ラピスラズリ兄妹
ごめんなさい、キリが良いので短めです……
『そうか。殿下方が茶会に前向きなようで、安心したよ。レイモンドやリリアナはどうだ?』
「早くおふたりと話してみたいって言ってたよ。特にレイ君はアーサー殿下と同い年だもん。ポーションのこととか、色々話したいことがあるみたい」
その日の夜、私とレオンは、通信で互いのことを報告し合っていた。
今日も特に異常はなく、進みも順調だと聞いて、ほっとしているところだ。
『ああ。幼くしてやるべきことを見つけたアーサー殿下からは、学ぶことも多いだろうからな。ゆっくり話す機会が持てると良いな』
私の方もお茶会のことを話したのだが、レイ君やリーナちゃんにも関わってくることだからだろう、結構前のめりの反応を返してくれる。
いや、私は普通に仲良くなれるといいなーくらいにしか思ってないんだけどね?
レオンって意外と教育熱心なのかな?
甥姪でもこれなのだ、もし子どもができたら……なんて考えてしまうのは、お約束だろうか。
『ルリ?』
「え?あっ、ごめん!ぼーっとしてた」
いけないいけない、と雑念を振り払う。
通信の向こうでレオンが訝しんでいるのが分かったが、あえて気付かないふりをしよう。
「お茶会がどうだったかは、リーナちゃんたちからちゃんと聞いて、レオンにも伝えるね。良い報告ができるように、私も準備のお手伝い、頑張るよ」
嘘は言っていない。これは本心だ。
ちょっと誤魔化した感はあるけれど。
そんな感じで今日のプチ報告会は終わり、おやすみなさいをして通信を切った。
「みんな元気にしているみたいで良かった。どうか、明日も無事にレオンと話ができますように」
窓から覗く星空を見上げて、そう呟いた。
そうして互いに順調だという報告を繰り返し、一週間が経った。
レオンたちは無事に森に到着し、着々と魔物退治を行っているものの、まだヒュドラには遭遇していないとのことだ。
少しだけほっとしつつも、早く討伐を終えて帰って来てほしくもある。
長引くとそれだけ神経も使うから、本当は早く遭遇できた方が良いのだろうけど……。
でも、そんな強そうな魔物と戦って、大丈夫だろうかという気持ちにもなる。
その為に出かけたのだけれど……やはり心配なものは心配なのだ。
「ルリせんせい?だいじょうぶ?」
「あっ、リーナちゃん。支度できた……って!か、かわいいい〜!」
ぼんやりとしていると、支度を終えたリーナちゃんとレイ君が現れた。
「新しく作ったドレスもよく似合うね。うん、とってもかわいいよ」
いやいやレイ君のスーツ姿もかなりカッコいいよ!
ご令嬢たちどころか、ご婦人たちもメロメロに違いないよ!
そう、今日は王宮でのお茶会の日。
朝からめかしこんでいたふたりが並んだ姿は、とても見目麗しくて眼福だ。
本当に絵になる兄妹である。
色合いも顔立ちも似ているから、天使の兄妹!って感じ。
あーカメラ欲しい。
「ルリせんせい?かお、とけてるよ?」
「きっとリーナがかわいいからだよ。ほら、父上もよく似た表情をするだろう?」
デレデレしている自覚はあるので、レイ君の言葉を否定はすまい。
それくらい、かわいい!
「あら、かわいらしくできたわね」
そこへ現れたエレオノーラさんも、よもや女神かと見間違えそうな程の美女っぷりだ。
そういえば私、初対面でもそう思ったんだっけ。
見慣れてきたから忘れていたけれど、美男美女率が高くて、異世界って本当にすごいなと改めて思ってしまった。
「ルリも、もう少ししたら出るから、準備しておいてね」
「あ、はい!すみません、私まで」
私はお茶会には出席しないのだが、公園に関してのお仕事があり、王宮に行くことになっているので、一緒に行きましょうと誘われていたのだ。
お見送りもできるし、アルにわざわざ来てもらうのもいつも悪いから、丁度良い。
さあ、みんな今日も頑張ろう。
「ありがとうございました。では、私はここで。レイ君、リーナちゃん、頑張ってね」
「ルリ様も、お仕事頑張って下さいね」
「ルリせんせい、いってらっしゃい!」
王宮に着くと、先に私が降り、三人を見送る。
私を降ろしたラピスラズリ家の馬車も、きらびやかな馬車が並ぶ方へと向かう。
うーん、随分と華やかなお茶会になりそうだ。
ヴィオラちゃんとアーサー君も、頑張れ!
姿は見えないけれど、お茶会が開かれる庭園の方を向いて、心の中で激励をとばす。
「さて、私はお仕事お仕事。今日は帰って来たリアムさんと会う日だしね」
どんな報告をしてくれるのだろう、今から楽しみだ。
「おや、随分と気合が入っていますね」
「うん、みんな頑張っているんだから、私も!って、ね」
出迎えてくれちゃうアルに、私はそうにっこりと微笑みかける。
レオンも、紅緒ちゃんも、レイ君もリーナちゃんも。
――――私も。
みんな、頑張れ。




