノ 紅緒ちゃんの支持率爆上がりですね!! そして討伐隊の皆は、カイン陛下に紅緒ちゃんを推す推すwww そしてシリルさんの爆弾発言………!Σ( ̄□ ̄;…
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