番外編*異世界でのHAPPY NEW YEAR*
あけましておめでとうございます♡
異世界の年末年始ってどんなんでしょう?と感想を頂き、書いてみたお話です。
お楽しみ頂けると嬉しいです(*^^*)
「そういえば、ルリ様が住んでいたニホン?では、新しい年の始まりは、どのようにお祝いするのですか?」
「あら、それは興味あるわね」
「異世界の風習か。私も聞きたいな」
「わたしもきになる!るりせんせい、おしえて!」
年末のある日の朝食、思い立ったようにレイ君が私に聞いてきたのは、お正月の過ごし方。
そしてそれに、エレオノーラさん、エドワードさん、リーナちゃんまでもが興味を示したのだ。
「そうだなぁ……」
それからつらつらと、年越しに蕎麦を食べることや、神社にお詣りに行くこと、正月料理のお雑煮やお節のことなどを話した。
「国によって、ちょっと違うんだけどね。でも、家族や恋人、大切な人とのんびり過ごすっていうのは、変わらないかも」
懐かしく思いながらそう言い終えると、リーナちゃんが目をキラキラと輝かせた。
「たいせつなひと!じゃあ、れおんおじさまをよばないと!」
「そうね!あなた、早速約束を取り次いでおいて頂戴!」
それに続いて、エレオノーラさんがガタッと勢いよく立ち上がり、エドワードさんにそう言った。
忙しいだろうにそんな……と止めようとしたのだが、エドワードさんも乗り気だったので、それは叶わなかった。
でも……ちょっと嬉しい、かも。
どうやらこの世界では、元の世界のように、年末年始にまとめて仕事が休みになったり、特別な料理でお祝いしたりすることはないみたい。
まあ普通に、職場の仲間や家族と祝うくらいの感じらしい。
「あ、そういえば私の国では――――」
レオンを呼ぼうという話で、思い出したことをぽろりと零すと、それは良い習慣だねと褒めてくれた。
「じゃあ、折角だし、今年はルリの故郷に倣って年越ししましょ。もっと詳しく教えて頂戴!」
そんなエレオノーラさんの提案に、みんなが賛成したのだった。
「成程、それで私が呼ばれたのか」
「うん。ごめんね、忙しいのに」
そしてこちらの世界でいう大晦日、エドワードさんの誘いを受けたレオンが、仕事終わりにラピスラズリ邸に来てくれた。
「いや?折角だから、明日は休みを取ったんだ。そういうことなら、良い判断だったな」
廊下を歩きながら経緯を説明すると、丁度食堂に着き、レオンがふわりと微笑んだ。
「異世界の年越しにも興味あるしな。毎年この日は、ウィル達と飲みに行くくらいしかしていなかったから、楽しみだ」
「うん!料理も、みんなで頑張って用意したの。今日と明日は、ゆっくり過ごしてね」
お正月はのんびり過ごすもの。
今年は、大好きな人と一緒にいられるんだなと思ったら、嬉しくなってきた。
「ああレオン、お疲れ様。さあ座ると良い」
食堂の扉を開けると、エドワードさんたちが笑顔で迎えてくれる。
ふたり並んで座ると、次々と料理が運ばれて来た。
さすがに蕎麦やお餅は用意できなかったので、マーサさんとテオさんにお願いして、この国の伝統的な料理をいくつか作ってもらった。
元々お雑煮やお節も日本の伝統料理だもの、この国の年越しなら、この国に合わせるべきだと思ったのだ。
それにプラスして、私も伊達巻や筑前煮など、お正月らしい料理を作ってみた。
お米も用意してもらって、おにぎりも作った。
レオン、気に入ってくれていたし、和食にはやっぱりご飯が合うしね。
リーナちゃんたちの口にも合うと良いな。
「!これ、おいしい!」
「本当だ。甘くて美味しいです」
お子様ふたりは、やっぱり甘めの伊達巻が気に入ったみたい。
「あら、こちらの野菜がたくさん入った煮込み料理も美味しいわ」
「へえ、ご飯にも合って美味しいね」
エレオノーラさんとエドワードさんは、筑前煮とおにぎりをセットで気に入ってくれた。
「ルリが作ってくれた料理は、相変わらず美味いな。それに……」
そしてレオンは、テオさんが作った料理を懐かしい目で見つめている。
「最近あまり食べる機会がなかったのだが……子どもの頃に良く食べていた料理が並んでいるな。うん、美味い」
レオンが、テオさんの作った料理を優しい顔で口にする。
今まで私の作る料理を、珍しいけど美味しいって言って食べてくれていたけれど、やっぱり家庭の味には負けると思うのよね。
そこで、長年ラピスラズリ家に仕えているマーサさんとテオさんにお願いしたのだ。
この国の伝統的な料理で、レオンが幼い頃に好きだったもの。
「あのね、私の国ではこの時期になると、離れて暮らしている人もみんな故郷に帰ってきて、家族や親戚で集まるの」
私も弟も、毎年実家に帰っていた。
そして、お母さんが私たちの好物を作って待っていてくれてたっけ。
「レオンやエドワードさんが好きだったもの、たくさん作ってもらったの。せっかく帰ってきてくれたんだもの。ゆっくり、味わってね」
私の言葉に、レオンもつられて笑顔になった。
「ルリ、もう寝てしまったか?」
「レオン?ううん、起きてるよ。どうぞ、入って」
その夜、年が明ける少し前の時刻に、レオンが部屋を訪ねてきた。
なんとなく目が冴えてしまっていたし、できれば一緒に年越しカウントダウンできたらなぁと思っていたから、嬉しい。
レオンを部屋に招いて、ソファにふたり並んで座る。
ちょっぴり家族を思い出して、感傷的になっていたのかもしれない、甘えたくなって、ぽすりと頭をレオンの肩にもたれ掛かる。
あったかい……。
「ルリ、今日はありがとう。久しぶりに幼い頃を思い出した」
「うん。レオンの小さい頃かぁ……。ふふ、可愛かったんだろうなぁ。見たかったな」
軽く目を瞑ると、ふわふわと優しい空気に包まれる。
それと同時に、じわりと目の奥が熱くなっていく。
多分、もう元の世界に戻ることも、家族でお正月を過ごすことも、もうできない。
それを、自覚してしまったから。
「ルリ。これからは、毎年、俺と一緒に新年を祝おう」
そんな時に掛けられたレオンの言葉に、ぱちりと目を開く。
「ルリの家族が一緒にいられない分まで、俺が側にいる。一緒に好きなものを食べて、こうして触れ合って、ゆっくりと過ごそう」
きゅっと手が繋がれ、レオンの体温が私の手を温めていく。
「ああ、そろそろだ。……新しい年も、変わらず、大切にする。好きだよ、ルリ」
レオンは繋いでいない方の手で優しく私の頬に触れると、溢れそうな私の涙を、ちゅっと拭っててくれた。
ゆっくりと近付く、甘い吐息。
唇が重なる少し前に、声を絞り出す。
「ありがとう、レオン」
これからの私の帰る場所は、あなたの隣でいさせてね。
異世界での新年は、優しい約束から始まる。
*HAPPY NEW YEAR*
新しい年が、あなたにとって素晴らしい一年でありますように。
母の味って懐かしくなりますよね。
なかなか帰省できない方もいらっしゃると思いますが……。
早く気兼ねなく遠距離の移動ができるようになってほしいですね。
そんな時代の中でも、良い一年となりますように☆
今年もよろしくお願い致します!




