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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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268/283

仮説

******


……えーっと。


まあ、レオンは直接的ではなく、ぼかして話してくれたけれど。


その、つまり……。


「瑠璃さん、ついにやっちゃったんですのね」


「わーっ!?おっ、黄華さん!?」


ひとりレオンの話を反芻していると、耳元でぼそりと囁かれた。


慌てて咄嗟に黄華さんの口をびたんと手で押さえたけれど、みんなからじーっと見つめられている気がする。


それも、生温い目で。


……つまり、()()()()()()で、私の魔力がレオンに移り、それが呪いを浄化したのだろう。


そして、それがみんなに知れ渡ってしまったと言うわけだ。


ここには察しの悪い人など存在しない。


恐らく全員が、意味を理解している。


レオンが助かったことは嬉しいし、お守りも役に立ったみたいで良かったけど、は、恥ずかしい……!!


どんな顔をしてみんなの方を見れば良いのか分からなくて、座っていたソファで縮こまり身もだえる。


幸運だったのは、誰もからかったりせずに、気付かないふりをしてくれていることだ。


「とにかく無事で良かったわ。一緒にいた他の先行部隊の者は?」


『ルリにもらったお守りで毒を消してまわったら、全員解毒できてピンピンしている。そうこうしていたら、霧が晴れて合流できた』


シーラ先生もあえて触れず、別のことを聞いてくれた。


でも良かった、他の騎士さんたちも助かったのね。


ラピスラズリに付けた効果については、呆れた目で見られたけれど……。


でも、役に立ったんだから結果としては良かった。


「はあ。ふたりがお守りを作ってくれて助かったわね。この分じゃ、ヒュドラとの戦いは大変なものになりそうだもの」


『ああ、本当に。ルリ、それに黄の聖女様、ありがとうございます』


「いえ。私たちにできるのは、それくらいでしたから。役に立てて良かったです」


そう言いながらも、黄華さんの表情は冴えない。


それは、多分――――。


「それにしても、ヒュドラの言葉……。気になるわね」


そう、それだ。






レオンたち先行部隊の無事も確認できたし、その後紅緒ちゃんとも連絡が取れたので、とりあえず通信は切った。


ヒュドラの行方も追わないといけないし、気になることはあるが、のんびり話している時間はないからだ。


レオンによると、ヒュドラは力を蓄えて、って言っていたらしい。


長引けば、その分被害も大きくなる可能性がある。


早急にその足取りを追わなくてはいけない。


そこで王宮に残っている私たちも、いざという時にサポートできるように、集まっていた。


……陛下の執務室に。


「――――なるほどな。そこの青の聖女に色々突っ込みたいことはあるが、感謝しなくてはいけないな。黄の聖女もだ。助かった」


まず、レオンと私の色々については上手く誤魔化してくれながら、シーラ先生が陛下に報告した。


やはりというか、お守りの効果のところで鋭い視線は感じたが、陛下は黙って聞いていた。


「……で、気になるのはヒュドラの言葉か」


『やはり、あの時の……』


『なぜ、生きている?』


『呪い死んだはずでは……』


これらの言葉が示すのは、ただひとつ。


「レオンが以前呪いを受けたと考えられるのは、()()()だけ。それに、ヒュドラは関係がある……ということね」


シーラ先生の言葉に、しんと沈黙が落ちる。


やっぱり、みんなそう考えているんだろう。


この世界に来て、すぐの頃。


私がレオンと初めて会ったのは、騎士団寮の彼の部屋だった。


ただし、レオンはベッドの中、意識がほとんどない状態だった。


魔物討伐の後、原因不明の症状で倒れた彼を、助けてほしいと私に願ったのは、エドワードさんだった。


あの頃はまだ、私が聖女だって知られたくなくて、この力を隠そうとしてたっけ。


レオンを鑑定して分かった原因は、“キメラの呪い”。


討伐した魔物が、息絶える際に施したものだった。


「そしてそんなレオンを救ったのは……ルリ?」


みんなの視線が、私に集まる。


あの時、私が聖属性魔法でレオンを救ったことを、ここにいるみんなが知っている。


でも、原因が“キメラの呪い”であることは、実は誰にも言っていなかった。


別に意図していたわけではない、ただ、その機会がなかっただけ。


みんな、キメラとの戦いの傷が原因だろうと思っていたから、聞かれることもなかったのだ。


けれど、私は全部知っている。


「以前、レオンが倒れたのは、その直前に討伐したキメラの呪いによるものでした。そして、先程ヒュドラが言ったとされる言葉から、私はこう推測……いえ、確信しています」


オルトロスの討伐の後、黒い塊がふよふよとその体から離れたこと。


そして、紅緒ちゃんの、『ひょっとして、次の体を探してるとか?』という言葉。


全部、こう考えれば、繋がるのだ。


「キメラは、オルトロスと同じように、“核”を持っていた。そして、キメラは倒されましたが、その核だけが人知れず生き残り、新しい体を手に入れていた。――――それが恐らく、ヒュドラなのだと思います」


私の仮説に異を唱える人は、誰もいなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 皆!空気を読んでくれてありがとうwww( ̄▽ ̄;) 確かに、突っ込み処満載ですが、レオンさん達が無事で良かった……(///∇///) 正に『愛は勝つ』(* ̄∇ ̄)ノ 瑠璃さんの御守りがやっぱ…
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