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【書籍化&コミカライズ】規格外スキルの持ち主ですが、聖女になんてなりませんっ!~チート聖女はちびっこと平穏に暮らしたいので実力をひた隠す~  作者: 沙夜
第五章

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行方不明

あっちもこっちも短くて……

すみません(T_T)

その翌日。


アルと一緒に王宮を歩いていると、廊下でシリルさんに会った。


「おや。青の聖女様、偶然ですね」


いつものように話しかけてくれて、挨拶を交わす。


こんな風に、にっこりと笑いかけてくれるシリルさんは、どう見ても優しいおじ様なんだけど……。


……隣のアルからも、なんとなく警戒の空気が感じられる。


でも、オリビアも悪い人じゃないって言ってたしなぁ。


そうしてしばらく何でもない会話をしていると、そう言えばとシリルさんの口から、討伐の話題が出た。


「今のところ危険はないようですが、少し難航しているようですね。早く進展があると良いのですが」


その表情と口調からは、紅緒ちゃんと陛下のことをどう思っているのか、分からない。


だけど、どうしてだろう。


何となく、圧を感じるのは。


「国のために、良い結果となると良いですね」


すれ違いざまにそう囁かれて、ぞわっと服の下の肌が粟立つのが分かった。


ふらりと体勢を崩した私を、咄嗟にアルが支えてくれる。


「大丈夫ですか!?……あの方は、相変わらず考えが読めない。あまり油断しないで下さい」


なぜ私は、今までシリルさんのことを、ただの優しい人だと思えていたのだろう。


あんなに温度の低い声、初めて聞いた。







「まあ、そうですわよね。一国の宰相が、ただの優しい人なわけはありませんわよね」


「そうよ。あいつ、見た目詐欺の腹黒狸ジジイよ。ルリ、気を付けなさい」


「あ、はは……分かりました」


シリルさんに遭遇した後、今日も今日とて私と黄華さんは、シーラ先生のところにいた。


遠征組が出発してから、この三人で集まることが多いのだ。


先程のことをふたりに話すと、呆れたように注意されてしまった。


どうやらこのふたりは、シリルさんに良い印象を持っていないみたい。


まあシーラ先生はその生い立ちからも、これまでに色々あったんだろうけど……黄華さんは?


「あの方、()()()()()んですのよねぇ。オーラがぼやけていると言いますか……。とにかく、得体の知れないものを感じます」


眉間に皺を寄せてそう語った。


得体の知れない……って、ちょっとホラー?


とにかく、あの人当たりの良さそうな笑顔は、シリルさんの本性じゃないって思ってるみたい。


でも、オリビアは悪い人じゃないって言ってたし……。


確かに、ただの優しい人じゃないってのは分かったけれど、私もちょっと怖いとは思いつつも、悪い人だとは思わないんだよね。


オーラで人の悪意が見える黄華さんだって、シリルさんからそれが感じられるって言っているわけじゃないし。


でも、じゃあ紅緒ちゃんたちの味方かと言われると……?


「うーん……分からないなぁ」


「なあに?シリル宰相のことが気になるの?」


シーラ先生が顔を顰めている。


「まあ確かに悪い奴ではないかもだけど、腹黒だし、何考えているか分かんないのよね」


……やっぱり色々あったのだろう。


でも、そんなシーラ先生でも、“悪い人ではない”と言っている。


「シリルさんは、何をしようとしているのかな……」


『国のために、良い結果となると良いですね』


あれは、何を思って言った言葉なんだろう。


その、真意が分からない。


しん、と三人で押し黙っていると、そこに突然、通信の音声が聞こえてきた。


『団長!聞こえますか!?』


はっ、と三人が顔を見合わせる。


「遠征に同行している魔術師団(ウチ)の者からだわ。どうしたの?何かあった!?」


『それが……大変なんです!』


シーラ先生に応える、その切羽詰まったような声に、私と黄華さんも息を飲む。


「落ち着きなさい。それで、何があったの?」 


『す、すみません。その、緊急事態なんです。ヒュドラが……』


「現れたの!?」


標的が現れたとの知らせに、私たちは揃ってソファから立ち上がる。


『はい、ラピスラズリ団長が率いる先行隊が遭遇したようなんですが……』


「レオンが!?」


その名前に、居ても立っても居られず、声を上げる。


「ルリ、気持ちは分かるけど落ち着いて。それで?レオンたちと戦っているの?」


『お、恐らく……』


恐らく?


どういうこと?


『その、急に霧が濃くなって……。先行部隊が、姿を消してしまったように全く見えなくなってしまったんです。それどころか、声や、物音すらも聞こえず……。どこにいるのか、不明の状況です』


「レオンたちが、消えた……?」


「っ!?ルリ様!」


「瑠璃さん、しっかりして下さい!」


がくりとソファに崩れ落ちた私の耳には、アルと黄華さんの声が、遠くに聞こえたのだった――――。

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